第593話これが令和の新しいわからせか!
「で、今度からはこの万象力ってのを主体にして戦えば良いの? めっちゃ疲れるんだがこれ?」
体感30秒程だろうか、話してる間にボヒュンと音を立てて万象力とやらが消え、代わりにヘタりこみたくなるような猛烈な虚脱感に見舞われる。
座っただけで地面に突っ伏してないからまだセーフ。
「いえ、万象力はここぞと言う時の切り札として使うのが良いでしょう。そもそも人の身で軽々に使うものでもないですからね」
「そんなもん簡単に教えるのやめてくれません?」
「でもハクちゃんには勝敗を引き寄せる瞬間的な火力が必要でしょ?」
「うっ、それは……まぁ」
「じゃあ必要だよ。わかったと思うけど万象力は強力だし、瞬間的な出力はピカイチだからね」
「なるほど、そして扱いにくさもピカイチと?」
「ええ」
「うん」
クッソ地雷原増やされた感が強いのだが、言ってる事が合ってるから反論出来ん。
結局、今回のアジ・ダハーカ戦は私は有効な打撃をほとんど与えられていない。
最初から最後まで、無視するには鬱陶しい目障りな奴程度の扱いでしかなかった。
なのでここで出力アップ出来るのは正直ありがたいのだ。
ぶっちゃけ全力攻撃に近いレベルじゃないと、仲間内でさえダメージほとんど出ないからなぁ。基礎スペックが違いすぎる件。
「それに今の白亜さんでは万象力を使って全力で戦えるのは、三分ほどが限度でしょう」
うーん。強力な分消耗が激しいのはわかっていたが、三分かぁ。最近の戦闘考えるとなかなかキツイな。
使用感は初期の頃の鬼気のような感じだろうか。
あれも初期は数分しか使えなかったのに、今や鬼力としてまあまあ普通に使えるようになってんだから、私も多少は成長しているようだ。
「ってか、そこまで強力な物、弱ってる今の状態でやらせて平気だったの!?」
ただでさえ省エネモードになってる時に、一番負担のでかいものを重ねるとか正気か?
「タイミングが良かったので」
「それで済むとでも!?」
「では聞きますが」
「な、なんでい!?」
きゅ、急に凄んだって怖くないだからな。
「白亜さんは落ちたら死にますが、ギリギリ飛べそうな幅の断崖絶壁の向こう側に、都市伝説並にドロップしないアイテムが落ちていたら飛びますよね?」
「クソぅ。否定する材料が全くねぇ!」
なんて完璧な論破なんだ!
「いやいや、普通はしないからねハクア?」
「まじかよ」
都市伝説並とかドロップ率0.0001とかのだぞ!? それをドロップさせるのに何日徹夜で周回すると思ってんだ!?
「それが普通ってものだよハクちゃん」
「お前もこっち側だろ」
「えっ、当たり前じゃん?」
「ふぅ。これだから暴走特急姉妹は」
「うわ。久しぶりに言われた」
「みーとぅー」
地球にいた頃はよく言われていた括り。
なんでも私とソウは無理だと判断するラインが、他人よりも百倍くらい違うらしく。
何かにつけそう呼ばれて一括りにされていたのだ。
全く失礼な話である。
「まあまあ、テアさんなりに勝算はあったんだよ……多分。それに万象力を使って限界まで行くと、今の省エネモードになっちゃうから使う時は気を付けないとね」
今多分って言ったよね?
「なるほど確かにそれは気を付けないと……って、少し待とうか?」
「どうしたの?」
「えっ? 今回のこれって今回限りじゃないの? もしかして定例化する感じなん!?」
そんなんおもちゃにされる未来しか見えないのだが!?
「うん。今回で効率よくエネルギーを軽減、蓄える為のフォームを身体が覚えたからね。前みたいに簡単に意識を失っちゃうより、戦えなくとも活動出来るその姿の方がよっぽど良いからね」
うわ。そう言われると確かにそうだ。納得しかない。
「大丈夫ですよ。変な事はそうそう起こりませんから」
「絶対だな!? 絶対だぞ! なんか今、盛大に丁寧なフラグ建てられた気がするけど信じるからな!?」
この野郎ニヤニヤしやがって、全くそんなこと思ってないだろ!?
「まあまあ、では頑張った白亜さんにいい物をあげますよ」
「あん? いい物?」
「ええ、これは私達が地球の知識を元に作った武術です。名を
「フムフム。陰と陽の二つの相反する力を成立させたものって事か」
しかも両義は天と地、四象八卦の意味も内包してるし、日本で言えば五行にも通じる。
なかなかに大仰な名前を付けられたものだ。
「ねぇ、これってもしかして万象力がある事前提のものっぽいし、頑張ったからとか関係なく普通に教えて貰えたもみにゃぁぁあー!?」
「相変わらず勘のいい子ですね。嫌われますよ? 一気に行きますよ」
都合が悪いのか、家族を人体錬成しそうな人間の、発言みたいなセリフを吐きながら、言葉の途中で頭を鷲掴みにし、そのまま頭に情報を無理矢理流し込む。
ああ、これが令和の新しいわからせか! って、これは違うよね!? というか違うそうじゃなくて頭がああぁーー!
ガッチリホールドされた頭はどれほど暴れても動かない。
なので気を紛らわせる為に濁流のように流れ込んで来る、情報の方に集中する事にした。
そうじゃないとやってられん!
しかしなるほど……体全体を太極図に見立てて、聖魔の力を両立させながら、反発を繰り返させ、その力も含めて成立させてる。
私の予想では万象力を手に入れたから貰えたんだと思ったが、これはどちらかと言うと、万象力を手に入れるための前段階の物だ。
恐らくはテアの言っていた通り、本当にこの段階で私に万象力を手に入れさせるつもりはなかったのだろう。
それでも強行したのは先程の説明通り、あのタイミングが一番良かったからなのだろう。
まあ、それで死ぬ可能性が高かったんだから、理解はしても納得は出来ないがががががくぁw背drftgyふじこlp;@:「」!?
突然何も考えられなくなった私は、遠くからボカンッという音を聞いた気がしたが、その瞬間、世界が暗転した。
▼▼▼▼▼▼
「ハクアー!? ハクアが爆発した!?」
たった今目の前で起きた不可思議な現象にミコトの悲鳴と驚きの混じった叫びが響く。
「おや? やりすぎましたか」
「ですね。それにしても爆発するとは……流石ハクちゃん」
冷静に話しながらも、目の前でギャグアニメのように爆発したハクアにドン引きする二人。
「な、ななななんでハクア爆発したんですか!? 人間は爆発しませんよね!? あれ、しませんよね?」
ハクアという人間を見てきたミコトは、人間という種族に自信を持てなくなってきていた。ハクアに毒された被害者である。
「大丈夫だよ。人間は爆発なんてしないから」
「そ、そうですよね? あれ、ならなんでハクアは爆発したんですか?」
「端的に言えば容量オーバーな所に更に知識を詰め込んだ影響ですね」
「まあ、それであんな爆発するなんて私達も思わなかったですけどね。はははははっ」
「笑い事じゃないですよ!? 理由が現象に繋がってませんよ!?」
「うん、まあ。一言で言えば……ハクちゃんがどっちかと言えばギャグ側の人間だから、容量オーバーが分かりやすく表現されたんじゃない?」
「いや……そんな……うーん。でも……ああああ、絶対納得出来ない理由なのに、何故かものすごい納得してる自分が居るぅう!」
遂に頭を抱えて悩み出したミコトを見て、自分達も通って来た道だなぁと思う聡子とテアであった。
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