第191話(この子は守る!)
クーとコロの二人がローブの男と戦う頃、ヘルとアクアもまガーゴイルと激しい空中戦を繰り広げていた。
しかしその戦況は芳しい物では無かった。
ヘルは武装のフリーウィングの瞬間加速と速度を活かし、ガーゴイルの攻撃を避けながら【魔力弾】を放つ。
しかし、ガーゴイルの石の表皮は魔力を阻害する効果もあるのか、なかなかダメージを通す事が出来ずに決定打を打つ事が出来ずにいた。
そして何よりヘルの持つ武装のフリーウィングは特性上、瞬間加速と速度には優れているが、その分細かな挙動には向かず旋回性能や方向転換でガーゴイルには劣っていた。
その為【魔力弾】よりも威力の高い【魔力砲】を放つも、空を飛びながらではガーゴイルの旋回性能に追い付けず、撃っても回避されてしまっていた。
アクアは逆に旋回性能や方向転換等の急な軌道変化には強く、自分の体の一部である羽を活かしガーゴイルの攻撃を何とか回避する。
だが、アクアはヘルやガーゴイルよりも飛行速度が遅く、その回避行動は余裕の無いものだった。
それでもアクアは得意の暴風魔法を活かし、魔力その物を弾丸や砲として放つヘルよりも、ガーゴイルに僅かなダメージを与える事は出来ていた。
しかし、飛行速度の乏しいアクアではガーゴイルに魔法を当てる事は難しかった。
また、魔法適正は回復魔法にこそあるアクアは、回復魔法に比べ攻撃系の魔法は威力こそ在るものの、ハクアやアリシア、クーの様な細かな魔力操作による攻撃は苦手だった。
その為、ヘルとは違い当たれば属性がある分ダメージが通るが、その攻撃自体を当てる事がアクアには難しかった。
そんな状況で一番有利に戦っていたのがガーゴイルである。
ガーゴイルの飛行性能はヘルには劣る物のアクアよりは瞬間加速と速度に優れ。アクアよりは少し劣るがヘルよりも格段に、旋回性能や方向転換等の急な軌道変化が出来ていた。
ガーゴイルは相対する二人に突出した飛行性能では負けていたが、総合的なバランスで勝っていた為空中戦闘を有利に進めていた。
何よりガーゴイルの表皮はカーチスカの改造により、魔力の分解作用が在りヘルの攻撃の威力を半減させる効果も担っていた。
本来この機能は【魔闘技】等の身体強化スキルで近付く敵に対する物だ。
本来の使い方はその魔力分解作用を使い相手のスキルを突破し攻撃を加えたり。また、身体強化した攻撃の強化をキャンセルして、素の攻撃力によるダメージに軽減する物だった。
これはカーチスカにとっても予想外の効果で有り、本来魔族以外あまり使わない、魔力その物による攻撃を得意とするヘルにとっては最悪に近い相性とも言えた。
そして、ガーゴイルの攻撃方法は改造により通常よりも大きくなった爪や尻尾、体を使った近接攻撃に加え。
口から吐き出される火炎と火球、翼が羽ばたく事で起こる風を利用した鎌鼬。更には石の羽を飛ばして攻撃を仕掛けて来ていた。
その直接の攻撃力は凄まじく、アクアは一撃でも食らえば即戦闘不能に陥る事は容易に想像できた。
更に鎌鼬や火球等の攻撃力も高く【結界】を用いても少なくないダメージを受けた。
そして石の羽の攻撃は攻撃力こそ低いものの連射性に優れ、直接攻撃と火球、鎌鼬と絡めて使う事で二人の連携を崩す様に効果的に織り混ぜて戦闘を巧みに展開していた。
ガーゴイルの石の羽がアクアを襲う。
アクアは全力の飛行でガーゴイルを中心に、半円状に飛びながら石の羽を回避する。そんなアクアは風魔法を使い竜巻を生み出し、ガーゴイルに向けて放つ。
だが、その風の中でも石の羽は反れる事もなく真っ直ぐにアクアを追う。
そして、ガーゴイルはアクアの生み出した竜巻に飲まれても、ダメージを受けた様子も無かった。それでも回避を続けながら効果の薄い攻撃を続ける他無かった。
だが、そんな効果の薄い攻撃を受けても攻撃を続けていたガーゴイルが突如攻撃を止め何かを避ける様に動く。
その瞬間、ガーゴイルが元居た所に光の柱が舞い降り包み込む。その攻撃【魔力砲】を放ったヘルは、細くなる光の柱を眺めつつ内心舌打ちをしながら次の一手を考える。
現在ガーゴイルは飛行速度が速くなかなか捉え切れないヘルよりも、回避性能に優れながらも飛行速度が遅く、補足しやすいアクアに標的を絞って攻撃していた。
だが、アクアだけに注視するわけでは無く、少しでも隙を見せればガーゴイルは容赦なくヘルを狙い致命の一撃を放ってきた。
「アクア!」
「ゴブ?!」
ガーゴイルはヘルの放った【魔力砲】の光の柱を遮蔽物として使いながら、その後ろで今までよりも強力な火球を作り出していた。
ガーゴイルの真上にいたヘルには火球を連続で吐き出すまで分からず、アクアへの注意喚起が遅れる。
アクアもヘルの放った【魔力砲】を遮蔽物にされた為、ヘルの声が聞こえてからの行動になってしまった。
その代償は【結界】で防いだにも関わらず吹き飛ばされるという結果で現れた。そして、吹き飛ばされたアクアは【結界】が弾けた衝撃で気絶して地面へと堕ちて行く。
ヘルはアクアへの注意喚起をすると同時に、アクアへと最大速で近付くが間に合わず、アクアは吹き飛ばされ堕ちてしまう。
だが、吹き飛ばされた事で外れると思った火球はアクアを追尾し気絶したアクアへと迫る。
ヘルはアクアが気絶した事に気が付き、減速する事無くアクアへと近付き抱抱えようとする。──が、アクアを掴まえる為に減速してしまえばガーゴイルの火球は二人に追い付いてしまう。
アクアを掴まえる為に減速すれば、追い付かれると分かっていたヘルは全力で【結界】を自分達の後ろに展開する。
しかし、アクアの【結界】を貫いた攻撃は自分にも到達すると予測を付け、ヘルは衝撃に備えアクアをキツく抱き締め、少しでもガーゴイルの火球の攻撃からアクアを守る。
(この子は守る!)
ドガアァァァアァ!
その瞬間、火球は衝突し爆発した。
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