第227話そんなカオスな状況でどうしろと?
遂に拝みながら泣き出す人間まで現れたテントの中、私達が来たのに気が付いたアクアがこちらに駆け寄って来る。
そしてそのままな勢いで私に抱き付くと、その体勢のまま私の事を見上げて、褒めて褒めて──と、言わんばかりの表情と眼で訴え掛けて来た。
とりあえず撫でておく。だって可愛いからな!? くそう。普段無表情な子がこんな反応して来たら撫でるしか無いだろ? いや、あるまい!
しかし、何が起こったんだ?
見ると重傷だと言われていた筈の人間はほとんどおらず、中の人間は軒並みアクアの事を拝んで「天使様」とか言っていた。横に居た治療師は「信じられない……」等と自分の目を疑い何度も目を擦ってしまう程だ。
そんなカオスな状況でどうしろと?
「アクア貴女一体何をしたんですか?」
アクアの保護者その一のアリシアがアクアに事のあらましを尋ねる。
「人治したらおねちゃん喜ぶ。だから治した。ゴブ」
ヤバい! キュンと来た! 見て! 皆ウチの子見て! すごい可愛いから! 天使? 当たり前だよウチの子天使だよ!!
そう言って嬉しそうに笑うアクアに、私とアクアに治療された人間が悶える。そんなアクアは取り敢えずギュ~と抱き締めておく。
後ろから強い視線を二人分感じるのは気のせいかな? そしてエレオノさんは何で赤くなって頭抱えてるの? 解せぬ?
「マスター、マスター」
何故かヘルさんまで私の袖をクイックイッと、やって来る。
何コレ? 今袖クイ来てるの? だとしたら私大歓迎だよ!! 遂に私が前世から推してた袖クイの時代が到来したのか!? コレ、あれだよね? 抱き締めて良いんだよね? 良い奴だよね!
「違います。コレを見てください」
「えっと……ん? え~と……ん? んん?」
ちょっと自分の眼球が信じられなくて二度見してみるも結果は変わらず。私はヘルさんの【可視化】スキルで見せて貰ったアクアのスキルの説明文を読む。
ああ【鑑定師】で調べるとこうやって出るんだ? ヘルさんに教えて貰ってたから知らなかった。はっはっはっ!
「どうしたんですかご主人様? え? 何ですか? なんで何も言わないで差し出して来てるんですか? えっとこれを見るんですか? これは……え? え~と、ん?」
私はアリシアにも見せて見ると、アリシアも同じ様な反応をして皆がザワつき出す。
あれ? 何で私だと呆れるのにアリシアだとザワつくの!? リアクションは同じだった筈なんだよ? 解せん。
「話しにならん見せろ。……凄いな」
そのスキルの説明文にはこうあった。
エクストラスキル【慈悲】
効果:称号【慈悲なる癒し】獲得、回復効果up、回復量up、治療効果up
エクストラスキル七徳の一つ、慈悲の力を持って対象者を元の姿に戻す癒しの力。
慈悲
効果:生きている限りあらゆる傷、欠損を癒す事が出来る。
注:傷の程度によりMP消費量up。HPは回復しない。
何ですのんコレ? あ、そっか、この子主人公か?
「アクア、いつの間にこんなスキルを……」
「さっき覚えたゴブ。使い方は何か分かった」
「……これが天才か」
「あながちマスターの言葉も否定出来ませんね」
「確か……部位の欠損って治せないんだよね? 普通」
「はい。その筈です。因みにマスター、アクアに新しい進化が出ています」
「マジか!」
言われた私はアクアの進化項目をヘルさんの【可視化】スキルで出して貰う。
▶個体名アクアが特殊進化の条件を満たしました。このまま進化するか選択して下さい。
2.フェアリーエンジェル(☆☆☆☆☆☆)
ウチの子マジで天使になっちゃう件!?
「ミニゴブリンって天使になれるんですね?」
「いやいやいや、おかしくね?」
「だが、実際に出ているしな?」
「天使ってアーちゃんにぴったりですね」
「どうしますかマスター?」
「取り敢えず……進化には時間が掛かるし落ち着いてからだね。特殊進化って位だからやった方が良いのは良いだろうし」
「そうですね。光属性の強化、回復能力の向上も期待できます」
「う~ん。何か今回の戦いで皆凄くなっていってないかな? ボク、ちょっと自信無くしそう……」
私は最初から無いけどな!?
「まあ、良いや。それよりも……今回のアクアの事に関してはこの場の人間全員に箝口令を敷く。アクアの治療を受けて少しでも恩を感じるなら口を噤んでくれ。誰にも出来ない技能は争いの元になる」
こんな物、特に教会関連と貴族には絶対に知られたくない。
私の言葉に大多数が頷くが、一部の人間は不満そうな顔をする。しかし、アイギスも続けて頼んだ事で何とか全員が納得してくれた事で私達はテントを後にした。
いや~。ビビった。まさかアクアがあんなん出来る様になっているとは……。
私達は現在砦の捜索を早く終わらせようと別れて調査していた。あの後私が寝ている間に、騎士国側には今回の顛末を伝える使者を出している事も有り、ギルド職員や一部の冒険者以外はフープに行く事になった。
今回の事にフープが関わった為、褒賞と言う名の口止めをする為だ。
今回功績の大きい私達、刻炎、暁をフープに迎え。その他の冒険者にはギルドを通じて褒賞渡すらしい。ギルド関係者も呼ばれていたが彼等は、ハゲ未満の処罰や騎士国側との色々な処理をする為に早く帰らなければいけないのだとか。
正直このレベルになると私は門外漢の為良く解らないし興味も無い。
そんな訳で明日にはさっさと砦を立つ為に、全員で素早く探索を済ませ、さっさと休もうと言う感じになったのだ。
そして現在、私はクーとヘルさん、エルザの四人で探索していた所、隠し通路っぽい物を見つけそこを進んだ先の小部屋に居た。
因みにメンバー分けは適当に決めた結果だ。ヘルさんに関しては、何故か最初から私のお目付け役として決定していたけど、何故か誰も彼もが納得していた。
解せぬ。
そんな訳で小部屋の中、私は全員からの視線を一身に受けていた。
「ハクア様は本当にトラブルがお好きですね?」
「いや、まだトラブルと決まった訳では……」
「冗談ですよハクア様」
いや、顔は笑ってるけど目が笑ってませんのことよ?!
「まあ、我は主様のトラブルの結果ここに居る訳じゃしな」
クーまで私をトラブル体質扱いだと?! 誰のお陰で目覚めたと思ってんだ!
「マスターなのでしょうがありません」
えーと……諦め!? それ確実に諦め入ってません?! 何だったらトラブルと書いてハクアと読んでません?!
「あっ!
気のせいかな? 今名前呼ばれたのにトラブルとか言われた気がするんだよ!? 気のせい何だよね?
このメンバーではツッコんで勝てそうなのが、クーだけなので黙る私は大人しくエルザの方へ行く。
まだ、まだ認めた訳では無いからな!!
「何コレ?」
そこには沢山の卵のカラが散乱していた。
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