第203話あれは死ねる!
白雷装は魔法防御力を犠牲にしてスピードを上げる業、私はその早さとプロテクトアーツを活かし、360°の全方位からグロスに攻撃をする。
しかし、さっきから呪いや鈍重の魔眼使ったり【雷疫爪】とかも使ってるけど、やっぱり魔族レベルの相手にはデバフは入らないのね!
も~!! ちょっと位入ってくれても良いじゃん! 役にたたない! 役にたたないんだよこのスキル! 雑魚にばっか効いたって何か知んないけど、私の相手基本格上だから意味無いんだよ!
むしろこないだ、初めてに近いレベルで効いたから逆にビビったし! そんなのアレだよね? スキルとしてどうなのよ!? 私も澪みたいなの欲しかった!
まあ、私の戦い方には合ってるから良いんだけどさ!
元々日本に居た時、私達三人はネトゲでもリアルでも今と同じ様な戦い方が得意だった。
私は勿論スピードを活かした一撃のスキルに賭ける紙装甲のピーキーなキャラステ。まあ現実ではスタミナが足らなくて、そんなに動くと直ぐにヘバるから面倒だし、相手の急所を打ち抜いて昏倒させる感じだったけど。
瑠璃はスピードよりも技術や技を重視したカウンタータイプ、ネトゲでもそんな感じで大体平均的にステ振りしてた。
澪はわりと王道で防御よりもスピード寄りのパワー型、色んなスキルよりも基本のパッシブスキルや得意属性ガン上げタイプだったよね? そしてリアルでも完璧超人! 中身が残念なのは仕様です。
まあ、だからこの世界でも大して戦いかたは変わってない。とは言え、ココまで得意のデバフが掛からない相手だと、流石に文句の一つも言いたくなるのはしょうがない。
私は色々と溜まった鬱憤も晴らしながら更にグロスに攻撃を加えて行く。
しかし、だんだんとグロスも私のスピードに馴れてきて、危ない場面が増えてきた。
更に言えば、グロスのスピードが上がって来てる?!
──私のその考えが正しいかの様に、私の髪や頬を暴風が撫でて行く感触に冷や汗が止まらない。
とは言えやるしか無いんだよね?
私は体の負荷を考える事無く更にスピードを上げる為、今までよりも細かく【雷速】を制御する。
【雷速】を今まで以上に細かく制御するには、尋常でない集中力や精神への負荷が掛かる。しかし、そんな事で出し惜しみして勝てる相手では無いのは百も承知だった。
だが私のそんな些細な努力も空しく、遂にグロスの攻撃は私の左腕に当たり、私の腕の肉を中程まで吹き飛ばす。
グッ! 超イタイ! 何とか繋がってるけど、折れてる上に露出した部分に風が当たって、滅茶苦茶痛い!!
「クハッ! どうしたハクアそれで終わりかぁ! スピードは上がったが軽りぃんだょ! それがお前の切り札だったようだが、俺には通じねぇゾ!」
そりゃそうだ。早くなったのはスピードだけ、私の力が上がった訳じゃない。スピードが上がって多少威力が上がった位じゃお前には効かないよな……。
私は迫るグロスの拳を見詰めながら、待ち望んでいた物を見付け口の端を上げる。
流石に怪訝に思ったのか、一瞬動きが鈍るがグロスは攻撃を止める事無く、私に特大の一撃を加えようと大振りの一撃を放つ。しかし。
「誰が何時、
その言葉を放った瞬間、今度は予めスタンバイしていた私に使える最大火力まで高めた火炎魔法を、自分に向けて放ち力へと変える。
これは【雷装鬼】と【魔拳】の複合業だ。
進化候補に炎鬼や風鬼何て物が在ったのを思いだし、もしかしたら白雷鬼の【雷装鬼】の様なスキルが在ったかも知れない。
そしてもしそれが存在すれば、何時もの様にスキルとして覚えていなくても使えるかも知れない。
そう考えた私は取り合えず【魔拳】の要領でやってみた。一番最初に試した風属性は駄目だったけど、次にダメもとで試した火属性は何と成功したのだ。
だが、成功とはいえそれは一時的な物だった。
それから何度か試したがやはりすぐに効果は切れ、オマケに疲労感は半端無かった。
そこで私は【雷装鬼】に【鳴神】を掛け合わせる事が出来た様に、単一で使うのでは無く掛け合わせる事は出来ない物か? と色々試した所何とか完成したのがこの鬼炎雷装だった。
開発時は本当に苦労した。いや、マジで。
因みにこのスキルの名前を考えたのは駄女神である。なかなかの中二センスだが、実は結構気に入ってるのは内緒だ。
この鬼炎雷装も白雷装の様に制限が存在する。
鬼炎雷装は白雷装の制限に更に物理防御力まで攻撃力に返還するの。つまりは物理、魔法の両防御力が無くなる代わりに、物理攻撃力と敏捷を上げる事が出来るのが鬼炎雷装なのだ!
私は迫るグロスの攻撃を先程よりも強く弾き飛ばす。
流石のグロスも【雷速】を使い防御力を全て攻撃に回し、前に戦った時の様に拳と足にのみ鬼炎雷装を集中、圧縮した私の超攻撃型のスタイルには、パワーで押し切る事は出来ず「うおっ!」と言って後ろへとバランスを崩す。
「まだまだダァ! こんなもんかハクア!」
グロスは無理矢理体勢を戻し私にカウンターを仕掛ける。拳が魔力を纏い大地を穿ち私にまたも岩塊が迫る。
チッ!
