第199話はう、二人共かっこいいです
「はぁ~、はぁ~、はぁ~……」
「クッハハハハ! どおした! もうヘバったのカ?」
強いですね。流石ハーちゃんとみーちゃんが警戒していただけ在ります。
私はエレオノちゃん達の制止を聞かず、ハーちゃんの作戦に逆らって目の前の人物、グロスとの戦闘を継続していた。
とは言え、ハーちゃんは勝率だけを考えての采配するのであれば、全体的な流れを作るなら私が相手をするのが一番だと分かっていた筈ですけどね?
それをしなかったのはハーちゃんの優しさだと思う。
私はこの世界での戦闘経験が乏しい上に、みーちゃんの様な特殊な力を貰っている訳では無いというのが大きいんだと思います。
だからこそ本来なら私に任せる所をフロストさんに頼んだんだと思います。
まあ、私個人がハーちゃんとみーちゃんに悪い虫が付くのが嫌でその優しさを台無しにしちゃいましたが。でも、それとは別にフロストさんに任せなくて良かったとも思っているのは確かでした。
これは多分、ハーちゃんとしても計算違い何でしょうが、恐らくフロストさんの防御力を持ってしても、グロスの攻撃は受けきれない。
これはハーちゃんの想定よりも強いんじゃ無いかな?
そんな訳でグロスの相手をしている訳ですが、正直腕が痙攣してきました。そろそろ限界が近いみたいです。
そんな状態をひた隠しながら私は再び構え、グロスの攻撃に備える。
私の使う水転流は相手の力を操る、いわゆる合気道の様な業が多い武術。
基本的なコンセプトは力の弱い女性でも力の強い者に勝つための武術。
つまりは後の先、後の後、これが水転流の基本。
まあ、私のお婆ちゃんがそれだけで無く自分から仕掛ける攻撃業や、様々な武器を取り入れた物も増やしたので、一概にそうとは言えなくなりましたが。
ハーちゃんはその中でも武器、特に刀に力を入れていて、カウンターも自分からの攻撃もこなすオールラウンダーなタイプ。
みーちゃんはカウンターよりも攻撃と徒手空拳を得意とする超攻撃型です。
そして私は、後の先を得意とするカウンタータイプなので、このグロスは得意なタイプの筈なのですが……。
何とも理不尽な事に力を操ってカウンターを返そうとしてるんですが、その操るべき力が強すぎて私の力と技量では、攻撃を返し切らずさっきから何度も危ない目に在ってます。
しかもその攻撃を反らし続けた私の両手は、今や疲れが溜まりすぎて筋肉が痙攣中、馬鹿力にも程があると思う。
こんな筋肉がハーちゃんとみーちゃんに近付こうとしていると考えると、こう……何と言うか沸々と怒りが込み上げて来ると言うか、正直ここで倒して仕舞いたい! と、言うのが本音ですね。
そんな事を考えつつも、グロスへの集中を切らさずに油断無く構えを取る。
すると、グロスは真正面からいきなり不恰好でデタラメな正拳突きを繰り出して来た。私は紙一重で避けながら、私を殴る為に伸びきった腕を押え、肘を極めに行く。
しかし、グロスは極められた状態にも関わらず、それをパワーだけで振りほどき私の体を弾き飛ばしにかかる。
私はその力に逆らわず、自分で飛びながら水魔法をウォーターカッターの様に高圧に飛ばし、グロスの胴体を狙う。
バシュッ! と、音を立てながらその攻撃は腕に当たる。しかし、その程度では対したダメージにはならず、再びグロスの暴風の様な連続攻撃が私を襲って来る。
振り降ろす様な右手の攻撃を一歩前に進み、懐に入りながら潜るように右に抜ける。するとそこには、私の動きを既に予測した様に腕の振りに連動させた右足が私を狙う。
動きがデタラメ過ぎますよ。
本来ならこんなに力が逃げた体勢で放たれる攻撃に威力がある筈の無い。しかし目の前に迫るこの攻撃は、理不尽な程の攻撃力を秘めている。
その足の上に手を付き転がるように避けながら、がら空きになった脇腹に堅い防御を持つ筋肉の鎧を避け【柔拳】に依る内部への浸透系の攻撃を行う。
流石に浸透系の攻撃は効果が高いようで「ぐっ!」と、言う短い声と共にバランスを崩すグロス。
本当ならここから追撃に行きたい所ですが……深追いは禁物ですね。
さっきから私達の攻防はこれの繰返しだった。
一発でも当たれば、恐らくヘタをしなくても落ちてしまいそうな攻撃を避け、チクチクと浸透系の攻撃でダメージを与える私。
逆に、私の攻撃はあまり効果が無い事を分かっているグロスは、多少無茶な攻めでも一発当てれば、そこから先は一方的な展開になる事が分かって要る為、防御等考える事も無く攻めてくる。
しかも……このままではジリ貧で私の方が先に沈むのはお互いに分かっていた。
何とか有効的な手段を見付けたい所ですが難しそうです。
【水破】なら何とかなる気がしますが、それも一撃で決めなければ二度目は打たせて貰えないでしょうし……。
なによりも【水破】は威力は在りますが入りと終わりの溜めが両方共長い。そこを狙われれば、結局私の敗けが確定してしまいす。
ここは決定的な隙が出来るまでは、今まで通り【柔拳】や魔法で削るのが得策ですね。
私は再び方針を決め今度は自分からグロスに攻めいる。
使うのはハーちゃんと共に練習して、業の領域にまで練り上げた【結界】を使って戦う闘法、ハーちゃんの付けた名前はプロテクトアーツ。
簡単に言うと体を【結界】で多いながら戦う方法で、重さの無い鎧を着た状態で戦う様な物。更には、骨や関節の各部も【結界】で補強する事で体の疲れや怪我等にも考慮してます。
しかも、相手の行動の阻害まで出来るのだから、考え付いたハーちゃんはやっぱり凄いです!
そんなプロテクトアーツを使いながらグロスへと仕掛けていく私。
まず、グロスの顎下から上に向い四角いボックスの様な【結界】でグロスを奇襲、効果が薄いのは分かっているけど、一瞬目を逸らせれば良いだけなので目的は果たした。
その一瞬を使い一気に距離を詰める。そして今度はスライディングで股下を抜けながら、コロちゃんに作って貰ったナイフを手に取り、グロスの膝の裏に突き立てる。
しかし、これもあまり効果が無い。
その事にショックを受けなくも無いが、私は素早くその場から前転で転がる。すると、グロスの拳が私の髪に僅かに触れながら通過していく感触に内心で冷や汗を掻きながら素早く立ってグロスに振り向く。
するとそこには私の予想よりも遥かに素早く移動して来た、グロスの拳が私の顔を狙う。
私は首を思いきり傾げながら、反対の方向にグロスの拳を逸らせる。
しかし、ここで予想外の結果が起きた。その一撃は今までの物より重く鋭く、私の力でも逸らし切れる物では無かった。
触れた瞬間、何本かの指と引き換えに逸らす事に成功するが、その風圧で私は吹き飛ばされてしまう。そして、グロスは大きく口を開け、ドガァァ! と、口から魔力の奔流を吐き出し砲撃の様な攻撃をしてきた。
私は素早く【結界】を何重にも砲撃の軌道に集中して展開するが、硬質な音を立てながら次々に破壊される。
それでも何とか避けるが、まだ無事だった方の腕に掠り私は地面に転がってしまう。
「あっ、うっ……」
「くかか! 前菜としてはなかなかだったゼ! しかし、ここまでダナ!」
「あぁぁあ!」
グロスは地面に転がった私の片腕を掴み上げ、そのまま握り潰し腕を折る。
あうっ、ハーちゃん、みーちゃんすみません。負けちゃいました。
私はグロスと二人を会わせたく無かったのに、無様に負けてしまった事を心の中で二人に謝る。
「くかか! 命乞いをしないのカ?」
「しませんよ」
私はグロスの言葉に否定の言葉を返す。それに対しグロスは一言「そうか」と返し、もう片方の手を握り締める。
そんな事する訳が在りません……。
──だって……私のヒーロー達は本当にかっこいいんですから。
私とグロスの間に影が落ちた瞬間グロスが私の事を放すと同時、私の腕を掴んでいたグロスの腕を狙って、真上から刀が振り下ろされる。
その攻撃は間一髪避けられて仕舞うが、私はグロスの拘束を免れ、そのまま降りてきたもう一人の手により抱き抱えられグロスと距離を取る。
「くかかかか! ようやく来たかヨ! ハクア! ミオ! 待ちくたびれたぜ!」
空から降ってきた二人の人物、ハーちゃんとみーちゃんはグロスの事を無視しながら私を安全な所に降ろし。
「随分好き放題やってくれたな……」
「まあ、戦いだし兎や角言う気は無いよ。でもさ……」
「「覚悟は出来てるだろうな。地べた這いつくばらせて、地面舐めさせてやるよ!」」
そう言って、私のヒーロー達は宣戦布告をしました。
はう、二人共かっこいいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます