第498話うん。失礼すぎねぇ?
結論から言うとアイランドオークはまあまあ強かった。
あの一見無駄にも思える贅肉。
緩慢な動きながらあの贅肉が全ての衝撃を吸収し、刀のように切る事に特化していない、どちらかと言えば少し切れるだけの打撃武器である大剣とは相性が悪かったのだ。
まあ、それも本来ならだけど。
いくら衝撃に耐性があり、攻撃力を制限されているとはいえ、その攻撃はドラゴンの膂力から繰り出されるモノ。
当然、まあまあ強いだけのオーク程度が耐えられる訳もなく、呆気なく叩き潰された。
うーむ。攻撃力下げても効果ねえなぁ。
まあ、そんな事よりも大事な事がある。と、言う訳で私は早速レリウスに飛び蹴りを食らわせた。
何故なら最近の研究(私調べ)でわかったが、神スキルである【解体】さん。
実はこのスキル、使う時の状態で結果が変わる事がわかったのだ。
簡単に言えば、綺麗に倒せばその分出てくるアイテムも、品質、量共に良くなるという事だ。
そんな私の教育的指導もあり、そこからレリウスもそれなりに苦労しながら戦っていた。 詳しくいうと首チョンパである。
ちょっとオークに囲まれて、脂でヌトヌトになったまま近付くのはやめて欲しい。
しかしその甲斐あり、アイランドオークから取れた肉もラードは素晴らしかった。
その場でラードで揚げたトンカツにしたがそれがなんと美味いこと、ラードなのにしつこさがなく、サックリと軽く上がったトンカツは全員に大好評だった。
私もトリスに燃やされそうになった甲斐があったというものだ。
そんなこんなで、意外にも美味しかったアイランドオークの巣を、数個程潰して周り、四日目も終了した。
因みにその日はアイランドオークの肉で作った豚の角煮、ナスの肉巻き、照り焼き丼でした。美味かった。
五日目。
昨日の豚肉&ラードの大漁祭りが忘れられず本日も食料狩り。
なんでもこの近くには他にも珍しいモンスターが棲息し、チキンベアーなるモンスターも居て、なかなか美味しいのだとか。
しかしチキンベアーか……臆病なのかな?
そんな事を思っていた私が見たのは、なんとまあ奇怪な生き物。
二メートル程の体躯の頭の部分はニワトリ、体が熊、脇の部分には腕と体に繋がる鳥の羽根。なんだか昔のスターが着ていたヒラヒラの服のようだ。
まあ、まさにチキンとベアーな生き物だった。
しかしあれ、肉の味はどっちなんだろうか? あのレベルの大きさの鶏肉も良いが、熊肉も嫌いではない。
どちらにせよちょっと楽しみである。
と、いうわけで戦闘開始。
熊の膂力から繰り出される強力な腕の薙ぎ払い。巨体からは想像しづらい跳躍から繰り出される、体躯を活かした滑空攻撃は、普通なら中々の強敵だ。
──そう。普通なら。
しかしながらここに居るのは各部族のエース級のドラゴンであるトリス、シーナ、ムニ。
そして龍神の娘のミコト、まだまだこのメンバーに届かないとはいえ実力のあるレリウス。そしてオマケの私!
まあ、ぶっちゃけ大抵の相手なら過剰戦力にも程があるよね。
ふっ、こんな程度のモンスター等、私(の周りの奴)には雑魚なのだよ!
てな訳で、チキンベアーさんはサックリと処理されました。
そしてお待ちかねの実食タイム。
肉の見た目は鶏のようには見えない赤身が多めの肉、しかし味は熊と言うよりも鶏そのもの、ステーキにして食べたが通常の鶏肉に比べて味が濃かった。
しかしびっくりする事に、バラ肉の周辺は熊肉に近かった。
噛めば噛むほど溢れ出すジューシーな肉汁、牛肉とラム肉を足したような感じだった。臭みはなく、やはり旨味が強い、野性味を感じる味はかなり好みの総じて美味しい肉だった。
このままこの肉を回収して回りたかったがそこはオークとは違う肉。オークのように群れている肉という訳ではないそうで、簡単に回収とはいかないようだ。残念。
まあ、そうは言ってもこのメンバーだからこんな事を言えるが、私一人だったらオーク相手でも勝てるかどうかわからんが。
だってアイツらドラゴンの領域に居るだけあってステータス高いし。ほぼ私と同じですよ?
