第15話 静かなる闘志

「もしもし。浅井さん。上田です。今、天竜湖の様子を見に来ているのですが、洞窟の出口で、トローチというフロッグが落ちているのを見つけました。トローチには血文字で2と書かれています。僕には何のことかさっぱり分からないので報告させてもらいました。近くにはマイルカントリーという竿とパイソンという竿が転がっていました。おそらく竿の持ち主は、もう…。」

「そうですかごくろうさまでした。気を付けて帰って下さい。」


  - 所変わってBトラスト -


「はい、はい、そうですか、残念でした…、ハイではまた。」

 浅井さんからの電話を受けた仲松さんの表情は暗かった。

「赤井さんが??」

 仲松さんは、力なく首を縦に動かした。

「クッソー!赤井さんまで!うううう…。」

「来栖くん。感傷に浸っている暇はないよ。そろそろ僕らの出番だから。」

「分かっています。でも…。」

 優しく僕の肩を叩いた仲松さんの横顔には、涙が伝っていた。  


 仲松さんが涙を流すのを僕は初めて見た。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る