第558話魂自体が消滅の危機?

「なぁ、ななな、なんで、なんでどうしてそんな状態に私追い込まれてますのよ!?」


「ここで問題です」


「そげな場合でなか!?」


「霊力は魂の力。ではその霊力が際限なく出続けたらどうなるでしょう?」


 続けるしぃー。


「いや、そんなん───」


 そこで止まる。


 自分を改めて見る。


 動かない体。


 垂れ流される霊力。


「魂自体が消滅の危機?」


「正解です」


 思った以上にきわっきわの状態やったぁ!!


「今の白亜さんは【霊圧】を感知する事で周囲を理解しています。ですがその状態は霊力をかなり消耗する」


 しかも私はゲートを中から無理矢理、霊力を使ってこじ開けた状態のせいで、通常よりも霊力をドバドバと垂れ流している状態だという。


「なので聡子が力を注入して、ようやく魂の維持が出来ている状態です。その状態ではあと三十分も持たないでしょう」


「力注がれてても?」


「はい。今力の供給を止めれば五分というところですかね?」


 oh……。


「ちなみに死ぬと言いましたが───」


「言い過ぎだったと!?」


 そうだよね。流石にそんなに切羽詰まってないよね!


「いえ、霊力の補充は通常できません。それでも魔力と気力を注ぐ事でなんとか維持はできますが、元となる魂の力である霊力が減り続ければ、バランスが崩れ逆転します。つまり───」


「大元の私の成分が供給される力に塗り潰されると?」


「正解です。そうなると元の白亜さんとは言い難いのですがそれを死ぬと言わないのであれば」


「うん。死んでるのと変わらんね!」


 それもう私とちゃうやん。


「と、言う訳でちゃっちゃと覚えちゃおうかハクちゃん」


 そんな簡単じゃないと思うよ。


「大丈夫ですよ。貴女は私達の取っておきなのですから」


 ……そんなん言われたら頑張るしかないじゃん。


「さあ、集中してください。今貴女は【霊圧】を感知出来るようになった事で、無意識に霊力が垂れ流されている状態です。その普通なら手の届かない領域を感知出来た事で【第六感】も鍛えやすいはずです」


 五感を封じられているため意味がないと知りながら、目を閉じテアの心地よい言葉に耳を傾ける。


「今白亜さんが見ている世界。【霊圧】による感知と同じように、普通なら感じない力の流れ【第六感】を自分の内側から外側へ広げるように想像を膨らませなさい」


【霊圧】で見る世界よりも感度を下げて、魂ではなく魔力と気力を感知する。そして言葉に従い、その感覚を徐々に内側から外側へと拡張していく想像をする。


「【第六感】と言っても結局は感覚の一瞬、五感の鋭いハクちゃんなら分かるはずだよ。無意識に留めないでそれを外側に向けて伸ばして行くの」


 ソウの言葉に想像を働かせて、自身の延長線上を探っていく。


「そうそう。そうすればそろそろ見えるはずだよ。ハクちゃんが今まで見ていた世界【霊圧】に繋がる扉へと繋がる道筋が、それが霊力を外へと出す通路だよ」


「【第六感】は言うなれば通路。霊力を外界へと伸ばすための拡張器官でもあります。全ては貴女の中にある。そして貴女は世界と繋がる方法をもう知っているのです」


 集中する。


 集中する。


 ▶個体ハクアが感覚系スキルの悟りを開きました。急速にスキル熟練度が上昇します。


 ▶熟練度が一定に貯まりました【五感強化Lv.3→Lv.MAX】に上がりました。


 ▶スキル熟練度が一定に達しました。スキル【第六感Lv1新】を獲得しました。


 ▶熟練度が一定に貯まりました【第六感Lv.1→Lv.MAX】に上がりました。


 ▶【五感強化】【脳内座標】【第六感】が全て統合され、上位スキルに変化しました。


 ▶上位スキル【霊感Lv1】を獲得しました。


 ▶熟練度が一定に貯まりました【霊感Lv.1→Lv.MAX】に上がりました。


 ▶スキル熟練度が一定に達しました。スキル【超感覚Lv1新】を獲得しました。


 その瞬間、自分の中から外側へ向けて全ての感覚が急速に広がる。


 これは……。


【超感覚】

 五感と第六感が一つに繋がったスキル。

 今までとは一線を画す感知が可能なスキル。

 今までとは別次元の領域を認知可能。


 凄い。


 自分自身が拡張し続けるような感覚に身を浸す。


 意識が広がるのとは違う。


 スキルを通して周りの環境が鮮明に感知できる。まるで全ての感覚が解放されたかのようだ。


 まあ、それでも【霊圧】には叶わないが……っあれ?


 ▶熟練度が一定に貯まりました【超感覚Lv.1→Lv.MAX】に上がりました。


 ▶感覚系スキルが【霊圧】に統合されます。


 う……わ……。


 そうか。これが存在感───魂の格を上げると言うことか。


 自身の魂の波長が広くなった、それに伴い波長で感じ取れる事が格段に増えた。


 なるほど、さっきまでの私がやっていたのは【霊圧】のほんの触りを覗いていただけだった。


 少し前までの魔力や気力の感知とはまるで違う。


 普通なら分からないようなもの、見えないものまでそのまま視えるような感覚。


 新しい世界が私の目の前に広がる。


 これはさっきよりも凄い。


 ビリビリと肌を刺激するような、そんな感覚の波が私にこの世界の美しさを伝えてくる。


 ああ、綺麗だな。


 世界は私が思っていたよりももっと色々な色を持ち、その姿を私に魅せるようだ。


 ▶個体、ハクアが霊力を部分的に扱う方法をマスターしました。


 ▶【霊圧】をより詳細に感知する事ができます。


 ▶【第六感】を放出して魂を示す方法を会得しました。


 ▶魂の格が成長しました。


「どうやら、終わったようですね」


「えっと……うん?」


 なんかいきなり色々と覚えて、熟練度上がりまくって、世界まで広がったから情報が処理しきれん。


「な、なんっすか今の!?」


「ズルいの。卑怯なの。ムー達ドラゴンですら何十年……下手したら数百年単位で覚えるものをあんな一瞬で覚えるなんて」


「人間なら生涯修行に人生を費やして到達出来るかどうかだからねー。わかっていたけど流石ハクちゃん」


「な、なんでい! そんな目で見るねい」


「水龍王はこうなるとわかっておったのか?」


「……いえ、流石にこれは私も予想外ですね。ハクアちゃんは本当に規格外ね」


 おばあちゃんの予測も超えていたとは……。


「まあまあ、白亜さんが異常なのは今更ですよ。それに今回の件にはちゃんとした理由もあるので」


 誰が異常と!?


「ん? 理由?」


「む、いつも通りハクアならなんとかなるという投げやりなものではないのか?」


 おいこら、ブラコン赤トカゲ。


「ええ、白亜さんは元々向こうの世界、地球では体が弱かったんですよ」


「確かにその通りだけど、それなんか関係あるの?」


「もちろんあるよ。ハクちゃんの体の弱さは熱を出せば、重症になるか死の淵に立つようなレベルだったからね」


「えっ、ハクアってそんな感じだったんっすか?」


 うむ。確かにそうだ。


「しかもこちらの世界でも何度となく死の危機に晒されてますよね」


「そだね」


「白亜さんはそうして生死の境を何度となくさ迷うことで、自分でも知らない内に無意識領域に何度もアクセスしているんです。向こうの世界では病気で、こちらの世界では物理的な要因で」


 うーむ。こうして聞くとつくづく綱渡り。


「白亜さんは熱でうなされている時、自分の中の火や熱が消えていくような感覚は分かりますよね?」


「うん。それは何度も経験したからね」


「それは魂の力が弱まってる時に感じる、死の一歩手前の感覚ですよ」


 oh……。


「そんな訳で白亜さんは魂の存在を朧気ながら無意識のうちに知覚していたんです」


「なるほど、死の淵に立つと魂がより強くなると言うけど、ハクアちゃんの場合はそれを日常的に繰り返していたのね。それならハクアちゃんの精神の強さや、魂の強さも説明がつくわ」


「元の世界で魂を鍛え、この世界でそれをレベルアップと進化で練磨してきた結果です」


「やったねハクちゃん。あの苦しみの日々は無駄じゃなかったよ」


「わーい。ってなるかぁ!」


「ナイスノリツッコミ!」


「ぐぬぬ。な、なんでい、皆そんな憐憫の目で見るなぁ!」


「ハクちゃんには悪いけど、日常的に死の淵に立ってたなんて聞いたらそりゃ見るよ」


 でしょうね!

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