第338話さあ、第二ラウンドの始まりだ!!
私の攻撃にドンピシャのいやらしいタイミングで合わせられたカウンターが自分に迫るのを、加速された知覚の中恐怖に抗いながら確りと見据える。
そして──
ここだ!!
お互いの攻撃が当たる直前、私は瞬雷を発動して予め仕掛けおいたクナイへと瞬間的に移動する。
流石に反撃する程の余裕は無かったが、私の魔力をマーキングしたクナイを仕掛け、そこにガダルを誘導するよう動く位の事はしていたのだった。
私とてやられっ放しではないのだよ!
瞬雷を使った移動後の体勢や向きは、何も考えていなければ急停止した感じになるが、ちゃんとイメージを固めていれば私のイメージが優先される。
つまり移動直後に進行方向と逆になるイメージで飛べば、減速する事無く180°真逆に移動する事が可能なのだ。
まっ、一瞬雷化して目的位置で肉体を再構成するんだから当然っちゃ当然だよね。
かくしてガダルの裏をかく事に見事成功した私は攻撃の最中、しかも絶対に攻撃を中断したとしても回避も防御も間に合わないタイミングでの、背後からの奇襲という荒業に成功する。
恐らくこいつ相手には二度は通じない、一回限りの攻撃チャンスだろう。言わば格ゲーの必殺モーション入ってる相手の、キャンセル効かないタイミングでの攻撃のようなものだね!
移動した私はそのままの勢いで前方に倒れ込む。
通常位置から低空へ。僅かとはいえその重力加速をも利用する移動法。
倒れ込んでから地面に接地する寸前まで力を溜めた蹴り足の力を、地面スレスレまで近付いた瞬間に解放する。
ドッ! と、先程よりも更に加速した私はスパークと音を残して一気にガダルの背中へと肉薄する。
地面を踏み砕くかのような震脚で放射状の割れ目を地面に描き、加速と力の全てを拳に伝え【白雷】を纏った拳でガダルの背骨を砕くべく打ち抜く。
バキィン! と、硬質な音と白いスパークを飛び散らせ炸裂した私の攻撃は、届く前にガダルの張る【結界】に阻まれその勢いを減衰されてしまった。
「くっ! がっつっ!?」
なんとか攻撃は届いたがその威力はまったく足りておらず、ガダルを覆う巨大な魔力に弾かれダメージには至らない。それどころか同じく攻撃後の一瞬の硬直を狙われた私は、ガダルの放つ後ろ蹴りを腹に食らってしまう。
インパクトの瞬間、後ろに飛ぶ事でダメージを極力逃がしたにもかかわらず、吹き飛ばされた私のHPはたった一発の攻撃で四分の一も同じく吹き飛ばされた。無理な特攻と併せて今のHPは半分程だ。
クッソ。地力がここまで違うのかよ。
「いい技だな」
そう言ったガダルの前には【結界】が小さく何層にもなって重なっている。コイツは私の闘いを観察する事で私の多重結界の技術を奪い去ったのだ。
チッ! やっぱ狙いはそれか。
私の技術を一つ奪ったガダルは一言そう言うと、ドっ! と、音を置き去りに私に追撃を掛けに来る。
攻撃の威力を殺し切れていない私は未だ吹き飛んでいる最中だ。それでも追撃を掛けるべく迫って来るガダルに対して私が選んだのは、防御でも回避でもなく迎撃だった。
【オルト】を取り出すと両の手に構え四肢と頭を弾岩で狙い撃つ。
だが、迫り来るガダルへと狙い違わず全てヒットした弾岩も、ガダルを取り巻く魔力を前に虚しく崩れ去ってしまう。
それを見た私は蒼爆も繰り出しスキルも使い連射。しかし、それでもガダルは避ける素振りすら無くそのまま突っ込み大爆発を引き起こす。
爆発の熱波に煽られ、更に吹き飛ばされるスピードを上げながら見た物は、私の遠距離最強攻撃力を誇る蒼爆すら物ともせずにコチラに向かって来るガダルの姿だった。
くそ!? やっぱりあの魔力が厄介だ!
テアや心から聞いた話によれば、ある一定以上の力を持つ魔族はああやって自らの魔力が防御障壁になるらしい。そしてやはりというべきかガダルもその能力を持っていた。
追い付いて来たガダルの魔力の乗った拳を避ける為に【オルト】で風魔法を発動して無理矢理身体を地面に押し付ける。
足から地面に着いた私の身体は、案の定つんのめるように後ろに倒れ込み、危機一髪で攻撃を避ける事に成功する。
それと同時に受け身さえ取らずにガダルに向かい【鬼砲】のカウンターを喰らわせるが、今度は焦げ跡一つ付ける事無く防御されてしまう。
私の攻撃をものともせず攻撃に転じたガダルは、拳に魔力を集め私の放つ【鬼砲】を切り裂くよう攻撃を繰り出し、私の腹部をボキャッ! と、嫌な音を立てながら打ち下ろす。
「がっふっ!?」
否応無く口から吐き出される血液。なんとか強化と【結界】を腹部に集中する事で即死だけは避けたが、HPはほとんど残っていない。
バキンッ! と、予め口の中に仕込んでおいたアリシア製の飴型回復薬を噛み砕き、なんとかHPを四分の一程回復させる。だがガダルの猛攻はそれだけでは終わらない。
攻撃により地面に叩き付けられた私は、その勢いで地面に横たわる事すら許されずバウンドする。ガダルはそんな私の頭を掴み、
近くの石柱へと頭を叩き付けると、私で遠慮無く石を砕きながら走り回る。
腕を掴み必死に抜け出そうともがくが簡単には抜け出せない。それでも暴れながら一本の指を両手で掴み、全ての力を振り絞るとほんの少しだが拘束が緩む。が、その瞬間ガダルは私を思い切り石柱へと投げ付けた。
石柱に背中からぶつけられ強制的に肺の空気が排出され咳き込むと、傷付けられた内臓のせいで血液まで吐き出す。
「まだ終わりではないぞ」
その言葉の通り魔力弾で石柱を砕き、四つん這いで嘔吐く私の頭上へと岩が降り注ぐ。
くそ! 漫画やアニメでは顔を叩きつけた後に、引き摺って割りながら移動とか良く有るけど、これ実際やられると細かい振動で脳ミソ揺れるから動けねぇ!?
そんな状態での回避など出来る訳も無い私は、なんとか土魔法を使い瓦礫から身を守る。
「どうした? 早く本気を出さねばすぐに死ぬぞ」
くそ! 好き勝手言いやがって!
盛大な音を立てて降り注いだ瓦礫の中から、土魔法を使って瓦礫を吹き飛ばした私は真正面から一気に近寄りガダルに挑む。
ガダルに近寄る中、地面に手を突き相手を囲むようにアースニードルを創り出すが、それすらも空中に跳躍し軽く躱される。
だがそれで終わりではない。
「何度も同じ手は通じんぞ」
ガダルは跳躍すると同時に、失敗に終わったアースニードルに向かって魔力弾を放ち、それに合わせるようにアースニードルの中から放たれた【鬼砲】と空中で衝突する。
瓦礫から身を守る為に土魔力を使い、脱出にも使った。
それと同時に地面に穴を創り出し、アースニードルでの攻撃が予想通り失敗した事で、かまくらのような形になっているあの中で【鬼砲】を放ち奇襲するつもりだったのだ。
しかし、ガダルはそれすらも見越しアースニードルをブラインドに、隠れて攻撃しようとしていた私を仕留めに掛かったのだ。
【鬼砲】ごとガダルの放つ魔力に呑まれ掻き消える私。
「っ!?」
しかし今回はそちらが分身、ガダルの息を飲む音を聞きながら、本物の私は土魔法を使ってすぐに【隠蔽】で気配を隠し、ガダルへ攻撃を仕掛けていた。
だが、その隙は一瞬で消え【隠蔽】まで使っているにも拘わらず、すぐ様私を発見する。
だが、私を発見した筈のガダルは一瞬目を見開くと、防御も回避行動も取らずに失望したような眼差しを私に向ける。
それもそうだろう。
度重なる攻撃とそれを防ぐ為の防御で、今攻撃を繰り出そうとしている私の拳には、ガダルの魔力を突破出来る程の力が籠っていないのだ。それが分かったからこそ、これ以上私に引き出しは無いと失望したのだ。
攻撃がガダルへ届く。
それでもやはり魔力に阻まれた私の攻撃は、ガダルにはなんのダメージも与えれらないどころか身体にすら届かずに防がれる。
「……終わ──「【虚空!】」」
だが、なんの策も無かった事を確かめたガダルが、私を殺そうと声を発した瞬間、その言葉を遮り私は声を上げ技を発動する。するとガダルは突然の衝撃を喰らい石柱へと吹き飛ばされた。
追撃はかけない。
だってそこまで効いてないしね。
だが、それでも初めてまともに入った一撃とダメージに少しテンションが上がる。
そうこうしている内に崩れた石柱を払い除けガダルが姿を現す。
「なるほどな。パッシブの魔力障壁を抜く為に、相手の魔力と同質化させ攻撃を
一瞬でバレた!?
オリジナル【虚空】
対駄女神様に開発していたもので、相手の纏う力と、自分の魔力や気力を同調させる事で相手の防御を抜く打撃技。もちろん【結界】は抜けないが溢れ出る魔力だけで起こす魔力障壁は無効化して威力を伝える事が出来る技だ。
「ふふ。面白い」
「こっちは面白くねぇよ。でもこれで準備は整った」
ガダルの魔力を解析するのに手間取ったがこれでようやく出来る。何気に繊細な作業だからチューニングするには細かな制御が出来ないといけないからね。でも、一度合わせてしまえば後は簡単だ。
「ほう。まだ何かあるのか?」
「ああ! とっておきがな!!」
その言葉と共に残った魔力と気力を全開で放出する。すると私を中心として魔力と気力が渦を巻く。
「【鬼珠】解放!!」
私を中心とした力のうねりが更に大きくなり私へと収束すると、その力が次第に形を取っていく。
「それが、お前の切り札か──」
完全に収まった渦の中からガダルの言葉に嗤いながら応える私。
「変幻・酒呑童子!! さあ、第二ラウンドの始まりだ!!」
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