第229話馴染みのやつが異世界で出世してる件について
翌朝、目覚めた私はミルリルに今日の予定を教えて貰う。
今日のミルリルはじゃんけんで勝てたせいなのか朝からとてもご機嫌だ。
「今日はお昼にハクア様達の褒賞授与式がございます。その後は城内でのパーティーを大々的に開き、ある程度参加した後は内輪でしがらみの無い食事会を予定しているそうです」
「うわ、正式な場とかめんどくせぇ~」
「フフッ、お気持ちはわかります。ですので昼の褒賞授与式までに皆さんのお召し物を選んでしまいしょう」
「えっ? 適当で良いんだけど」
「ダメです。ハクア様に恥を掻かせるなんて事は絶対にしません」
お、おおぅ、ミルリルの笑顔に何時に無く迫力が。女の子って何でこう着る物に拘るかね? まあ、私も皆の衣装にだったら大いに拘りたいけどさ。
主に絶対領域とかチラリズムにだけどな! 肌は隠し過ぎずかといって下品にならない程度に露出をしつつ、その辺の微妙なラインを際どく攻めたい!!
ああ、でもミルリルレベルなら隠れているからこそのってのも在るよね! ほら、例えば上の方をちょっと小さめにして、逆に強調されちゃうのを意識しながら赤い顔してるとかさ! とかさ!!
ああ、アリシアと二人で双子コーデも良いかもしれん! 二人が並んで恥ずかしがるとか! うん。イイね! あれこれ最高じゃね? 頼んだら行けそうな気がしてきたんだけど! 多分その後暴走してめっちゃ怒られるけど! そうなったとしても私に後悔は無い!!!
「は、ハクア様?」
私がそんな事を考えながら、ミルリルならどんなエロ可愛い衣装が良いのか考えていると、熱心に見詰め過ぎたのかミルリルが顔を赤らめ、大きな胸を隠す様に身体を抱き抱える。
うむ。これはこれでなかなか……美少女の恥ずかしがる姿……ご馳走さまです。
〈セクハラは程ほどに……〉
「うわっひぁい!」
ここに居らず状況を知らない筈のヘル様からのツッコミを頂き、変な声が出てしまう。
何故にバレるし?
「は、ハクア様どうしたんですか?」
「いや、ごめん何でもない」
出来心です! すいませんしたっ!
その後、朝食を食べに食堂に行くと皆が既に居たので、朝食後そのままアイギスの方で用意した衣装を見に行く事になった。
ええ、予想通り私とアクアだけが何故か着せ替え人形にされましたよ。皆はさっさと自分の分を選んでたからね。むしろ私に皆の衣装を選ばせてくれよ! それくらいの楽しみは有っても良いと思うの。
しかも何故かメルやフーリィー、アイギス、アレクトラまでいつの間にか参加してたし。
何処から湧いて出た? 君ら忙しいんじゃ無いの?
途中何処かからカシャカシャッと、音がした気がして振り向いたらヘルさんと目があった。
その時「何か変な音が……」と言ったら、被せ気味に「気のせいです」と、笑顔で言われちょっと怖かったです。
数日後参加していた何名かが、時折ハガキサイズの紙の様な物を眺めて、私に気が付く度に曖昧に笑いながらその紙を隠す。と、そんな事案が発生した。何だったのだろうか? 解せぬ?
その後私とアクアは何十着着せられた事か、ヒラヒラやフリフリのゴテゴテしたキラキラの物なんぞ面倒くさい。もう、ジャージとかで良くね? フルジャージとか最強だと思うんだよね。私は自分より皆のが見たかったのに……何故にこうなった?
因みに私の衣装は冒険者の一員として褒賞を受け取ると言う事で、フーリィーの様な騎士団の服っぽい物になった。
ここでふと私は気が付いてしまった。
そんな感じで衣装が決まるのなら、あんなヒラヒラやフリフリやゴテゴテでキラキラの衣装まで試着する必要など無かったのでは……と、そう思い決まった衣装を着つつ皆を見ると、一斉に顔を背けられた。解せぬ。
そんなこんなで衣装を決めた私達は褒賞の場へと移動した。
代表で私、澪、メル、ジャックの四人が国のお偉方やお貴族様共の前で褒賞を受け取る事になり、他の皆とフーリィー、カークスは壁際に立っている事になった。残りの人間は流石に人数が多いので後程パーティー会場にて合流予定らしい。
羨ましいわ~。私も皆と壁の花になっていたい。まあ、花って柄でもないけどね。
さて、澪は一応この国の人間扱いだけど、同時に勇者という肩書きでも在る為褒賞を受け取るみたいだ。一応勇者兼騎士団の代表という事らしい。
馴染みのやつが異世界で出世してる件について。
まあ、受け取った金は騎士団の褒賞分を多少抜いて後でこっそりと返すらしいけど。もちろんこの事は国のお偉方も知っている。集まった貴族に見せ付ける為らしいけど、何よりも形式が重要なのだそうだ。
うむ、すっげぇ面倒!
