第497話あっ、誰も知らないのね……
さて、それではここからはダイジェストでお送りしたいと思う。
え? なんでって? 細かく話しても私がクレーマーに吊り上げられたり、燃やされそうになったりするのがほとんどだからだよ?
と、言う訳で一日目は予定通り武器の扱いについて。
元々レリウスは多数の基本的な武器についての予備知識、基礎訓練はしていたらしく、身体の動かし方から武器の扱いまで、多少のコツを教えたらすぐに見れるほどになった。
なんでも火竜は特に一撃必殺を目指す者が多く、大剣を中心に学ぶ事が多いが、レリウスはそんな中でも一通り多数の武器の訓練は受けていたそうだ。
これはどちらかと言うとレリウスと言うよりも、火龍王の意向が働いているらしい。
大剣しか使わなかったとしても、それぞれの武器の扱いを一通り学ぶ事で、その武器の特性を知る。と、いうものだ。
わりとまともな意見に少々ビックリだが、火龍王自体は人化中の特訓を特に有用と考えているらしい。
まあ、これはシーナ達から茶しばいてる時に聞いた事だけど。
当のレリウスはと言うと、私が教えると言ったものの、前々から訓練を付けていたトリスが武器の指導に名乗り出たので全て丸投げした。と言うかせざるえなかった。
……だって圧凄かったし。
まあ、実際何をどこまで習ったか。それを知ってる奴に任せた方が効率が良かったので、大人しく言う通りにした。
私といえば先程話した通り皆と茶をしばきつつ、時々トリスの指導に注釈を加え、トリスの扱った事がない武器を少々教えたくらいだ。
そして大半の時間をイチャつく二人を見て終わると言うね。
うん。なんの時間で何を見せられているんだろ?
最終的には付け焼き刃としてはこれくらいで十分、そんなレベルまで出来ていたので良しとした。
こうして一日目はアッサリと終了。
二日目。
流石に一週間もの間、訓練をサボる……もとい抜ける事は許されなかったので、午前中だけおばあちゃんの指導を受ける事になっていた私と共に、レリウスも今日から参加する事になった。
まあ、そうは言っても指導を受ける私やミコト達の隣で、見様見真似で指導を聴きながら真似るくらいなのだが。
レリウスにとってはまだ習う事の許されない技術などで、正直に言えばあまり出来てはいない。
だがそれでも充実した時間である事には変わらないから、一緒に参加させてくれたおばあちゃんには感謝である。
そして午後、本日は魔法を重点的に鍛えた。
火竜なだけあり、レリウスの火系統の魔法は中々の威力だった。
どれ位かと言えば、万全の態勢で放たれた攻撃なら、私の【結界】など優に凌駕し、骨さえ残さず消し炭に出来るレベルだ。
うん。普通に死ねるレベルなんだよ?
