第345話「「「二人とも余裕ありすぎ!!」」」

「……まあなんだ。よく生き残れたな?」


「本当にね……」


 攫われてから合流するまでの間にあった事を、簡単に話した結果、澪に言われたのがこの言葉だった。


 いやもう。返せる言葉が本当にね。としか言えないよ。


 この時一緒にヌルの紹介は済ませた。


 新しい仲間だからね! 紹介は忘れないよ。


 因みに今は休眠状態なので会わせてはいない。

 決してマスコット枠と、瑠璃を含めた数人の目が据わっていたからではない! ないからな!


 詳しい内容は後日。という事になっているのは、私の状態をある程度理解しているからだろうか? 助かった。と思ったら「説教は今度その時だ」と言われた。

 逃げ切れてなかった。無念。


 この話題はヤバいと感じた私は、素早く澪達がダンジョンに突入した時の事を聞く事にした。

 しかしそれすらも「あからさまに話題逸らしたな」と、文句と共に冷たい視線を頂戴する。


 だから、何故にバレるし。解せぬ。


 それでも溜め息一つ吐くと澪は突入時の事を語り始めた。


 どうせ言うなら素直に教えてくれれば良いのに、と思ったら何も言ってないのにまた睨まれた。


 だから何故!?

 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 ──ハクアが八咫と戦う少し前。


 ハクアが自分を監視している目が少なくなった事に気が付いた頃、ハクアの元へと向かっていた澪達は、騎獣の上からようやくダンジョンの入り口を確認出来る場所までやって来ていた。


「──見えました。あれがダンジョンの入り口ですね。恐らくはあそこにマスターが居ると思われます」


「ほう。あれか……」


 澪はここまでの強行軍で減った体力を回復薬を使って回復しながら、ヘルが指し示すようやく見付けた地面の中へと続く、洞窟の入り口を眺め呟く。


「はい。どうやらこの辺り一帯の地面の下は、全てダンジョンの一層のようですね」


「この一帯がですか!?」


 ヘルの言葉に瑠璃が驚くのも無理が無かった。

 何故ならヘルが言った一帯とは、東京ドームが丸っと二個ほど入ってしまいそうなほど広かったからだ。


「ふむ。どうやらあのダンジョンは異界型のようじゃな」


「異界型? クー、どう言う意味だ。その異界型というのは」


「何じゃ。知らんのか澪? 大体の区分じゃが、ダンジョンには幾つかの型があるのじゃ」


 知らんのか? と、言いたげなクーの視線を受けた澪は仲間を見回すが、その顔は一様に驚き、唯一驚いていないのはクーの仲間だったリコリス、リリーネ母娘だけだった。


「聞いても良いか?」


 突入前、少しの小休止の意味を込めて、クーの話を聞く事にした澪に頷きクーは説明を始めた。


 まず、ダンジョンには大きく訳て二つの物がある。


 その一つが自然発生した物。そしてもう一つがダンジョンコアを使って作られた人工の物の二つだ。


 自然発生した物は洞窟などに魔物が住み着き、住み着いた魔物の魔力が澱みとなり、ダンジョンコアが産み出される。又は瘴気などによって発生する魔力の澱み、霊脈などの力の溜まり場に、ダンジョンコアが産まれダンジョンになった物だ。


 そして更にその二つを分ける物として変異型、異界型の二つに分けられる。


 変異型はダンジョンコアによって、元からある物がダンジョン化した物だ。

 特徴として、元となった物から性質が大きく変わる事はなく。水場には水系モンスター、溶岩地帯等には火系のモンスターと、その場の性質通りのダンジョンとモンスターが生成される。

 ダンジョンコアの成長によって、モンスターが強くなったり、ドロップアイテム、宝箱のアイテムの質が上がったりもするが、全体的に難易度は低めになっている。

 また稀にだが、洞窟などがダンジョンになった場合、ダンジョン自体が成長して大きくなる事もある。

 基本的にモンスターは、全ての階層で同じ系統の物が産み出され、一体のボスか、何回層か毎にボスが設置されるのが特徴だ。


 異界型はダンジョンコアによってダンジョン自体が産み出された物だ。

 特徴として、一階層は土地の影響を大きく受けた物が多く、次回層からは全く異なる性質を持った階層になる事が多い。

 例えば、水に満たされたフィールドの次が、階段を上がるだけでマグマのフィールドになっていたりする。

 これは階層毎に異界と繋がり、ボスモンスターの性質にフィールドが設定されている事が多い為だ。

 各階層が異なる次元に繋がっていても、次階層への階段や扉、地面や壁などで空間を繋いでいる為に安全に行き来が出来る。

 異界型は人工の物に多く見られる特徴で、各階層にボスモンスターが配置されている事も多く、基本的にモンスターは階層毎に全く違い、フィールドの性質とボスによって大きく変わる。

 その為、多くの準備をしなければ容易に死んでしまう程に難易度が高くなっている。


「──と、大雑把にじゃがこんな物なのじゃ。基本的に異界型は、複数の対策が必要になる分、難易度も高いのじゃ」


「ほう。なかなか面白いな。しかし、そうなるとあのダンジョンには、各階層にボスが居るという事か……」


「そんな!? は、早くご主人様を助けに行きましょう。ミオ!」


 澪の言葉を聞いたアリシアが慌てて澪に詰め寄る。

 しかし、澪はそんなアリシアを宥めると、今まで黙って地面を見詰めていた瑠璃に話し掛ける。


「行けそうか?」


「はい。あの辺が良さそうですね」


 なんの話をしているのかと、首を傾げながら見てくる仲間に取り合わず話を続ける二人。そしてお互いに頷くと、時間を掛けて体内で練っていた魔力を解放する。


「な、何!? 何をする気なの!?」


 エレオノの驚きの声には答えず二人は詠唱を始める。

 それを聞いたクーは二人のやろうとしている事を理解して止め入る。


「地面を崩してそこから入ろうとしても無駄なのじゃ! ダンジョンには自動修復機能がある。あの規模のダンジョンとなると、入る前に修復される方が早──」


 しかし、忠告を言い終わる前に二人の魔法は放たれ、大規模な破壊音と共に一帯の地面を崩落させる。──だが、やはりクーの言う通り地面は瞬く間に修復されてしまった。


「あっ、本当ですね」


「むぅ、だから言ったのじゃ、ルリ。これで中にも気が付かれてしまったぞ」


「ああ、気にするな。少し前から既に捕捉されてる。今更そこには拘る必要無い」


「えっ!? それってむしろ駄目なんじゃないのかな。ミオ!?」


 なんでもないように言った澪の言葉にコロが反応する──が、澪は気にするなとでも言うように宥め「……来たぞ」と一言口にする。


 その言葉に、何が? と、思う暇も無く地上では様々なモンスターが、次々とダンジョンから溢れ出し、遂には上空に居る澪達に攻撃を仕掛けて来たのだった。


「さて、憂さ晴らしと勝手に攫われたヒロイン枠の回収と行こうか」


「ハーちゃんが主人公で私がヒロイン枠が理想的だったんですが……」


「「「二人とも余裕ありすぎ!!」」」


 そんないつも通りのやり取りから戦闘は始まった。

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