第293話しっかりしろよシステム!

 あれから更に二週間ほどたった現在、私はアリスベルの自宅に帰って来ていた。


 それと言うのもこの間の賠償について話し合いを行う為だ。オーブとは違い、様々な物が流通するアリスベルとでは、単純なお金のやり取りよりも交渉によって交易を有利にする方が得なのだ。その為、アリスベルでの交渉はオーブとのものよりも長くなっている。


 さて、ではこの二週間に起こった事をまたもやダイジェストで説明しよう。


 まず交渉の方だが、アリスベルとの交易に関して幾つかの有利な条件を飲ませる事に成功した。長い目で見れば大きな収穫と言える。その他にも食料品の買い付けでの値引き、必要物資を優先的に買い付ける権利などを獲得出来たのも大きいだろう。


 この事から今後アリスベルとフープの交易は更に盛んになり、お互いに利になるいい交渉となった。


 その際、現在フープで行っている戸籍の管理や土地の所有などの税率の変更を取り入れ、学校などに関しても今後出資する事で、生徒を受け入れて欲しいと正式に要請も受けた。


 と、国同士の話し合いはこんな感じだね。


 その他にも面白い出来事が幾つか。


 その内の一つとしては私、この国に来て襲撃を受けましたよ。


 まあ、とある情報筋から襲撃の情報をもらっていたので大した事なかったけどね。


 後は、遂にこの国のルグルス王の実権が地に落ち兵士すら言う事を聞いてくれなくなりました。ザマア。


 それと言うのも今回の三国共同作戦の人員選出は、かなりでしゃばって自分の意向を通したらしいのだ。


 元々王妃であるキャリーの力が強く働いていた所に、私と関わって更に立場が悪くなったルグルス王は、自分の派閥とも言える家の人間に手っ取り早く功績を積ませ、自分の力を上げようとした。


 だが、蓋を開ければ他の国の兵士を捨てゴマとして使った挙げ句、まさかの敗走。しかも、自軍にも多大な被害を出してだ。そのうえ騒動はほぼ私達が解決したので汚名返上の機会もなかった。


 そりゃもう無理だよね。


 そんな訳でルグルス王の発言力はかなり少なくなったのだった。だが、それだけならまだ兵士すら言う事を聞かなくなる。なんて事にはならない筈だった。


 腐っても王。本当にどうしよもう無く腐っていても王なのだから、実際王妃が力を持っていても最終的な決定権は王にある。だが、今はそれすらなく、ただ玉座に座っているだけの存在に成り下がった。


 その理由こそ前述した私が襲撃された件にある。


 実はこの襲撃の首謀者がルグルス王なのだ。共同作戦に失敗しても未だ御輿として担ぎ上げようとする貴族と共謀して私を殺そうとした。しかもなんと地下牢獄に投獄していたコルクルまで逃がしてだ。


 コルクルは諦めていなかった。いつか私へと復讐する為に準備を怠っていなかった。元々城の中にも手勢を忍ばせていたコルクルは、手勢を使い外の貴族や王と渡りを付けながらじっと復讐する機会を待った。


 そして今回の顛末を知り、共に私へと復讐しようとルグルス王を焚き付けた。だがまあ、結果としては全て筒抜けで失敗に終わったのだった。


 まあ、何故こんなに周到な計画が筒抜けだったかと言うと、それは全て私へと情報を渡した人物の掌の上の出来事だったからだ。


 こう、コロコロッとね?