そんな訳で今私は正面に座るアイギス、その左手にアレクトラが座り、右手前に初老の厳つい爺さんが居るその眼前に片膝を付き頭を下げている。
コレが位の高い人間にする礼なんだとさ。
「皆、顔を上げて下さい」
最初にアイギスが頭を下げている私達に顔を上げさせる。続いて、アイギスの隣に立っていた爺さんが喋り始める。
「此度は我がフープを取り巻いた幾多の困難に尽力した事、深く礼を申し上げる」
爺さんが形式的な挨拶を終えると、その後、事の起こりから終結までのあらましを簡単に話し始める。
これは、国に魔族が現れた最にソッコーで逃げた癖にちゃっかりとこの場に参列してるお貴族様に聞かせる為だそうだ。
ぶっちゃけるとお前ら逃げた後、こんだけ大変だったんだぞ、この野郎! と、遠回しに嫌み言ってるだけだよね?
因みにこの爺さん宰相という立場らしく、アイギス達が居ない間の国政を任されて居たそうだ。
概要の説明が終わると、一人づつ名前を呼ばれ前に進み出る。爺さんに名前を呼ばれアイギスとアレクトラが今回の件に付いて一言礼を述べその後、爺さんが褒賞の内容を口にしながら渡して行く。
これぞ形式! 非常に面倒だ。
そして遂に私の番になり皆は名前を呼ばれ前に進み出る。
「ハクア、貴女が居てくれたお陰で私達のみならずフープまで救われました。今回貴女が居なければ様々な事がここまで上手く行かなかったでしょう。この事、我が国は感謝を忘れません。そしてアイギス・サンドライトの名に置いて冒険者ハクアを支援する事も同じく誓いましょう」
アイギスの言葉に周りの人間達がざわつき始める。特に貴族達は今にも私に掴み掛かるのではないかと思う程顔が険しい。流石に横の爺さんは聞いていたのか動揺の色は無い。
まあ、実際国の代表が正式な場で一個人に便宜を図るなんて言えば当然か。
アレ? これ私も国に組み込まれてね? う~む流石為政者、断れば不敬だし受け入れればほぼ私の所属がフープって事になるね。まあ、他の権力者に比べれば遥かにマシだから良いけどさ。
アイギス美人でアレクトラは可愛いし!
「ハクア様、私もハクア様に助けて頂いた事決して忘れません。私、アレクトラ・サンドライトも女王アイギス・サンドライトと同じく、ハクア様を支援する事を誓いますわ」
アレクトラの宣言で決定的に貴族達の目の色が変わり、私を戦功を立てた冒険者から、自身に利用出来る存在と認識した視線になる。
そりゃそうか。私はこの国のトップ二人から支援する事を言われた。それは言ってしまえば、私を取り込めばこの国のトップに直通のラインが出来るのと同義だ。
しかも、恐らくはこの貴族共ソッコーで逃げた癖に、今回の責任をアイギスに押し付ける積もりだったのだろう。
そして、まだ政治に疎いアレクトラでも担ぎ上げようとしていた。だが、二人揃って私への支援を口にした事でそんな面倒な事をせずとも、金さえチラつかせれば靡くような冒険者を利用すれば良くなった。
う~む、面倒事の予感がひしひしと……後でクレーム入れようかな?
でもな~、アイギスは兎も角アレクトラは打算とか無くて、心の底から言ってるみたいなんだよね? 美少女の好意は無下に出来ん! それが私の唯一の正義だ!
「それでは冒険者ハクアとその仲間に、フープ国女王アイギスから褒賞として、白金貨十枚と龍気結晶石を贈る。その他の者に関しては後日冒険者ギルドを通して褒賞を贈る事とする」
私が褒賞を受け取り下がると、またもや周りがざわつき出す。
はて? 何か変だったのか? と、言うよりも白金貨って何だ?
まあ、小説では金貨の上の価値だよね? ヘルさんは言って無かったけどそんなん在ったんだね? それにこの龍気結晶石って何じゃらや? 全く聞いた事無いんだが?
爺さまの話をボ~と聞きながら考えいると、何やら熱視線を感じそちらをチラリと覗き見る。すると珍しい事にコロが私の事を熱心に見詰めていた。
と、言うよりも何か目がギラギラしてませんか?
普段余りないコロの視線にちょっとビクッとする私。そんな私に関係無く爺さまの話しは続き漸く終わりを迎える。
「皆、此度の働き大義で在った。女王アイギス様の好意でささやかながら別室に宴の準備を用意した。存分に楽しんで行ってくれ」
その言葉でその場は解散となり私達は別室のパーティー会場に向かうのだった。
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