チキンベアーに至っては私の1.5倍程と中々に死ねるステータスである。
だからと言って諦める選択肢は無いわけで、捜索を続けているとつぎに出て来たのは巨大な生物、その名もエレファントビーフ!
いやもう牛肉って言ってるやん……。
体長約五メートルの大きな牛。何故エレファントかと言えば牛を大きくした姿なのに、その鼻だけが何故か長い。
だからなんとなく顔がアリクイや、マレーバクに似てる生物だ。
ムニによると争いを好まない温厚な性格のエレファントビーフは、他のモンスターが食べない草を食べる為に鼻を長くして、木の上の方に生えてる草を取るように進化した、キリンのような存在だそうだ。
しかもこの群雄割拠する地域で、違う種類のモンスターが争いあう中、何故かこいつだけは他のモンスターも襲わないらしい。
……なんか優しい世界が出来上がっとる。
えっ? 元ミニゴブリンさんにはそんな優しい世界用意されてなかったよ? 殺伐サバイバルの奴隷状態でしたよ? ゴブリンなのが悪い? ちくしょうめ。
とはいえ、そんなの関係ない訳で狩り開始。
逆恨みとかじゃないよ? 美味しいらしいからだよ?
と、勇んでレリウスに指示を出した所、このビーフ意外と硬かった。
攻撃力を下げたレリウスでは致命傷にもならず、攻撃を受けた直後に悲鳴のような鳴き声を発した。
すると、何処からともなくやって来るではありませんかモンスターの群れ。
なんとか勝てたけどそのまま大乱闘となりました。
後から聞いた話では、一撃で仕留めないと周囲のモンスターを呼び寄せるのだそうだ。
しかも普段は遭ったら直ぐに殺し合いをはじめるモンスターが協力して……いや、だから、そんな優しい世界、私知らないんですけど?
因みにビーフは黒毛和牛ミノさんを超える美味しさでした。まる。
六日目。
今日はトリス達は用事があって遅くなるとの事で、初っ端は二人での開始となった。ここまででそれなりに経験を積ませたレリウスに改めて回避を教え込む事にした。
何せこいつらドラゴンは、強度が高いのを良い事に回避と言うものをしない。
防御こそそこそこするものの、回避する事自体を恥と考えているようなのだ。
何時ものメンバーやレリウスはその意識が薄いとはいえ、それでも普通に比べたら圧倒的に回避下手。そこでこの特訓となった。
一日通して回避を叩き込み、結論から言えばまあまあ回避が出来るようになった。
ぶっちゃけ今まで考えていなかった為、回避する身体能力があっても意識の方が追い付かない。それをひたすら強制する事で、やっと見れるようになったという感じだ。
因みに私も教えられてる龍歩だが、もちろんドラゴンはほとんど習っている。レリウスのように若いドラゴンだって触り位は教えられている。
しかしその龍歩を相手の懐に潜り込んだり、撹乱にしか使わないとか勿体ないにも程がある。そう思わざる得ない一日だった。
そしてその日にちょっとした問題も起きた。
トリス達が来るちょっと前に、レリウスと同じ年頃の奴が三人程、絡む為にやって来たのだ。
まあ、私は眼中にないみたいだし、ぶっちゃけこの回が終わったら出て来なくなるモブなんだろうなぁ。と、慈愛と博愛の精神で受け流していたが、どうやら内容はドラゴンであるレリウスが、私程度に師事していたのが原因らしい。
私の方がステータスは弱いしねぇ。しゃあなし。
まあ、何事もなかったのだが、その話を聞いたトリスを抑えるほうが苦労した。
七日目。
最終調整を含めて軽い模擬戦をした後は、次の日の試合に向けて休息を含めて、徹底的に戦略を教え込んだ。
内容は強者が強者を倒す為の王道などではない。
圧倒的な弱者が強者にどうやって牙を突き立てるか? そんな内容だ。
ミコト達を含め、私が常に何を考えて戦っているのかと、その内容に少なからず衝撃があったようだ。
具体的にはコイツこんなに考えてたのか!? みたいな?
うん。失礼すぎねぇ?
そんなこんなで短くも濃密な一週間の修行が終わり、大会の日を迎えたのだった。
えっ? 修行の話が短いのに肉の感想とかのほうが詳しかったって? いや、重要な情報の方が密度が濃いのは当たり前の事なんだよ?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
お読みいただきありがとうございました。
もしハクアのことを応援しても良いよって方は
★評価とフォローをしてくれると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます