第201話余裕? 在りませんよ?

 さて、どうするか。

 決め手が無いな~。前よりも多少マシになった今の私の魔力でも、ほっとんどダメージ通って無いからね~。


 グロス

 HP:7200/10000

 MP:1860/2500


 うん。無理ゲー。え~と、私等が攻撃する前が7500位だったから、今ので約300のダメージか~。瑠璃一人で四分の一削るとか、やっぱスゲーなアイツ!

【柔拳】とかの内部破壊みたいな浸透系の攻撃出来るのがデカイんだろうな。私等はそんなん瑠璃程出来ないから、当初の予定通り魔法を絡めて行くのがやっぱ良さそうだ。


 私は【充電】を使い、まずは【雷鳴】の準備を始めながら、フロントを勤める澪の動きに合わせてその隙を埋めるように魔法を放つ。


 だが、やはりその効果は低く前回の戦いでグロスを下す事が出来なかった事が悔やまれる。そのまま少しの間同じような攻防が続く中、感覚的に【雷鳴】の準備が整った事を知覚する。


「スイッチ!」


 私はウインドブラストでグロスの腕を弾き澪に叫ぶ。

 すると、そのタイミングを予期していたかの様に、剣技【飛竜】を使い剣の柄でグロスの顎を下からかち上げ、そのままの動きで剣技【鳳凰斬】を使い、全体重を乗せた炎を纏う突きを放つ。


 二つの連撃は見事だがその分隙も多い。

 私はそのタイミングを狙い旋刃鼬を腕に纏わせ、武装を開発しようとするヘルさんに頼んだが、すげなく断られてしまったロマン武器、その名はドリル! を、魔法で再現してグロスの腹に叩き付ける。


「ぐぉぉぁお!」


 流石のグロスもこの攻撃は効いたようで、私の押し込む力に負けて電車道を地面に描きながら澪から離れていく。


 しかし、グロスもそこでは終わらない。今もまだ自身の体を抉る、極小の台風の様な私の腕に絡み付く風ごと腕を掴もうとしてくる。

 私はさせじと魔力を更に籠め風と回転の両方を強化する。


 だが、その頑張りも虚しく徐々に風は押し込まれて行く。そこで私はその風を外側に爆惨させ、グロスの腕を弾き飛ばし胴体をがら空きにする。そして、がら空きになったグロスの胴体に手を添え【雷鳴】を発動した。


「グバッ! 甘メェッ!」


 私の攻撃が当たると同時に一瞬硬直するも、グロスはすぐに立て直し私に横凪ぎの一撃を加えて来る。

 私はその攻撃を何とか屈んで回避する。が、その瞬間、とても個人の腕の振りで起きたとは思えない風が私の顔に吹き付ける。


 あっ、やっぱコレ食らったら死ねるわ。


 グロス

 HP:6900/10000

 MP:1760/2500


 うわ~。しかもあんまり効いてね~。コレやっぱやるなら【鳴神】だな。


 私が屈むのに合わせ澪の【氷弾】が、グロスの関節を狙って撃ち込まれる。しかし、グロスはそのすべてを力一つで全て打ち破る。


 クッソ! いいな~。私だって転生したんだから、ああいうのが欲しかったんだよ!

 こう、何て言うの? 自分の力だけで全てを粉砕して、俺強え~。みたいな? そう、そうだよね? コレが正しい転生の在り方でしょ! 一昔前はそれが主流だったよ。

 今は確かに、私みたいに底辺からみたいの多くなってきたよ! でもさ! ホラ! 読者とかはこう、ね? 無双、最強! 俺強え~な、感じのハーレム物がどうせなら読みたい訳よ! 分かる?

 非日常の爽快感を味わって読みたいんだからそこはサクッと敵を倒さないとなんだよ!? これこそが求められる物!

 それに成り上がり何てさ、領主様の子供に転生とかの文系じゃない? 私みたいにこんなに必死に戦うなんて、やっぱり面白く無いと思うんだよね? って、アブね! 集中せんと殺られる!?


『シルフィン:今更……』


 うるさいよ!


 私はスキルの【思考加速】の能力をフルに無駄使いしながら、益体もない文句を垂れつつ戦闘を続ける。


 余裕? 在りませんよ?


 何処かから聞こえて来そうな突っ込みに答えつつ、グロスの攻撃を避け続ける。


 瑠璃で捌き切れないなら私の腕じゃ無理! 澪もそれが解ってるから避けてたんだろうし。


 私達三人の中で、いや、下手したらフロストを入れた所で、私達のパーティーで一番攻撃を捌くのが上手いのは瑠璃だ。

 その瑠璃がグロスの攻撃を捌いてあそこまでなったのなら、私達ではすぐにスクラップになるのがオチだった。


 それでも何とかなっているのは、一重に【思考加速】と【雷速】プロテクトアーツのお陰で在る。

【思考加速】する事でスローモーションの様に映る景色の中、私は【雷速】を体全体に使用せず、腕や足の瞬発的な加速の補助として使う事で、真っ直ぐにしか行けない、成功率が低い、等のデメリットを打ち消していた。

 更にはプロテクトアーツ、つまり【結界】を拳や関節に纏う事で、雷の速度で攻撃を弾く何て普通にやったら、すぐに腕が壊れる様な事にも耐えられている。


 本当なら攻撃用だったけど、意外に体を保護する役目の方が私には在りそうだな?


 私はそうやって攻撃を弾きながら、時折そこに風縮も攻撃として混ぜる。

 実は風縮は足元にやれば爆発を加速に使う移動業だけど、そのまま攻撃に使えばわりと強いんだよね?

 因みに今までやらなかったのは体が衝撃に耐えらんなかったから! つまりそれに耐えられる位には強くなったのだ!

 私、頑丈になりました。まだ威力に負けるけど……。

 しかし、自分の攻撃に体が耐えられなかったのが、耐えられる様になったのは強くなったと言うのだろうか? むつかしい問題だ!

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