第305話予想外の展開

 休憩所【夢の館】は、私の狙い通り良い感じに利用客を増やしていた。


 中でも歓楽街に繰り出せない低賃金の者や、特殊な趣味のある御仁やご婦人などには大変受けが良かった。


 しかも想定通り更に金があるのもは、そのままの流れで歓楽街にも繰り出す為、今まで全く繋がりの無かった歓楽街にもコネが増え続けている。

 更に歓楽街に繰り出す者には、この世界ではあまり馴染みの無かった割引券を渡す事で【夢の館】に協力関係にある店に行く事になるので、これからは更に【夢の館】との繋がりを求めて多くの店が提携を結ぶ事になるだろう。


 ふふふ。狙い通り。これでまたなにもしなくてもお金が入って来るぜ。自分じゃ使えないけどね! 使えないけどね!


 しかし、意図せずこれとは違う効果も実は生み出していた。


 浮気の防止に適度なストレス発散による犯罪率の低下、等々の副次効果も見込めたのだ。

 何よりも私の発言「これは浮気ではない。だって夢だから!」このコンセプト。実は男の口実としてもだが何よりも女性に受け入れられた。


 浮気が減った。散財が減った。働くようになった等々のお礼の言葉が多く届いたのだ。女性としても現実の人間に入れ込むよりも、夢の中というものの方が良かったらしい。


 これには驚いたよね。


 さて、そんな休憩所【夢の館】だが、夢を見せる担当として常時十名以上が常駐し、その中の五人は戦闘も可能な人間を常に入れている。勤務時間は午前と午後の十二時間で、週休二日で働いて貰っている。


 しかし何故か皆、休みは要らないと言ってリリーネ以外のサキュバス達は、休みの日には私のメイドとして働いている。


 今現在もテアによるメイド教育の真っ最中だ。


 ……だがテアよ。主人の気を引くスカートの捲り方講座とか本当に必要ですかね!? ただでさえエロいサキュバスに何教えてもくれてるのさ! 目が行っちゃうでしょ!

 そうすると何名かからの視線が突き刺さるんだよ! ええ、自業自得ですが何か!?


 因みにリリーネ、リコリス親子は【夢の館】には関わらず、リリーネはクーの付き人、リコリスは私のメイド兼秘書的な位置として、エルザと共に協力して日々を過ごしている。


 リリーネはクーと共に戦闘訓練や常識の勉強をしているようだ。そしてリコリスには、ふふふ。ハクア様はこれくらいの丈がお好きなんですね? 等と常日頃から私の趣味嗜好を探られている。


 クソ! 全てバレている。だってさそのスカート丈で屈んだらそりゃ目で追いますとも! その他のシチュエーションでも、目で追う度に視線が合って嬉しそうに笑われるんだよ!

 テアのスカートの捲り方講座の時にガーターベルトに目が行ってらそれ以来ずっと着けてるし。一瞬、一瞬だった筈なのに……。


 しかも恐ろしいのが、短くて肌色成分が多い服だけでなく、ちょいちょい重装甲の服も織り混ぜてくるんだよ。正直それでスカート捲られた時はね! 一晩中説教されたけどは悔いは無かったよ。うん。


 〈だから怒られるのでは?〉


 マジすいません!?


 更に従業員には月兎族の数名を採用して交代で働いて貰っている。


 これにより忌み嫌われている月兎族もサキュバスも、普通の人間と大差無い事を周知するのが目的だ。


 もちろん他の月兎族の方も順調だ。


 当初の予定通り一般教養を教え込んだ騎士候補はフープの獣人部隊で、一般教養に計算と礼儀作法を教えた商人候補達は、最低限の合格ラインを越えた早い者はアリスベル各地の店で下働きとして働き始めた。


 商人の中には獣人を毛嫌いする者も少なくは無いが、大抵の者は使えるか使えないかで判断する。そんな実利主義の商人達の中なら比較的不利益は少ないだろう。


 その他、騎士や商人等にならない学を学びたい者や、幼い者、女性の数多くは今も教育を受けている。特に学を学びたい者とメイド候補等には重点的に教えているのだとか。


 その他にも、商人になりたい訳ではないが働きたい女性の為に、女性ならではの視点も生かせると思い、コスメ部門も立ち上げそこにも派遣している。


 この世界には化粧水のような物しか無かった為、このコスメ部門。獣人が店員をしているにも拘わらず中々に盛況なのだ。


 やっぱりシャンプー、リンスでツヤッツヤになってるから分かりやすいんだろうな。


 このコスメ部門の店員は全員女性。加えて店の試供品を渡す事で、全員が髪はツヤツヤで、肌は瑞々しい感じになっている。少しでも見れば一目で分かるレベルなのだ。


 さて、そして保護している者達だけでなく、こちらにも多少の変化があった。


 その一つが、メイドが増えてきた為にテアをトップにエルザが最上級メイド、ミルリル、ミミとリコリスが上級メイドになった。


 何が変わったのかと言うと、教えられる立場から教える立場に変わったという感じだ。


 実質、ミミが月兎族のメイドを管理、リコリスがサキュバスのメイドを管理、エルザが全体を管理してミルリルが補佐をする。そんな形に落ち着いたのだ。


 因みに私の世話は上級メイド以上の仕事になるのだとか。でないと制御仕切れないとか。失礼な話である。


 そんな訳で昇級の基準は、テアが設けたメイドの仕事のトータルの出来+私の思考を理解出来る事が採点項目らしい。


 まあ、なにやら突っ込むと面倒な気配がしたのでテアとエルザにまるっと投げておいた。あの二人なら上手くやってくれるはずだ。

 近々テストも作ると言っていたがどんな人問題が出るのだろう?


 さて、そんな風に順調に事が回り始めた中、私はと言うと。


「ゴブ~」

「フカ~」

「キュ~」


 と、アクア、シィー、加えてキュールのマスコット枠同盟から睨まれているのだった。


 うーん。予想外の展開。

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