しかしこれは万全の態勢で時間を掛ければの話、実戦の中、同じ火竜に対してとなると、決め手に欠けると言うのが私達全員の意見だった。
そしてこれこそがレリウスがトップに食い込めない原因だ。全体的なパワー不足、それで攻めあぐねている間に大きいのを食らって負ける。それがココ最近のパターンらしい。
風属性、土属性は火属性には劣るモノのそれでも十分な威力を有し、実戦でまあまあ使えるレベル。
強いて言えば火属性と違いコントロールがかなり大雑把なくらいか? まあそれはすこし矯正すればなんとかなるだろう。
しかしやはりと言うかなんと言うか、水属性に関しては威力、コントロール共に苦手なようだ。
だがそれでも火竜、しかもその中の若手が相手なら、使い方次第でなんとでもなるだろうと言う事で、水属性のコントロールを重点的に鍛えて、二日目も終わった。
三日目。
本日は私達全員との模擬戦だ。
動きを見てわかってはいたが、どうにも実戦経験の少なさが目立つ。と、言う事で少しでも実戦の経験値を積むためにそれぞれと戦わせることにした。
因みにミコトを含めたシーナ達は、既にお菓子で買収済み。全員が快く協力を申し出てくれた。
結果としては、トリスの火力に圧倒され、シーナの速さに翻弄され、ムニの堅牢さを崩せず、ミコトや私の手数の多さに終始惑わされる形になった。
多少の違いはあれど、基本的にパワーで押し切るタイプの相手としか対戦経験がない。それを身に染みて教えるいい感じの機会になったようだ。
頭で考えて戦闘の流れを作るタイプのレリウスには、この経験がきっと生きてくるだろう。
その日の夜はおばあちゃんに連れられ火龍王の元へ行った。
私がレリウスを教えている事が耳に入ったらしい。
とりあえず開口一番、テメーの息子の面倒くらいちゃんと見ろや! と、殴り込んだが、これまた意外な事に素直な謝罪が帰ってきた。
話を聞けば、どうやら前からレリウスの事は気にかけていたらしく、しかしだからといって自らの立場上、手を出しあぐねていたそうだ。
他と違い、玉石混合試合で指導する者を厳選する火竜の性質上、下手に動くことが出来なくなっていたらしい。
それでもアドバイスなどはしていたが、実際に訓練を見れるわけではなし、大分曖昧なアドバイスだけに留まっていたとか。
そんな中レリウスの指導を買って出た私に、火龍王は結構真面目に感謝してるらしい。
実はこれ、トリスも同じだったそうだ。
今は私の監視という名目上、一緒に訓練しているが、トリスも若い世代のトップ、姉弟兼婚約者とは言え軽々に教える事が出来なかったらしい。
それが今のベッタリ状態の理由。
誰にはばかる事なく指導出来る状況は、待ちに待ったものだったらしい。
そんな説明と共に、息子を頼む。そう言われた私は出来る限りの事はする。そう言ってその場を後にした。
四日目。
本日は更に実戦経験を積むためにちょっと遠出をしに来た。
なんでも里から少し離れた所にラード……ではなくて、豚肉……でもない、オークの巣が出来ているらしく、その駆除をしに来たのだ。
お肉が手に入り、修行も出来る。正に一石二鳥の訓練である!
オークのお肉も残り数トンと、中々に少なくなっていたので補充出来る良い機会だ。
えっ? 十分な量がある? 嫌だな、何言ってるの? 少ないよ?
そんな訳で本日レリウスには、人化状態で私が用意した質の悪い武器を使って戦ってもらう。
因みに攻撃力を下げるデバフ防具付きだ。
身体能力での圧倒や、武器によるゴリ押しを避けつつ、多数の相手と戦闘する経験を積ませる予定です。
オーク程度なら多少の怪我はしても、死ぬ事はないから動きの訓練をするには丁度いいレベルである。
と、いう事で見つけたオークの巣とオーク達。その名もアイランドオーク。
……えっ? ここ島でしたの? 違う? じゃあなんでアイランド? あっ、誰も知らないのね……。
まあ、若干の謎を残しつつ見付けたオークの姿は、なんと言うか肉の塊だった。
あれやっぱただのラードじゃね?
他のオークがプロレスラーや力士のような体型だとすると、アイランドオークは偶にバラエティーで出るような、太り過ぎて動けなくなった人みたいな見た目だ。
それはもう見事な贅肉。一歩歩く事に全身が皿に移したプリンのように、プルンプルンと波打っている。
しかもあれは汗? いや、多分もうただの油だな。の、せいでテッカテカなのが嫌だ。
正直ものすごく動きにくそうだし、触りたくはない。
チラリとレリウスを見れば凄く嫌そうな顔をしてる。
だがこれも訓練、心を鬼にしてレリウスをオークの中心に突入させる。
正直、横の人の顔がすげー怖いけど気にしない。
さてさてどうなる事やら?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
お読みいただきありがとうございました。
もしハクアのことを応援しても良いよ。続きが読みたいって方は
★評価とフォローをしてくれると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます