第3話

 ――テイク2!


「アイツが何なのかは後回しね。仕方ない。いっちょやったりますか!」


 グリーンの地味ジャージを鷲掴み、意気揚々と脱ぎ去り正装へ……。


「ねーちゃん! ロボットやられちゃうって!!」


 啓助少年が指差す先ではフォーリナーロボに鷲掴みにされたナイトが今まさに握り潰されようとしていて苦悶の声を上げている真っ最中。早着替えしている場合では無い!


「う、うっさい! 何よ何よいいわよ、はい、着替え終わりましたー……」


 純白の生地に金の装飾、プリンセス・フレアとしての正装に着替えたフレア姫は首から下げたペンダントを薄すぎてどう寄せても谷間の生まれない胸から手に取り、握り締めたそれを高々と掲げ、そして突き出した。


「だいじょうぶだよ! ねーちゃんおっぱいは無いけどその代わりケツはげーじゅつ的だってとーちゃん言ってたし!」


「何よ! どいつもこいつも……セクハラなんだからあ!」


 ペンダントの縁が変形して広がり翼のように展開、そして中央の青い宝石の色が渦を巻き白銀へと変化した。頬を染めうっすら涙を浮かべたフレア姫が叫ぶ!


「ユニオネル王国が王女、フレアの名の下に命じます。ドラゴニック・グランガルドより使われし我が守護竜よ、今こそその威厳をここに――示しなさい!!」


 そして彼女の背後に広がったのは翼を広げたドラゴンを象った紋様、これを人は魔方陣と呼ぶ。しかしてその実態は異世界より彼のものを呼び寄せる召喚である。


 雄叫びが轟き、その陣より白い閃光が溢れ出す。異世界へと通じたそのゲートを通り、ここトー京に顕現するは竜。輪っかのような角を掲げ翡翠の瞳を持ち、純白の羽毛に覆われた体躯とその翼はまるで天使のようでもある。頭部から連なる長い首を踊らせながらその竜はこの世へとその姿を現し、そして直後の変化を見せる。


 生物であったその竜は顕わにした部分から白銀のメカへと変化して行く。頭部から首、そして胴体、翼。尻尾の先に至るまで、竜はまるで巨大なジェット機を連想させる形へと完全に変貌を遂げた。


「転生機ナイト、受け取りなさい! アナタの新しい力を!!」


 白銀に輝くペンダントをその首にかけ直したフレア姫が声高くフォーリナーロボの手中にあるナイトへと告げる。その表情、勝利を確信した実に素晴らしい笑顔。しかし!


「ぅぅ……ぐわぁぁぁあ!!」


「ねーちゃん! まずは助けないと!!」


「ああーーっ……もうっ!! 行きなさい!!」


 ナイトだけにか!? 金髪を掻きむしり、地団駄を踏んだフレア姫は人差し指を突き出しメカドラゴンへと指示を与える。メカになったことで指示が無いとあまり積極的に動いてくれないのだ! 指示が、ないと!!

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