私は内心で舌打ちしながら全ての岩塊を弾き、反らし、避けていく。鬼炎雷装状態ではどんな攻撃でも致命傷に為るため、一撃とて食らう事は出来ない。
岩塊を避ける為立ち止まる私に、グロスが手の平に魔力を集め、その魔力を散弾の様に飛ばして来た。
何と!? そんな攻撃も在ったんですか?!
私は【雷速】を使い弾幕の薄い方へと逃れる。しかし、グロスはそれを見越したように先回りして私の事を捕らえようとする。
ですよね! 罠ですよね! だって弾幕の張り方おかしかったもん!!
私は【結界】で何とか体を捩じ込む時間を稼ぎ、グロスの拳による攻撃の下に潜り込む。
それと同時に放たれる蹴りを更に体を傾けて躱すと、今度は残った左手で下から掬い上げる様な攻撃が来る、私は地面を転がる事になるのも構わず、地面を蹴り後ろへと跳ぶ。
ズザザザっ! と、音を立て地面を滑りながら、何とか体勢を建て直そうとする。だが、そんな私の努力を嘲笑うかの様に、私に向い飛んでくる魔力の塊。
あれは死ねる!
私は体勢を建て直す暇なんて無い! と、わりきって自分の下に下から突き上げる様に【結界】を作り、自分の体を下から上へと押し上げる。
イッテェ!
私は自分の作った物でダメージを食らいながら何とか攻撃を避ける事に成功した。
同時に今度は空中に【結界】を作り、それを足場にグロス目掛け【鳴神】を放つ──が、その攻撃はグロスが簡単に後ろに飛び避けてしまう。
だが──そんなん想定内ですとも!!
私は飛び退くグロスへと更に【雷鳴】を使って追撃を掛ける。この状態でなら威力は低いが【雷鳴】も連発できる。
MP効率も悪いけどね!
そして、何発か撃ちながらある地点へと誘導して、私自身も再び接近戦を仕掛ける為、今度は刀を取り出し刀技【散華】を使い突進していく。
グロスは流石の防御力で私の刀では断ち切る事は敵わない。
だが、それでも傷痕は残りダメージは通る。私はグロスの事を斬り付けながら、攻撃を避け続ける。するとズボッ! と、グロスの足元が崩れバランスを崩す。
今だ!!
私は体勢を崩すグロスへと私の持つ最高の業【鳴神】【疫崩拳】に炎の力もプラスした【雷轟炎】を放つ。
因みにコレも駄女神が付けた名前だからな! まんまとか言うなよ!! 苦情は受け付けません!! 全て駄女神がやった事です!
轟音を放ちながら打たれた私の攻撃をグロスは手の平で受け止め私の拳を逆に握り潰す。
「うっああ!」
だが、私の攻撃を受け止めたグロスの手も無事では済まなかった。
腕は既に炭化し私の拳を握り潰すと、その圧力に堪えかねたかの様に肘から先が崩れ去る。私はそんなグロスに今度は影魔法で顔を覆い、同時に土魔法で地面を液状化させ、足と視界の二つを封じる。
「食らえ!」
すると今まで戦闘に参加せず、攻撃準備の為に頭上でタイミングを図っていた澪が、下から見た私には山の様にしか見えない氷柱をグロスに向けて、風魔法のブースト付きで発射する。
だが、その攻撃ですらグロスは私の様に全ての魔力を拳に籠め。
バギァアァアン! と、盛大な音を辺りに響かせながら叩き割ってみせた。
「「うそん!」」
ぶち当る瞬間、グロスの拳が氷柱の尖端へと当たると、そんな音を立て氷柱が砕け散りグロスとその周囲に散って行く。
その氷は私が液状化させた地面に降り注ぐと、液状化させた地面ごとグロスの足を凍らせて、今度こそ完璧にグロスの足を地面へと縫い付ける。
左手は私の攻撃を受け炭化して崩れ、右手は澪の攻撃で拳を潰され、足も私達二人に縫い付けられたグロスに回避する手段は無い!
この一瞬を作る為に最初から行動していた私達は、そのタイミングを狙い私、澪、瑠璃が同時にグロスへと三方向から攻撃を仕掛ける。
放つは水転流奥義【水破】だが、多方向から放たれる場合この業は全く違う攻撃となる。
元は体内に存在する水分を刺激し乱す事で相手の防御に関係無く、内部から相手を破壊する業だが、その正体は波、つまりは振動を体に与える事で水分を刺激する。
そして、多方向から全く同じタイミングで放たれた場合、体内でその波は互いに干渉増幅され、その波が完全に重なる一点に関しては、放射線治療のガンマナイフの様な現象が起こる。
小さい力が集中する事で絶大な破壊力を持った爆弾の様な衝撃を、内部に発生させる事が出来る水転流共闘奥義【破極】となるのだった。
更に私達は瑠璃に戦いを見せ、私達を相手捕るグロスの動きから、大体の魔石の位置を割り出させ、そこに三人の波が重なる様にしたのだった。
その効果は絶大だった。
グロスは攻撃を受けその巨体を内側から、破裂するような音と共に氷の中に仰向けに倒れるのだった。
こうして私達はグロスとの戦いに辛くも勝利した。
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