第2話

「お迎えに参上いたしました、プリンセス・フレア!」


 フレア姫の気遣いや何だったのか、窓ガラスはおろか窓枠からベランダまで突き破り部屋から飛び出してきたのは件のがらんどう。しかしそれはしゃべり、飛んで、落ちるフレア姫へと突撃すると彼女をその鉄腕で見事抱き留めて救ってみせる。


「ええ!? じ、ジャッキー・チェン……?」


「違います!」


 団地の二階付近に滞空するがらんどうだった騎士をその腕の中から見上げるフレア姫の目の前で、その見当違いな質問を即答で突っぱねた騎士は目元を覆うバイザーをカシャンと展開し、そのつぶらな瞳を浮かばせた双眼を見せる。


「転生機ナイト、ここに参上! 今すぐにあのフォールンを打ち倒して参ります、プリンセス・フレア!」


「ちょっとまずアナタ誰なのよ!? 誰が入ってんの!? ってか、まずケースケ助けなさいよケースケ! ケースケーーッ!!」


「かしこまりっ」


 野良猫を驚かしながら着地したナイトはフレア姫を降ろし背負った剣を手に取ると曲線直線入り交じり西洋風の鎧かと言われればそんな感じもしなくもないメカニカルで特徴的な二頭身の機体でそれを構えた。大きさは大体160センチのフレア姫と同じくらい。


 いざ打ち首! と意気揚々ナイトが飛び出そうとした直前にまずは救助だろとフレア姫に突っ込まれ、その場で一回転、フレア姫の方を向いたナイトは威勢良く了解し改めて飛び出していった。本当に大丈夫なのか!


「おねーちゃぁぁん! わぁぁんっ」


「子供! 泣くな! 一刀両断!!」


 雄叫び一閃!

 蒼白い燐光を残し飛翔したナイトの振るう剣がフォーリナーロボの爪を打ち砕き、囚われの啓助少年を見事助け出す。


 啓助少年を脇に抱え、戸惑うフォーリナーロボを他所にナイトはフレア姫の前へと着地。茫然自失の啓助少年を地面へと降ろして一息。


「やるじゃないアンタ! ケースケ、しっかりして、ほらほらどーどー」


「俺はナイト。ナイトとお呼びくださいプリンセス・フレア!」


「それ以外どう呼べってのよ。……ああっ!!」


「むむっ!?」


 轟! と大気を震わせる轟音が響き、二人が顔を上げると空には戦闘機の編隊が飛翔。ミサイルによる勇ましい攻撃を行うが、それは敢え無くフォーリナーロボの対空防御の前に破壊されてしまい、更にはフォーリナーロボの放ったレーザー光線が大空を奔ると回避行動を行った戦闘機たちだったが次々に撃墜されてしまう。


「イーグルが!」


「むう、なんと不甲斐ない! 本当の竜騎兵と言う物を見せてやるぞ!!」


 ニホンとトー京を守る鉄の翼がいとも容易く撃墜される光景に目を疑うフレア姫であったが、ナイトはむしろ奮い立った様であった。フレア姫の制止も聞かず、再び閃光と共に飛翔したナイトの剣がフォーリナーロボに向かう。しかし!


「――ぐぁぁぁあ!!?」


 二度目は無いと言うことか、今度はきちんとナイトを警戒したフォーリナーロボの巨大な豪腕が振るわれ、あまりに体格差のあるナイトはまるで小バエのように軽々と弾き返され激突した地面へとめり込んでしまう。


 だが何のこれしき! ナイトの心は折れ知らず。猪突猛進にビルほどもある巨大なフォーリナーロボとの大立ち回りを演じる。しかし終始劣勢! ナイトも傷付けばトー京も破壊されて行く。


「アイツが何なのかは後回しね。仕方ない。いっちょやったりますか!」


 グリーンの地味ジャージを鷲掴み、意気揚々と脱ぎ去り正装へ……と思ったフレア姫であったが当然そんなことをしたら可愛らしい薄ピンクの下着が丸見えだ!


「きゃあ!? ちょっとタンマ! もっかいやり直しだからぁ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る