第312話知るかバーカ! 私の方が聞きたいわ!

「私の物になるならもう少し慎みも持たせるべきか……」

「いや。知らねえよ! まずどうしてそうなった!」

「それは既に話したはずだ。魔族にとって強さこそ全て、強さでのみ価値を示す事が出来る。お前はその価値を示したらだからこそ私の物に相応しい。とな」

「いやいや。戦う流れじゃなかったっけ! ラブコメなんて求めてませんの事よ!? そもそもお前ら魔族に結婚とかって習慣あるの?」


 その辺の犬、猫並の感じでないの?


「……お前は魔族をなんだと思っているんだ」


 いや、そんな半眼で呆れながら見られてもそもそも情報が少ないんだよ。


 私が愚痴愚痴と文句を垂れると、ガダルは大きく溜め息を吐き私の知らない魔族の実情を教えてくれる。


 溜め息吐きながら説明するくらいならしなくても良いんだよ?


 まず私達が魔族と呼ぶ者達は、厳密に言えばそのほとんどが実は魔族ではないのだそうだ。


 それと言うのもグロスが散り際に教えてくれたモンスターから魔族に至った者。と、言うのはガダル達本物の魔族に言わせれば純粋な魔族ではなく人魔。人の姿へと至った者と呼ばれるのだとか。


 そんな中、彼等が魔族と呼ぶ者達は、魔族同士の掛け合わせから産まれた純魔族と呼ばれる者達だけが本当の魔族なのだそうだ。


「へぇー。魔族も血統には拘るんだ?」

「むしろ純粋な魔族ほど血統に拘る者は多いな。逆に魔物から魔族と同じ姿、人魔へと至った者達はただ強さのみを求める者達が多い」

「しかし、傍から見ると違いがわからんのだが?」


 私が疑問を口にするとガダルはまたもや丁寧に教えてくれる。


 私の言葉通り他の種族が見分ける方法は無いらしい。しかし、魔族と人魔なら話は別だ。


 そもそも一般的に、人魔に比べ魔族は魔力や力を含め生物として人魔よりも優れているのだそうだ。


 まあ大半の魔族は認めないが、ガダルに言わせれば人魔にも稀に魔族を超える力を付ける者も居るらしい。

 だが、人魔は元がモンスターなだけあり、上位者の魔族には種の根幹として基本逆らう事が出来ないのだが、稀にそのくびきを離れ力を増していく者も居る。

 そんな者達は大抵魔族でもないのに魔王にまで登り詰めるのだそうだ。


 なんかそう聞くと、うちの魔王少女が凄いやつみたいに聞こえるのだが? まあ、気のせいだろうな。だってクーだし。


 その他にもモンスターの産まれかたも教えて貰った。


 なんでもモンスターは大別すると自然発生、人為的、繁殖の三つがあるのだそうだ。


 まず自然発生だがこれはダンジョンで多く産まれる物だ。ダンジョンで死んだ人間達の負の感情や、モンスターの命を糧にダンジョンが産み出す。稀に地上にも魔力溜まりと呼ばれる淀みが発生してその中からも産まれるそうだ。


 人為的な物は魔族が契約等を使い別の種族をモンスターにする方法や、自らの血肉や魔力を使い産み出す方法があるらしい。


 詳しく聞こうとしたら断られた。ケチ臭い。それでも食い下がったら飯を抜くと言われたので大人しく下がった。ちょっとだけ上がった好感度はただ下がりである。


 繁殖、これに関しては言うことは特にない。そう言う事だ。

 でもまあ、誰に聞いてもこんなに詳しく教えてくれないし、本にも書いてなかったからこれって結構な情報なのでは?


 そしてそんな事よりも……


「聞きたい事はこれで全てか? それならば早く私のものになれ」


 これだよ。


 純血の魔族には人間とは違うが営みがあることはわかった。そしてガダルが私の中の何かに目を付け自分のものにしようとしているのも。だけどまあ、ぶっちゃけいきなり言われてもねー。


 いや、いきなりでなければオーケーかと言うとそんな訳でもないのだが。


 仮にもしそうなったら……あれ? なんだろう考えた途端に何故か震えが止まらない。何故仲間の事を考えた途端に震えが出て来るのか! 普通違くない!?


「ハクア」

「ひゃいっ!」


 いきなりで変な声でた。


「??? まあ良い。お前の仲間には既に結婚の招待状を送っておいたぞ。人間はそうするのだろう」


 それを聞いた瞬間私の体から何故か大量の汗が噴き出し、体がガクガクブルブルと震え出す。


 マジかよ! 何て事してくれてんだよ! これじゃあ私がなんとか抜け出したとしても怒られるのは確定じゃねぇか!

 てか、怒られるだけだよね!? 大丈夫だよね! 自分でも何を心配してるのかわからないのが本当に怖い!


 私が一人なんとか打開策を見付けようと思考に没頭していると、目の前のガダルが呆れながら「何故圧倒的な強者に連れ去れた事よりも、仲間に対しての恐怖の方がでかいのだ」とか、言ってきた。


 知るかバーカ! 私の方が聞きたいわ!

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