第313話私だってそんなに簡単では無いのだよ
さて、目覚めてから一日経った。
これで私が失踪してから約二、三日と言う事になるのだろう。
何故だ? 何故、私の中にはこの世界で最初に澪が言った手足を切り落として監禁する。と、言う言葉がぐるぐると回っているのだろうか? あれは冗談、演技、敵を騙す為に言った言葉だから!
なのになんで澪だけじゃなく。瑠璃やアリシア、ミルリルやミュリスまでが賛同してエルザがニヤついてる未来が簡単に想像出来るんだ!?
信じろ! 信じろ私! 仲間を信じなくてどうするんだ! こ、ここまで来たらここに居た方が安全だとかそんな事は無いんだからな! そう、無い! 絶対無いし! ……た、多分……恐らく? 無い……無い……よね? 無いと良いなぁ~(願望)
私は一人そんな事を考えながらベッドの上でゴロゴロ転がる。
現在の私も監禁真っ只中。部屋の中に限っては自由が与えられているものの、いかんせん何もないから暇なのだ。
放っておかれれば何日でも家から出ない引きこもり大好きな私だが、この世界にはゲームが無いし、部屋に研究材料がある訳でもないのでスゲー暇なのだ。
良かった事と言えば日に三度ガダルとの食事の時間が設けられていて、なんとその時のご飯がいくらでもおかわり自由だと言う事だ。
これはポイント高いですぞ! しかも人間の貴族向けのうっすい料理よりも濃い味付けは私好みなので尚更嬉しい。健康に気を使った薄味なんぞくそ喰らえだ!
皆と居るとやれ食べ過ぎだ。体型気にしろとか言われて毎回お腹いっぱい食べるって事は出来ないからね。
私程度が太ろうがなにしようが誰も損しないからいいじゃんね? これが澪とか瑠璃とかアリシア、とかエレオノとか可愛い子なら話は別だけどさ。
そんな訳で昨日起きてからも三食ガッツリ食べて、今日の朝も満足するまで食べたら執事っぽい格好をした魔族がガダルに耳打ちした時、ガダルが「……二週間分はあったはずだが?」とか言っていた気がするが多分気のせいだろう。うん。絶対気のせいだ。
ちなみに、最初にご飯を食べた時に「好きなだけ食べさせてやろう」と、言われて不覚にもときめいてしまったのは内緒だ。
いくら毎回好きなだけ食べさせて貰えるとはいえ、私だってそんなに簡単ではないのだよ。せめてフルーツ以外のデザートも用意して貰わなければ靡かないんだからな!
さて、そんな私のやれる事と言えばこうやって益体もない事を考えるか、スキルや魔力を鍛える事くらいしかない。そんな訳で私は少しの休憩を終え再び魔力の修練を始める。
今私が行っているのはスキル【脳内座標】の精度を上げる事だ。このスキル最初こそ使えるスキルだと思ったら実はそうでもなかった。
簡易な地図と説明されたけど本当に簡易な物。しかも自分がちゃんと地形を把握していれば地図の形として脳内に表示出来るが、全く知らない状態で使うと真っ白な紙の上に相手と自分が点で表示されるくらいなのだ。
だからどちらかと言うとゲームとかにあるオートマッピングって感じだね。GPS! GPS機能を付けてくれ! どこのサイトに行けば最新版の地図が無料でアップデート出来ますかー!!
全く、グー〇ル先生を見習って欲しいよね。
まあ、そんな訳で知らない間に連れてこられたこの場所も御多分に漏れず、この部屋と食堂までの間道のりしか表示されていないのだ。しかも今回初めてわかった事だが力の差が有りすぎる相手はどうやら写らないらしい。つまりまたしても雑魚専用!
どうして! どうして私のスキルは雑魚にしか効かないんだー!? 理不尽過ぎる!
と、いつもの嘆きも終わった所で練習再開。
昨日から私が試しているのは魔領の広域制御だ。
魔領は魔力を薄く身体に纏う事で相手の攻撃を感知する事が出来る技。相手の方が速いにも拘わらず私が攻撃を避ける事が出来るのはこの技の存在が大きい。
そして今回、この技を広域制御する事で私はこの砦内部を把握しようとしているのだ。
【脳内座標】は私がその場を認知していれば書き込まれていく。つまりそれは魔力で感知出来てさえいれば、わざわざ通る事なくマップが完成するのでは? そう思っての事だった。
結果としては大当たり。今朝も食堂までの間を行くまでに魔力を散布した結果、私がまだ行った事の無い場所もちゃんと地図として補完されていたのだ。
そんな訳で魔力薄く広く散布して、建物全体の通路を網羅出来るようひたすら集中を続ける。
「……なるほどね。それが目的か」
そして私は自分の状況を正確に把握したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます