機身転生ナイトキャリバーン

こたろうくん

第1話

 そこは大都市トー京。

 今まで平和であったここトー京に、未だかつて無い危機が訪れようとしていた!


「これも違う、こいつもダメね。違う違う、ダメダメダメ! もー! 数ばっかりでろくに使える魂なんて無いじゃない!! 転生待ちってどうしてこうなのよ! 世界の危機くらいちゃちゃっと救える超スペックの魂無いわけ!?」


 とある団地の一室にて、押し入れの中に居を構える金髪碧眼スタイルは胸以外バッチリな如何にも現実的じゃない彼女の名前はプリンセス”フレア”。


 今彼女はインスタント泉を介し、がらんどうの騎士鎧に放り込む為の魂の選別に奮闘していた。インスタント泉にはあらゆる場所、あらゆる世界で死んでしまった人間やら何やらの魂がそれは大量に貯め込まれている。


 ただその大半は人間であり大したことない凡人の魂。これから世界のために戦ってもらおうというのだから、そんじょそこらの魂ではダメなのである。厳しい!


 フレア姫は転生ガチャにそれはもう血管がぶち切れ寸前で、気がどうかなりそうであった。ワンチャンダイブやらトラックやら、取り敢えず命を落とした理由は色々あることだろう……だがしかし所詮凡骨! 使える魂はほんの一握りなのである。厳しい……。


「大英雄こい大英雄こい大英雄こいヘラクレスこいアーサー王こいバーフバリこい王貞治こいジャッキー・チェンこいチャック・ノリストム・ブレイディこぉぉぉぉい!!!」


 がぁぁぁっ!! と引き当てたぽっちゃり田中くんの魂にフレア姫ご乱心とばかりにインスタント泉をちゃぶ台返し寸前の所でした。響き渡る破壊の音!


「フレアねーちゃん助けてーーっ!」


「ちっきしょう! 待ってなさいケースケ! こんなものに頼らないでもアタシがどうにかしてやるっての!!」


 押し入れを飛び出したフレア姫が窓の外を見る。そこには謎の巨大ロボット”フォーリナー”がこの部屋に住む夫婦の一人息子”啓助”少年をその爪で捕まえているではないか! どうしたというのだ啓助少年!


 握り締めたぽっちゃり中田くんの魂を窓の外のフォーリナーへと全力投球したフレア姫であったが所詮は女子の肩、ノーバン投球とはならず窓をすり抜けフォーリナーの手前にぽっちゃり田中くんは落ちて行く。あわれなりぽっちゃり中田くん……。


「ケースケを離しなさいってのこの地球外ヤローーッ!!」


 窓へと突撃するフレア姫。腕を交差させ、透明なガラスを突き破る。――直前に急ブレーキをかけると、からから小気味良い音を立てて窓を開け放つ。他人の家の物なので、如何なプリンセスとはいえ、プリンセスだからこそ壊したりしたら行けないのです。


 とぉぉうッ!!

 そして満を持してベランダから飛んだフレア姫は身に纏った緑色のジャージと結束が解けた金髪をはためかせ空へ。そしてそんな彼女をいざ迎え撃たんとしたフォーリナーロボの手前で敢え無く落下を始めた。そりゃそうだ。


「ちっきしょーーーっ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る