第277話まっ、今後の経過に期待だね

 私のモンスター食肉計画の前進、ミノタウロス保管育成計画が白日の元に晒されて数日、それなりに幾つかの事が進んだので話しておこう。


 まず、ゴブリン改造は私の手を離れ国とギルドの合同の研究という形になった。


 提案だけして面倒な事は丸投げ出来たので私としては上々の結果だが、アリシアやシィー等は私の成果の美味しい所だけ取られた感じだ。と怒っていた。


 いやいや、こんな事業をまるっと個人でやったら故人になるほど大変だから全然構わんのだよ。

 何より食肉計画の前段階ってだけだし別に良いのに。それでも私の為に怒ってくれるという事実は少し嬉しい。


 さて、そんなゴブリン改造計画の一番槍となったナイトを含めた六匹は、現在もゴブリン狩りを実行している。スキルによって性欲を抑えられ私の管理下にあるゴブリン達は、存外良く働くようでギルドも大分助かっているようだ。


 流石に連日ゴブリン狩りをしているだけあり、冒険者の中でも大分知られるようになってきたので、分かり易く私の糸で作った服を六匹には与えておいた。


 これで間違って狩られる事は無い……筈。狩られちゃったらどうしよう。


 経過としては順調の一言。抑えた性欲が戻る気配は無いし封じたスキルもまた同様だ。今後もなるべく自由にさせながら、適度に指令を与えて経過を見守る積もりだ。


 そしてそんなゴブ達はこの間見事全員が進化した。内訳としてはソルジャーが2、ナイトが1、メイジが1、ホブゴブリンが1、ホブゴブリンナイトが1だ。


 因みにこれも実験の一部として、元ナイトのゴブリンにヨドムと名前を付けた後に進化させたら、何とユエ達のように人間っぽく進化した。名前の由来はヨドムの実という果物が好物だったからだ。


 差別化を計り実験の為他のゴブリンには名前を付けていない。他のゴブリンは見た目は変わらず普通のゴブリンだった。


 これにより私が名を授けるとモンスターが人間の姿に近付く可能性がある事が分かった。


 とはいえ、このままレベルが上がり進化を続けるとやっぱり人間の形に近付いていくのが多いのだとか?


 まっ、今後の経過に期待だね。


 ゴブリンについてはこんな所。


 因みにこの計画が私の手を離れたので、少し時間が出来た私は魔法の研究がてらコロに鍛冶を教わっている。


 鍛冶ってスゲー楽しいよね?


 さて、次はユエ達の事だ。


 ユエ達はあの後、進化個体のソルジャー達やホブゴブリンを自力で倒した為、帰って直ぐに進化出来る事が分かった。


 本人達の希望と戦闘スタイルについて相談を受けたので、私のアドバイスの元それぞれ選んだ進化先はこちら。


 ユエ→ゴブリンソルジャー

 フレイ→ゴブリンファイター

 スイ→ゴブリンナイト

 ジュピ→ゴブリンシーフ

 コン→ゴブリンシャーマン

 アス→ゴブリンモンク

 サン→ゴブリンメイジ


 こんな感じに見事に全員がバラバラになった。種類が豊富でビックリしたよ。


 この内ユエ、スイ、コン、サンは進化した事で魔法も覚えた。特にサンは魔法特化だったステータスを、頼まれた私が更に魔法に割り振った為、この中ではNo.1の火力になった。


 それぞれユエが影魔法、闇魔法。スイが水魔法、治療魔法。コンが闇魔法。サンが火魔法、風魔法という具合だ。


 そして進化に伴い全員の装備をコロの作った物に持ち変えた。ユエ、スイは新しくそのままのタイプの武器を、ジュピはシーフになったので更に弓を練習するらしい。コン、サンはナイフをそのままに弓を杖に変えた。


 そして後の二人、フレイとアスには私とコロの考えたオリジナルの武器を渡した。


 アスの武器は相談された時に考えた物をコロに形にして貰った、盾としても使える大型の手甲だ。肘から先を丸っと覆う形で両腕を目の前で合わせると一つになり、内蔵された部分が少し広がって盾になる物だ。しかも最近私が作った魔法陣も組み込み、魔力を流すと更に防御力が上がるようにした。


 まさに浪漫武器。構想段階から作るまですっげー面白かったです。


 そしてフレイの方はアスの手甲を作っている時に考え付いた大剣だ。普段は大剣なのだが二つに分けて使う事も出来、場面によって大剣と双剣を使い分ける事が出来るのだ。


 正直二つとも格好良くて私が使いたくなった。


 そんな彼女達、城で一緒に兵士達と訓練しているのだが、初っぱなはやはりと言うべきか多数の兵士から厳しい目を向けられていた。


 だがそれもしょうがない。


 いざとなれば私が出れば良いし、亜人だからと危害を加えるなら漢になって新たな性を歩めば良い。そんな風に考えていたが実際はそうはならなかった。


 最初こそ亜人と訓練するなんて。と、いうような空気が蔓延していたが、私がいつも通りの訓練をユエ達に課し、走って倒れては回復して復帰させてを繰り返し、ボコって気絶しては回復して復帰させてを繰り返していたら、訓練が終わった頃には何故かユエ達は同情が含まれたような生暖かな目で兵士達から受け入れられ、今では普通に話をするまでの間柄にまでなっていた。


 何が起こったのか未だに分からない私だが、とりま私のお陰ではあるよね? とか言ったら「一応な」と、澪に頭を引っ叩たかれた。解せぬ。


 次に一番大事な事だが、ミノタウロス保管育成計画やモンスター食肉計画を洗いざらい話した訳だが、怒られこそしたがなんとGOサインが出た。


 だが、私は見逃さなかった。私がモンスターを改造して動物みたいにして、誰でも飼えるようにすれば牛肉が食えるようになる! と、宣言して力説した時にアイギスの目が一瞬輝いた事を! この世界に来て初っぱなに食べたのが黒毛だったからね。あのインパクトは忘れられまいて。


 そんな訳で私の本命の計画も大っぴらに進められるようになったのだった。


 ああ後、次いでにゴブリン本隊の話だが、調査隊を送りよくよく調べて見ると、そのゴブリンの巣は更に拡大しておりフープとアリスベルの領土にも範囲を拡げていた。そしてそのせいで政治的にも色々と微妙な事になっているらしい。


 しかも一番外側の見張り役のゴブリンでさえ武装を確認、更に拡がり過ぎた巣の全容は流石に分からず、ゴブリンなら。と突破するにも刺激をしたらどれだけ居るか分からないゴブリンがどう動く事になるか予想が付かないという事で、巣の中核にどれ程進化した個体が居るか、生き残りの人間が居るかも分からなかったそうだ。


 それこそ巣をつついて蜂の子を散らすように、武装したゴブリンが散らばったらどれ程の被害になるか分からないからね。その判断は正しいと思うよ?


 それに数も問題だ。見張り役のゴブリンでさえ武装を確認したという事は、ほぼ全てのゴブリンが武装していると見て間違いない。そして中核にはただのゴブリンに武装させるという知恵を持つ個体が居るというのも分かる。


 何故ならゴブリンは弱肉強食だ。自分だけが武装していれば反逆される心配が低くなるが、他のゴブリンにも武装させればそれだけ脅威になる。それなのにこれだけの巣を維持しているという事は、それだけ強力な個体が居る可能性の方が高いのだ。


 そして更に問題が一つ。


 三国に跨がり巣を作ったゴブリンだが、その三国の最後の一つの名はオームと言う。


 それは、かつて澪をこの世界に召喚した国の名だった。

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