第439話帰りてぇ〜〜
「見えたぞ」
「おお〜」
その一言にベッドから起き上がった私は、その光景に思わず声が漏れる。
私の視線の先に現れたのは様々な様式の家の数々だ。
中華風の建物に日本式の和風の家屋、インドのタージ・マハルの形に似た建物まである。
しかしタージ・マハルは墓ではなかっただろうか? 明らかに宮殿のような扱いで人が出入りしている。まあ良いか。良いのか?
「ふっ、どうだ。素晴らしい光景であろう?」
「うんまあ、なんて言うか。ごっちゃごちゃですな」
「ぐっ、また貴様はもう一度燃やされたいか」
「二回目は勘弁かなー」
はい。私ここに来る前にブレスで焼かれました。
気を付けて弄ってたんだけど止まる所を見誤った。無念。
理由はと言えばここに到着する少し前、最初の自己紹介の時に言っていたダナストラ火山を通った時の事。
「ここが妾の父が住まう場所だ」なんて言われたので思わず
「えっ? 目的地ここ? やだよ。暑いし熱そうだし。人を呼びたいならもっとちゃんとした住処に案内しろよトカゲ」と、言ったらこんがりと焼かれました。
まったく。冗談というものをわかって欲しいよね。
まあ、素の反応だったけど……。
その後トリスの父こと、グートルースとの顔合わせは後でという事になりここ、龍の里……里? に来る事になったのだった。
「地球での様式を知っているとその感想でしょうね」
「そうだよねー」
とはテアとソウの言葉。私の感想はどうやら間違ったものではなかったようだ。
しかし横のユエを見ると、目を見開きキラキラとした瞳で里を眺め口を開けてる事から、まあこれも悪くないかと思う私でした。まる。
そんなユエ、現在は修行と着実に依頼をこなしていた成果により、刀鬼から武鬼へと進化して、半鬼人の領域に足を踏み入れた。
そして半鬼人になったからか、その姿はもう何処からどう見ても、肌の色を含めて普通の女の子。
まあ、額から結構立派な角が一本生えているがそれはそれで可愛い。額に巻いている鉢金もいい感じだ。
進化する事で黒髪のロングに変わり、顔付きも幼さを残しながら将来が楽しみな要素も増え、可愛いから綺麗に変貌する合間の独特の魅力を持っている。
背は私よりも少しだけ高く、アクアを見下ろして反応を見て遊んでいたのは記憶に新しい。
そんなのユエの現在の衣装は袴姿となっている。紺色の袴下に淡い桜色の袴。これらの衣装もとい装備は、私と現在街の服屋で働いているアラクネの縫華との合作だ。
デザインは私が書き上げ、私の糸に縫華の糸を合わせたハイブリッドの布を使用したオリジナル衣装。
しかもその生地は布という本来柔らかな物を、そこらの鎧を凌駕する逸品へと変貌させている。
それぞれの糸を使う事で、今までの私単体の糸で作った生地よりも更に性能が上がっているのだ。
うん。出来上がりを見た時に本当に縫華を仲間にして良かったと思ったよ。戦闘力? そんなんどうでもええねん。
大事なのは立ち絵なんだよ? 同じキャラでも衣装が違えば課金も辞さない覚悟なんだよ!
そして今は着けていないが、戦闘時には甲冑のような大鎧の一部の装備を身に付けるようになった。
両手に籠手と大袖、両足に具足を着け、腰には草摺を着ける変則的なスタイルだ。
胴部分にも着けた方が良いのでは? との意見もあったのだが、これ以上は動きにくいという事でこのスタイルになった。
その代わり胴部分の生地は厚手のインナーも増やし、袴の下に着る肌着も少し厚めになっている。
これによりコロの作った鎧程ではないが、防御力は中々のものになっている。
ステータス的には平均的ではあるが、その中でも物理攻撃、物理防御、敏捷が高く。魔法系はそちらに比べて低めになっている。
そしてユエも半鬼人となった事でスキル【鬼珠】を獲得し、鬼珠装備【陰刀・影牙】を手に入れた。
この刀には特殊な能力が付いており、魔力、気力を消費して刀身を伸ばしたり、切れ味を高めたりする事が出来る。
その他にも奥の手があるようで、そちらはまだ私は知らない。本人もまだ訓練中に数回試した程度らしい。
そんな訳で見た目はもう立派な大和撫子風、若干千景とキャラ被りしている気がするが、ユエは侍や武士系、千景は巫女系だからそこまで気にしてなくても良いだろう。
二人とも自分のアイデンティティは守って欲しいものだ。キャラ被りのソーシャルディスタンス!
因みにだが他の面々も
フレイ→ホブゴブリンウォリアー→大戦半鬼
スイ→ホブゴブリンマジックナイト→水聖半精
ジュピ→盗鬼→鬼忍
コン→グール→ハイグール
アス→ホブゴブリングラップラー→堅牢半鬼
サン→ホブゴブリンウィザード→魔導半鬼
と、中々の進化を遂げた。
通常ならオーガへ進化して、そこから才能のある一握りが鬼人へと至るのだが、ほぼ全員が半鬼人となり【鬼珠】スキルを獲得。スイは驚く事に妖精種へ変貌を遂げた。
因みにだがコンはそのまま上位種のハイグールとなり、最近ではギルド内に同志が生まれ、益々腐っていっているらしい。
だから意味が違うと思うの……。
それにしても何故こんなにも鬼人種へと至るのが多いのか。それはどうやら私に原因があったらしい。
どうやら主人である私の影響が色濃く出た結果なのだそうだ。
本来名前を与えられ、直接の配下となった者は主人の影響を色濃く受けるのだそうだ。
主人が力を付ければ付けるほど配下もまたその恩恵を受ける。それ故ユエ達は私に引っ張られる形でこんな進化を遂げたらしい。
更に言えば同じゴブリン種、しかも圧倒的な弱者であった事も要因としては大きいそうだ。
聞いた話では、メイド部隊のサキュバス達も私の進化に合わせて、少しステータスが上がったりしているそうだ。
因みにだが、アクアやクーはその範囲外らしい。アクアは私の半身であり厳密には配下ではない為、クーは元々私よりも強い元魔王としての力を取り戻しているからだそうだ。閑話休題。
「着くぞ」
そう言って高度を下げるトリスの言葉に従い、着地の際の衝撃に備える。
因みにテア達は無用な混乱を避ける為、今は女神空間の方にいっている。
一回怒らせたから衝撃をちゃんと消してくれるか分からないしね!
と、警戒は一応したがどうやらその心配はなかったようだ。
その代わりと言ってはなんなのだが……。
「これ何よトリスさん」
「……どうやら行き違いがあるようだな」
降り立つと同時、人型に戻ったトリスを庇うように立ち、ベッドの上に居る私とユエを槍を構えて取り囲む面々。
その姿はドラゴンと言うよりも翼の生えたリザードマンに近しい。翼が有りドラゴンのようにも見えるが、大きさは人間よりも二回り程の大きい。
トリスのドラゴン形態と比べても小さく、人間のようにヘルムと防具を着込んでいる。
調べてみると彼等はリューナイトという竜の亜種らしい。ドラゴンよりも格下のワイバーンやドラゴニュートに近しい竜種だろうだ。
しかしリューナイトとは、進化したらリューパラディンにでもなるんだろうか?
リューニンジャやリューメイジも見てみたい。
「あるじ。殺る?」
「うん。少しだけ落ち着こうか。で、どうすんの?」
「すまんが誤解を解く。暫く大人しくしていてくれ」
「え〜」
こうして、わざわざ拉致られる形で招待された龍の里で、一番最初に案内されたのは牢屋の中でした。
帰りてぇ〜〜。
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