 コルクルが私に復讐する為に色々と動いているのを掴んだその人物は、念入りにコルクルの手勢を調べ上げていった。

 そして今回の事で失脚した王を利用しようとする動きを知り、アリスベルに来た私に囮を依頼。見事に私が撃退した事で全てが明るみに出て、キャリーが全兵士に箝口令と王を王として扱うなと触れを出したというのが今回の流れだ。


 成果としてはコルクルと繋がっていた貴族と内通者の特定、ルグルス王を利用しようと画策する貴族の特定が済み、今回加担した者は家の解体、爵位の降格処分となり加担こそ無かったが繋がりのある貴族は釘を刺す事で、王妃派の敵対派閥の弱体化に成功した。


 まあ、情報提供者曰く「追い詰められた人間や権力に魅入られた人間は、馬鹿な事を簡単にしでかしてくれるから楽で良いわ」との事だ。


 いや~。茶会の席でその事聞いたけど、権力ある頭の良い女ってものは本当に怖いわ~。誰とは言わないけどな! 息子に明け渡す前の掃除の仕方がエグいっす。


『シルフィン:それもう答えじゃありません?』


 ノーコメントで。


 さて、つまらない話はこれくらいにして実のある話をしよう。


 なんとこないだの戦闘に参加した事でユエ達が進化しました。パチパチパチ。


【魂創改者】のスキルのお陰か、本人達の才能のお陰か何人か? 何ゴブかは私やアクアとは違う進化を果たした。


『エリコッタ:どちらかと言えばハクア様達が特殊なのでは?』


 うるさいよ?


『エリコッタ:ひい! すいませんです』

『シルフィン:うんうん。頑張りましたね。この調子で発言していきましょう』

『エリコッタ:は、はいです』


 お前等人をなんだと思ってやがる。そういや最近他の連中は?


『シルフィン:皆忙しいんですよ』


 ……そうか。暇人はお前だけか。


『シルフィン:失礼な!これでもちゃんと仕事してますよ! それに私は貴女の専属みたいなものですし♪』


 ハッ!


『シルフィン:鼻で笑われた!?』


 まあいいや。そんなユエ達のそれぞれの進化がこんな感じ。


 ユエ→ゴブリンソルジャー→刀鬼

 フレイ→ゴブリンファイター→ホブゴブリンウォリアー

 スイ→ゴブリンナイト→ホブゴブリンマジックナイト

 ジュピ→ゴブリンシーフ→盗鬼

 コン→ゴブリンシャーマン→グール

 アス→ゴブリンモンク→ホブゴブリングラップラー

 サン→ゴブリンメイジ→ホブゴブリンウィザード


 なんとユエとジュピが前回までの私と同じ小鬼種に成りました。ユエの刀鬼はソルジャーが刀を好んで使い、敏捷と刀の適性が高いとなれるものらしい。


 ジュピの盗鬼はシーフが様々なスキルを覚えるとなる。正確には影魔法【忍び足】【隠密】を覚えるのが条件らしい。


 クッ! 私には【隠密】が足らなかった。

 これ絶対忍者に成れるよね! ユエもあれ侍コースだよ! 今の進化に不満があるわけではないけど忍者も侍も羨ましいっす。だって侍と忍者だし!


 フレイ、スイ、アス、サンは順当にホブゴブリンと上位職に……で、問題のコンなんだが。自分で選ばないでグールに進化するには、色々と条件はあるが特に腐っていたり、腐った物を好むと進化するらしい。


 それに付いてユエ達にコンは腐った物が好きなのか? と聞いたが答えはNO。むしろ新鮮な物が好きだと言っていた。特に新鮮野菜のサラダとか。


 なら何故? と思っていたら簡単に謎は解けた。


 一度ギルドの方へと用事を済ませに行った時、暇そうにしていたコンが連れてって欲しい。と、言うので連れて行った。その時、ギルドでは冒険者同士が揉めていてお互いに胸ぐらを掴んでいた。


 それを見たコンが普段は眠そうな眼を輝かせて鼻息を荒くしていたのだ。


 そう……つまりは……腐っているものが好きなのではなく。こいつ自体が腐っているいわゆる腐女子なのだ!! だーだーだー。


 って! オイィ! 腐るの意味が違ぇよ! しっかりしろよシステム! などと苦情をあげたがスルーされたよ。


『シルフィン:いや……その、私もまさかそんなものが有効判定とは……』


 まあ、なってしまったのはしょうがないから良いのだが、まあこれによりユエ達の戦力は大幅にアップしたのだった。


 しかし、今回進化したのは私達だけだが、他の皆も輪廻したりレベルアップしたりと強くなっている。頑張らねば置いていかれる(ステータス的に)


 そんな事を考えながら私は目の前の惨状に目を向け。


「はい。休憩終わりね。立て! 走れ!」

「「「ヒィ~~~~!」」」


 はい。現在は皆の訓練中です。


 今アリスベルの家に居るのは、私とお目付け役のヘルさん、私を鍛える為に心、アリスベルとの交渉にアイギス、その護衛に澪、更に屋敷の管理と皆の世話の為にミルリル、そして特訓の為に連れてきたユエ達、それと……。


「も、もう……ダメ……」

「限……界……」

「おいこら休むな。死ぬまで走れ。死んでも治してやるから走ってこい」


 私は倒れた二人に治療魔法を施し、また走らせる。


「「鬼~!」」


 そう、私は宣言通りリンクとリンナもちゃんと鍛えているのだ。二人もアリスベルに来てからの一週間とちょっと、泣きながら感謝して修行に励んでいる。


 私、約束は守るからね。ちゃんと強くしてあげるよ! 過程? 知らんな。強くはなるよ色んな意味で。


 そんな私も現在はユエ達に修行を付けながら、魔力と気力の制御を練習している。一見何もしてないし物凄く地味な事だが、凄い大事な事なのです。


 特に私は進化したばかりなので、まだ自分の力が把握しきれてないから必須なんだよね。しかも今までの小鬼種のカテゴリから半鬼人のカテゴリになったからか、自分の体なのに微妙に扱い切れないんだよね?

 だから未だに全力では動いていないのですよ。これが頼もしいのやらどうなのやら。


 因みにこれが今の私のステータス。


 名前:ハクア

 進化:3→4

 レベル:21/25→1/30

 性別:女

 種族:白滅鬼(絶滅種)

 強化値:500

 HP:6400→6700

 MP:1340→1500

 気力:1200→1400

 物攻:820→1100

 物防:730→790

 魔攻:760→1000

 魔防:700→930

 敏捷:1300→2200

 知恵:700→1400

 器用:800→1500

 運 :95 →100

 武器:白打

 副武器:無し

 防具:無し

 アクセ:HP100MP100物攻30物防30

 魔攻30魔防30全属性耐性10%

 HP吸収、MP吸収

 ゼーゲンの腕輪+3

 魔法:

 暴風魔法LV.3、空間魔法LV.5

 影魔法LV.5→LV.8、邪眼LV.4→LV.7

 土石魔法LV.3→岩石魔法LV.1(新)

 治療魔法LV.7→LV.9火炎魔法LV.3→LV.5

 雷魔法LV.1→LV.3、水魔法LV.2

 光魔法LV.1→LV.3、闇魔法LV.2→LV.5

 幻覚魔法LV.1(新)

 称号:

 転生者、同族殺し、同族喰らい

 |強敵打破(ジャイアントキリング)、魔族殺し

 怠惰なる者、殲滅者、群雄指揮

 スキル:戦闘系スキル

【疫雷爪LV.7】【疫牙LV.4】【疫崩拳(極)】

【魔拳LV.8】【雷装鬼LV.7→LV.9】

【魔法剣LV.3】【結界LV.8】

【魔力装甲LV.3→LV.5】

 技能系スキル

【鑑定士(極)】【解析(新)】

【思考加速LV.5→LV.7】【脳内座標】

【罠師LV.4】【跳躍LV.5】

【会心LV.9】【攻撃予測LV.1→LV.7】

【忍び足LV.3】【威圧】

【鉄蜘蛛糸生成LV.2→LV.7】【操糸LV.3】

  【猛毒調合(新)】【特殊毒調合(新)】

【解毒薬調合(新)】 【座標転移(新)】

 耐性系スキル

【異常無効(極)、痛覚無効(極)、恐怖耐性】 →【愚者】

【全属性耐性、小】

【頑強】【雷属性吸収】

【物理耐性、小】

 ステータスUP系スキル

【剛力2LV.3→LV.5】【堅牢2LV.1】

【魔術LV.8→魔術2LV.1】【魔坑2LV.1(新)】

【韋駄天2LV.6→韋駄天3LV.1】

 スキル補助系

【魔法の片鱗LV.7】【魔法のコツLV.7】

【武器の扱いLV.3】【風魔法のコツLV.4】

 攻撃ダメージUP系

【背後攻撃(極)】【急所攻撃(極)】

【ゴブリンキラー(極)】【格闘(極)】

【豪腕】【雷属性ダメージup、小→中】

【スキルダメージup、小→大】

 属性スキル

【破壊LV.Max】【マヒ附与(極)】

【麻痺毒(極)】【疫攻撃LV.5】

【白雷(新)】【怠惰の邪眼】

 補助、その他スキル

【喰吸.魂LV.3→LV.5】【鬼珠(新)】

【言語】【奴隷術】【契約魔術】

【魔獣調教、魔物改造、配下能力構成】→【魂創改者(新)】

【危機察知LV.5】【ユニゾン魔法】

【レゾナンス】【念話】【魔眼】

【HP自動回復LV.6→LV.8】

【自己再生】【MP自動回復LV.6】

【気力自動回復LV.3→LV.6】

【嗅覚LV.7】【暗視LV.6】

【鉄骨格】【軟体】【並列思考】

【レアイベント遭遇率up極大】

 スキルポイント2000


 と、こんな感じだね。


 しかし、敏捷だけが飛び抜けたな? 自分が白くて良かった。もし黒かったら移動の度にカサカサと効果音が付きそうだし。流石の私もそれはね?


 因みに今まであった武技や魔法名などが消えているのは、ヘルさんが「多くなりすぎたので表示しても頭に入らないでしょう」との事だ。まあ確かに人数も増えたから全員のを一気に見ると疲れるよね。個人的に確認は出来る訳だし。


 そして、白滅鬼として覚えたスキルは【白雷】


 このスキルは武技でも魔法でも雷属性の攻撃が全て【白雷】というカテゴリのものになり、威力がアップするらしい。

 まあそれだけなら今までと変わるの? と、いう感じたが、実はこの【白雷】威力が上がるだけでなく浄化の属性まで付いているので、モンスターや魔族などには更に威力が加算され、アンデット系には致命的なダメージが入るのだ。やったね。


 そしてもう一つ覚えたスキルが【鬼珠】だ。


 これは半鬼人以上の鬼人種が持っている特別な種族スキルで、使用すると鬼珠装備という物が現れるらしい。人により武器だったり防具だったり、はたまた特殊なスキルを使えたりするらしく使うまではわからないのだとか。


 更に鬼珠装備は本人が強くなれば共に強くなり、破壊されるとステータスが一時的にダウンしてしまうが、時間が経てば自動で修復してくれるのだ。


 私も早く使ってみたいが今の状態だと暴走の危険もあるので禁止されてます。無念なり。


 そして……そして、やっと、やっと胸を張ってCランクと言えるくらいにまで来ましたよ。前回まではCランク相当ってぼかした感じでしか言えなかったからね! これからの私の成長に期待だよ!!


『シルフィン:そして敵も強くなると』


 嫌~! 貴様なんて事を! なんて事を言うんだ!


『エリコッタ:でも、実際ガダルはハクア様狙っていそうですよね?』


 えっ? 確認済みなの?


『シルフィン:残念ながら未確認です。私達人間サイドは他の種族単体では見えないんですよね』


 チッ! 役に立たん。


『エリコッタ:本当にシルフィン様でも容赦ない言い方ですね? 凄いです』

『シルフィン:そこ感心するところじゃないでしょ!』


 そんな訳で私は城に行って会議したり、十商と新しい商売や新製品考えたり、ギルドで話し合いしたり、修行したり付けたりとわりと忙しく過ごしていたのだった。

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