第392話頭がパンクにパンクして処理落ちしてシャットダウン?
前回の三つの出来事!
一つ、アベル達を森の
二つ、暇なのでこの世界についての考察を大公開!
三つ、冗談でステータスにブラフ噛ましたら本当にスキルが出て来た!
そして今回のハクアさんは!
「……えっと、そのまあ、なんだ。ドンマイ」
「そ、そうですよ。ハーちゃんドンマイです」
やめて、ドンマイコールはやめて。それは心を抉るだけの行為なの……。
「なんなんだよ。なんで本当に出て来ちゃうんだよ。てか、出て来るってそもそも何よ? 何人の事を本当に騙してくれてるの? ステータスを看破とか相手に対してやる物で、自分のステータスに対してやるもんじゃねぇんだよぉぉ! ぜーぜーぜー……」
「まあまあ、落ち着いて下さいハーちゃん。それで? 今の冗談で本当にスキルが発現したのは良いですけど、どんなスキルがどう発現したんですか?」
「まずはそこの把握が先決だな」
華麗に流しやがったなちくしょうめ!? 他人事だと思いやがって!
だが、私としてもそこは気になっていたので、大人しくスキルの詳細を調べる事にする。
だって、トンデモスキルは嬉しい反面、下手をすれば【竜装鬼】のように身体が壊れる可能性があるからね!
補助制御系スキル【智慧】
脳内の処理速度、演算能力が飛躍的に上昇する。多重思考、スキル制御等……。
「おおう……」
「どうした?」
「やっぱりトンデモ無いスキルだったんですか?」
「いや、やっぱりて。基本的には脳の処理速度を上げたり演算能力がアップするスキルみたい。ただそれに、スキルの制御能力とかが付いた感じ」
「意外に普通だったな」
「おい、意外とは失礼だぞ」
「お前の事だから、あれだけフラグ立てたしトンデモ系かネタ系に走ると思った。まあ、使うまでまだ分からんが」
野郎……せっかく良いスキルだね。で、終わりそうなのになんて事を言いやがる。
「そうですね。一回使ってみたらどうですかハーちゃん」
「使うたって何に使えと?」
「なんか適当にやってみたらどうだ?」
「ふむ……」
そういえば【鑑定士】や【解析】とかも統合されてたから、この辺の物適当に調べてみるか。
そーれ。発動……。
「ミギャーー!!」
発動した瞬間、私は奇声を上げて木の上から落下してしまった。
それはもう見事に落ちた。
受け身も取る事無く頭から真っ逆さまだ。
そして無様に地面に転がる私は夏に見掛ける、逆さまになって、ファイナルファンタジーする蝉のように地面を転げ回る。
痛い、マジ痛い。マジくそ痛い! 何? 何これ何が何して何ががががががががごが……が?
「落**け白*!」
「ハー*ゃん**かりして下さ*!」
二人が木の上から降りて来てれ? 私に何*を喋りかける? 二人って誰れれれれ? わたたたたしししははは──ブツン。
▼▼▼▼▼▼▼▼
目が覚めるとそこは柔らかに頭を包み込む太ももさんの上だった。
うむ。後頭部が幸せだ。
「ハーちゃん?」
「起きたか」
後頭部さんの幸せを、顔面さんにも分け与えようと寝返り打とうとしたら声をかけられた。
どうやら私はいつの間にか瑠璃の膝枕で寝てたらしい。
わざわざ裾を捲って生足での膝枕だ。だから回復が早かったに違いない。サービス満点で大満足です。
「で、何があったか話せるか?」
「えーと、頭がパンクにパンクして処理落ちしてシャットダウン?」
「分かった。もう話すな何も分からん」
分かったって言いましたやん!?
「とりあえず、スキルが暴走したって事だろ?」
「ちゃんと伝わってんじゃん」
「こんな事で伝わる身にもなれ」
説明を求められたから説明したのに……解せぬ。
「暴走ってどんな感じだったんですか? 私達からは、ハーちゃんがいきなりフリーズして、木の上から落ちて、反対になった蝉みたいに頭抱えてのたうちまわってましたけど?」
言い方よ……。
「いや、とりあえずその辺の物適当に鑑定しようとしたら、目に映る全部が鑑定されて脳の処理限界を光速で突破した?」
「……お前で処理限界って使える奴居るのか?」
「居るんじゃないの。多分?」
「ハーちゃん以上って言うと、物理的に頭を増やす?」
「「割れと!?」」
「いえ、そうではなくて多頭首的な?」
なるほど、八咫烏さんとかヒュドラさんみたいなのか……と、言う事は進化で目指すのは鬼族だけに阿修羅さんとか? あるのかな進化先に?
「そんな物になったらますます人間として疑われるぞ。今でさえ信じてない奴も居るんだし」
「失礼だよね。とりあえずその噂流してるの教えてくれないかな? 少し肉体言語で談笑して来たいから。主に笑うのは私だけど」
「やめとけ」
全く失礼な話だ。
元人間だと言っているのに、モンスターよりもモンスターのスキルを使いこなすからって、そんな事を疑うだなんて!
ちょっと角生えたり、尻尾や耳が生えたり、糸や毒出したりするだけなのに!
しかし、顔が三個になったら食事も三倍になるのだろうか? 胃は一つだけど【暴喰】さんが、頑張ってくれそう。甘い物と、しょっぱい物と、辛い物を同時に別々に食べる事が出来ると言うのは、少し検討の余地があるかも知れない。
しかし、検討して経験した段階で、人族として認めて貰えなくなる可能性もあるのが悩ましい。
「しかし、鑑定とかその辺の物が軒並み使えなくなったって辛くないか?」
「あ〜、いきなり全力行使したから行けなかったのかな? と、いうか物を指定しなかったから葉っぱ一枚一枚から、虫とか木の種類まで一気に来た訳だし。無意識下の制御を意識下に置いてやれば何とか? って、またやる事増えてるよ!?」
ココ最近身体の破壊が多すぎて、活躍の場を与えた訳でもないのに、何気に再生系のスキルが大活躍だ。
もうそろそろ筋トレの超再生みたいに、破壊された分元に戻ったらパワーアップしないかな? もうどっかのヤサイの人みたくなりたいよ。スキルを使えば簡単に自壊するし、死にかけるのもいつもの事だから、簡単に強くなれる筈! 酷いな。
でも多分、説明にあった多重思考と言うのがキモだと思う。
自分の思考を高速化して、分割して並列処理を並行して行う。こうする事で割り振った思考を使い潰しながら、脳内で仮想領域を創り出し、本体に解析情報をフィードバック出来るようになる。
そう、思考を脳内で分身させるだ! うん。意味は分からんがそういう事なのだろう。そしてもうひとつ。
「まあ、これで【鑑定士】が最初にあんな少ないポイントで取れた理由が何となく分かったね」
「そうですね。さっきの予想通りハーちゃんの大元のスキルからの下位だったっからって事ですよね」
「ああ、元々の上位スキルを持っていたから、下位スキルが格安で取れ、アクティベートするのに必要なスキルも簡単に取得出来たんだろ。多分?」
うーむ。ここまで来ると言い逃れ出来ない感じだよな。いや、実際は本当にそうなのかは分からないんだよ? 本当だよ?
「まあ、推測の域は出ないしこれも後で検証と言う事で……」
なんか私、こんなんばっか積み重なってくな。まあ、今に始まった事じゃないし、今さなら感じだけど。
「っん?」
「気が付いたか?」
「アベルさん達が強い気配を持つ相手の索敵圏内に入りましたね」
「ああ、一瞬だが気配が膨れ上がった。索敵圏内に足を踏み入れた事で気配が漏れたんだろうが……。私達でも今まで気が付かなかったが行けると思うか?」
「どうだろね。いつもなら速攻逃げたいけど、見捨てる訳にもいかんからね。行くだけ行ってみようか?」
「珍しく人道的だな?」
「ふっ、当たり前じゃないか。ここで死なれて肉壁計画……じゃなくて、英雄(予定)を死なせるのは人類の損失だからね」
「うん。それでこそハーちゃんって感じですね」
「そうだな。立派なお題目よりも余程らしい」
なんて失礼な奴等だ。冗談に決まってるのに……冗談だよ?
言うが早いか私達は気配の元へと急ぐ。
ふむふむ。【智慧】のお陰でスキルの制御能力は本当に上がってるな。【智慧】を使わない分にはかなりスキルが使いやすく良い感じになってる。まあまだ、完全制御出来る気は全くしないけど。
一人スキルの具合を確かめながら、少し進むと向こうもこちらに気が付いたようだ。索敵圏内に侵入した途端に、私達の力を感じ取って臨戦態勢に入ったのが分かる。
えー、向こうも気配察知出来るの。気配消して察知も出来て、私達に気が付いても動かずに待ってるとか絶対強いじゃん。怖いわ〜、澪に押し付けよ。
「おい」
「はいっ!」
「今絶対何かろくでもない事考えてたろ?」
「そ、そそそそそそ、そんな事無いんだよ?」
「少しは隠せよ!?」
「二人とも巫山戯てる場合じゃないですよ。ほら、もう相手はお待ちのようです」
相手の動きを見れば大体の攻撃圏内は分かる。そのギリギリ手前、十五メートルほど手前の木の枝に止まった私達を見詰めるモンスター。
左右四対八本の足に頭胸、腹を持つ蜘蛛の下半身。そしてその本来頭のある部分には、人間の女の上半身が生えていた。
そのモンスターの名はアラクネ。
創作物として幾度となく見た事のあるモンスターの一種だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます