第339話流石一級フラグ建築士

 今の私は今までの服とは違うちょっと和服っぽい装備を纏い、腕には鬼の爪のような物が指先に付いた篭手、頭には鉢金が付き、鬼の証ともいうべき角がその鉢金を貫くように大きくなって伸びている。

更には少し牙が伸び、纏う鬼の力もいつも以上に大きくなっていた。


 動き易さ重視の服装は最近多い改造和装というよりは、和ロリに近い感じだ。(勿論下はスカートでなくてスパッツ)

……うん。伝わりずらい! 服装を言葉で説明するのは難しいよね。


 変幻・酒呑童子


 それが今私が使った【鬼珠】の能力の一つだ。


 この状態では白打と装備品全てが【鬼珠】に飲み込まれ、私の魔力、気力、鬼の力が合わさり、高位の者が使える魔装のようになるのだ。武器としては勿論の事、防具としても身に纏う事ができ攻防一体の装備に変わる。


 まあ、要は変身能力みたいなものだ。やったぜ! これで全く無かった主人公力が少しは増えた!


 因みに服装が和装っぽいのも篭手が爪付きなのも私のイメージする鬼の影響だ。


 能力の一つ。と、いうのはそのままの意味で【鬼珠】を初めて使った時に心に教えて貰った事なのだが、この能力のキモは私の力を引き出し強化すると同時に、装備品全てを取り込み、私の力と融合させ、取り込んだ装備品の特性を引き出しながら、全く新しい装備として再構成してくれる所だ。(勿論今までの装備を呼び出す事もできる)


 そして何より重要なのが、私の【鬼珠】を使うには強固なイメージが必要なのだ。そしてイメージしやすくする為に酒呑童子を選んだのだが、それはソウとの会話が切っ掛けとなっていた。

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 「だぁー! やっぱ続かねぇ!」


 心に教えて貰い【鬼珠】の力を使いこなす修行を続けていた私だったが、多少維持出来る時間が長くなっても動くとすぐに解けてしまって、とてもではないが実戦で扱えるレベルにはならなかった。


「上げたいステータスを意識してスキルを使う。方向性は間違っていない筈なんだがな」


「そうは言っても全く出来る気しない。てか、イメージ足らないとか言われてもこれ以上は分からんし」


 あまり上手く行っていない修行に私は思わずいじける感じで言ってしまう。だが考えて欲しい。強くなった自分をイメージとか意外に難しいのだよ。あまりにも現実離れしてると意味無いしね。


 グロス、マハドルとの戦いを経た私は、やはり自分の攻撃力と防御力の低さを補いたいと考え、そこを伸ばすイメージを必死にしていたがどうにも上手く行かずに悩んでいた。


「やっほーハクちゃん。今日も頑張ってる?」


「見て分かんでしょ。超頑張ってるよ! だからそろそろ休憩させて!」


「ダメだ」


「鬼! って、鬼は私かぁ〜」


 そんな中、私の様子を見に来たソウの言葉に自分の努力を語り、休憩を得ようとしたが心にあえなく却下された。酷い。


 しょうがないのでソウにもあらかた現状を説明するフリをして、なんだかんだと休みを入れながら、何か良い方法が無いかと聞いてみる。

するとなんとも意外な答えが返ってきた。


「だったら強くなった自分をイメージするよりも、強い何かをイメージしてそれに変身する感じの方が良いんじゃない? ほら、主人公っぽい変身能力だよ。改造されなくても出来るようになるなんて、ライダー系よりも日朝ファンシー系だね。マスコットも用意しないと」


「またメタな発言を。そんなんで何とかなるのか?」


「ふむ。悪くないかも知れないな。明確なイメージに輪郭が付けばそれだけ強固になる。まあ、身体を作り変える変身というよりも、武装を身に付けるイメージに近いかも知れないがな」


 ふむ。なるほど。変身と言われたからどうかと思ったが、要はヘルさんの強化外装と同じようなイメージで、それに何かしらの虚像を付けてイメージ補完か。

鳥型ロボットと合体して飛行出来るとか、ゴリラ型ロボットで腕力強化みたいな。ふむ。そう考えれば確かに──。


 二人の言葉を頭の中で反芻しながらイメージを組み立てて行く。そんな風に考えていると私の顔をソウがニマニマと見ているのに気が付いた。


「……なんでい」


「いやー。あのハクちゃんがこうやって真面目に修行してるなんてお姉さん嬉しくて尊いなぁーと」


「……だって逃げようとしても逃げらんないし」


 私がスキルを使うと女神の力を使って追っ手が掛かるのだ。逃げる事に定評のある流石の私もそれから逃げ続けるのはキツイ。


「はあ、何を言っているんだ君は。これから現れる強敵に備えて強くなるに越したことは無いだろう」


 などと呆れながら言われたので私としても物申したい。


「心こそ何を言ってんだ。私はスローライフを楽しむんであって、バトル物に移行する気は無いんだからな!」


 全く、けしからん事を言いをって。本当になったらどうしてくれるんだ!


「流石ハクちゃん流れるようにフラグの建設。ハクちゃんのそう言う所嫌いじゃないよ。ハクちゃんのそんな所ほんとすこ」


「オイコラッ! 誰がフラグ建設したって! 滅多な事を言うんじゃない!」


「そうやってまた乱立させてく。流石一級フラグ建築士。シビあこ!」


「シビれるなよ! あこがれるなよ! そしてそんな嫌な資格取った覚えねぇよ! ただでさえ回収率良いんだから変な事言うな!?」


「まあ、ハクアのネタは放っておいて」


「ネタじゃありませんのことよ!」


「パワーと防御っていうと巨人や鬼ってイメージだよね」


 アッサリ流されました!?


「まあ、確かにソウの言いたい事は分かる。鬼とかスゲー強くてタフなイメージあるよね。終盤雑魚っぽく出て来ても絶対雑魚の攻撃力と防御力じゃねぇよみたいな」


「あー、あるね」


「また君達はメタな発言を。しかし、今のハクアは種族も鬼だからな。一番最初のイメージとしては合っているかも知れないな」


「ふむ。力が強くてタフなイメージの鬼……酒呑童子とか?」


「良いんじゃないかな? 数居る日本の鬼の中でも最強とされてるしイメージとしてはピッタリじゃない?」


「ああ、それにこの手のイメージは、関わった物が記号となる場合が多いからハクアには合っているかもな」


「記号?」


「簡単に言えば私達みたいなって事だよ」


「ふむ。つまりは起こった事柄、やった、された事、使った武器から名前の意味、象徴的な物迄がこの世界では能力に反映される……と」


「ああ、そうだ。まあ、実際どうなるかはこの世界のシステムの判定次第だけどな」


 ふーむ。意外に重要だな名前とか。


「まあでも、シルフィンさんとか設定細かくしてるから結構いい感じになると思うよ」


 あー、駄女神だから有り得そうかも。


 そもそもこの【鬼珠】の変幻という力は制約が色々と多い。


 1、日に一度しか使う事が出来ない。


 厳密に言えば一度使ってから24時間がクールタイム扱いらしい。


 2、戦闘が始まってから五分しないと使えない。


 この戦闘は同一の戦闘でなければ無理らしく。今回のようにインターバルがあるとカウントされない。判定方法は不明だ。


 3、HPが四分の一までMP、気力は半分まで減らなければ使えない。


 これに関しては戦闘中でなくても適用されるらしいが、わざわざ死ぬ危険を冒してまで減ったHPを放置する奴は居ない。


 4、変幻先のイメージが不十分だと失敗する恐れがある。


 失敗しても一回とカウントされて24時間使えなくなる。


 この四つをクリアしないと使えないのだ。


 なので修行は心やソウと戦いHPなどを減らしてからでないと出来ない鬼仕様。心は戦闘訓練と併用出来ると喜んでいたけどね。


「まあでも、ハクちゃんの【鬼珠】には制約が多いからその分使いこなせれば強力になると思うけどね」


「そんなもんなん?」


「ああ、君にはまだ話してなかったな」


 なんでもスキルなどには私の【鬼珠】と同じく制約があるものが幾つかあるらしい。そしてその制約が多いほど能力が強力になるのだとか。


 そして一定の手順を踏めばスキルには自由に制約を付ける事も出来るらしい。


 アイテムを使ったりね。


その他にもやり方あるらしいけどそれは今度詳しく教えてくれるそうだ。


 制約が無い物は簡単に使えるが効果は低くなる。制約が多い物は簡単には使えないが効果は高いらしい。


魔法の呪文が高威力になればなるほど長くなるのも、イメージ補完と制約が合わさっているからなのだとか?


「因みに、ハクちゃんの【鬼珠】はレベルが上がれば効果はそのままに幾らか制約が軽減されると思うよ」


「ほう」


「スキルにレベルがあって制約の付いている物は大抵効果が上がるか、制約が軽減されるんだ」


「なるほどねー」

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 などというやり取りがあったのだ。


 今の私ではこの一つしか使えないが、より鍛錬を積めばその内種類を増やす事が出来るらしい。


 出来れば鬼以外の変幻も作りたいな。


 因みに、HP減らないと使えないスキルなのだが、変幻が成功するとそれまでのダメージ、MP、気力は全て回復する。


 まあ、それでもキツいんだけどね。


 しかし、惜しむらくはこの手札を切っても勝てる確率が低い事なんだよね。


 恐らく先程のような一方的な展開にはならないだろうが、ガダルもまだ全くといって良い程本気を出していない。


 正面からやり合う位は出来ると思うけど──どうだろ?


 まっ、それでもやるしか生き残る道は無いんだけどね。


 そう自分を奮い立たせてガダルへと突撃して行くのだった。

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