第182話ありがとうございましゅ
ん? ここは? オイ、駄女神居るなら出てこい。
『シルフィン:いい加減その駄女神とかって辞めませんか?!』
……まあ、確かにそろそろ良いかもしれんが。
『シルフィン:そうでしょう。そうでしょう。私の事もちゃんと名前で呼びなさい』
だが断る!
『シルフィン:言い切った!? 何故?』
人に出来ない事を平然とやってのける。それが私の正義だ!
『シルフィン:貴女本当にそこからの引用好きですね!?』
『???:……フー……フー……』
『ティリス:まあまあ先輩落ち着いて下さい』
『イシス:そうよ。ハクアのペースに乗ってたら疲れるだけよ』
ヒデー。
『クラリス:フフッ。相変わらずハクアが来ると賑やかね』
『ブリギット:久しぶりだなハクア息災か?』
『???:…………ウッ──』
『エリコッタ:えっ、えっと、は、ハクアさんお久しぶりです──』
まあ、元気にやってるよブリギット。エリコッタは、紹介されて以来久しぶりだね本当に。
『エリコッタ:え~と、はい、お世話になると言ったのは良いんですが、メンバーが凄すぎてなんと言うか気後れを──そ、それより』
『???:──ン……?! ……フーフー!!』
別に大したものでは無いでしょ。
『シルフィン:いや、このメンバー見てそんな事言えるのは貴女くらいですよ』
いや、澪なら言う。
『ブリギット:ああ、言いそうだな』
それで今回は何の用なの? 遂に私に異世界無双なチートスキルを渡す気になったか?
『シルフィン:ハッハッハッ、それは無いですよ?』
ですよね~。ムカつくわ~。で? 全員集合でどうしたん?
『シルフィン:いえ、その~。最近出番が少ないので忘れなれない内に……と』
オイ。
『シルフィン:結構切実何ですよ! メンバー増えて来てなかなか突っ込みやボケ挟めないし! レスポンス良すぎませんか!? 特にあの人族のメイドの子!!』
何処目指してんだよ!
『クラリス:そうよね。あんまり登場しないとたまに出て来た時に、誰? みたいな反応される時在るのよね。あれ、地味に傷付くのよ……』
『イシス:確かに、あれは地味にダメージ在るのよね』
『ブリギット:それを言ったら鍛治神なんざ、あまり信仰してる奴すら居ないからな。だからこそ信仰してくれるコロナが可愛いんだが』
何気に毎日礼拝? 祈りか何かやってるからね。駄女神ズによくやるよね?
『『ほぼ全員:オイ!』』
『???:……ンフ?! ……フーフー……フーフー!!!』
『ティリス:まあ、だからこうやってハクアさんと話せるのは何気に貴重なんですよ』
何コイツら暇なの? 今回の用は愚痴聞くだけ?!
『シルフィン:流石に違いますよ? 今回呼んだのは、何か死亡フラグのような気もしますが、戦いが終わったら話しをしたいと伝えたかったからです』
何か本当にフラグっポイな!?
『???:……ウッン……?!』
『シルフィン:いや、だから迷ったんですがね。まあ、タイミング的にここかな~。と』
確かに後は本番だしね~。まあ、私としてもそろそろ聞きたい事もあったからね。ちょうど良いや。
『シルフィン:それと後は激励ですね。今回の戦いは、貴女が初めて十全の魔族と戦う訳ですから。ステータスやスキルの割り振りは大丈夫ですか?』
もうやってあるよ。まあ、サンキュー頑張るよ。
『ティリス:頑張って下さいねハクアさん! 応援しています!』
『イシス:ま、まあ、頑張りなさい応援しててあげるわ』
『エリコッタ:あ、あの! そ、そろそろ触れて上げませんか?』
エリコッタはそう言って、今まで誰もが精神衛生上顔を向けなかった方を見る。
いやいや、ダメでしょ。
何の話しかな? 私にはサッパリだよエリコッタ。
『???:……ンンンッ!!!』
『エリコッタ:い、いえ、でも──』
何の事か分かるか駄女神?
『シルフィン:私には分かりかねますね♪』
と、今まで見た事が無いほどの満面の笑みで私に答える駄女神。そんな駄女神に私も満面の笑みで、そっか。そうだよね♪ と、返す。
『エリコッタ:む、無理ですよ~。流石に私にはスルー出来る限界です~』
私達の言葉に遂に泣きが入りマジ泣きしそうになったので、しょうがなく先程からチラチラ視界に入ってくる物の処理を開始する。
さながら気分は爆弾処理班の気分だった。
何故なら、先程から私達の視界にチラチラ映り込み、何とも関わりたくない空気を醸し出した物は、何故かロープで亀甲縛りされた状態で宙に吊るされ、猿ぐつわを口に嵌められながら『フー、フー』とか荒い息を吐き、顔を羞恥に染めつつもトロンとした瞳でこちらを眺め、その荒い息に不意に振り向き、目が合ってしまった事で顔を思いきり逸らすと、これまた何故か、何、故、か! 身体をビクンッ! ビクンッ! と、跳ねさせまた息を荒くしていたのだ!?
そう、つまりここに居るのはヘ・ン・タ・イなので在る!! 関わりたく無い! はっきり言って関わりたく無かった! いやマジで!
しかし、エリコッタの助けを求めるような、潤んだ瞳は私に何とか関わる勇気を奮い立たせた。
──だが、それでも今も時おりビクンッ! ビクンッ! と、身体を跳ねさせ恍惚な表情を浮かべているのを見ると、私の勇気は萎えて来るのだった。はっきり言って魔族よりも関わりたく無い感じだ。
つーかアレ、お前らの領分じゃね? 仲間だろ? 同族だろ?
私がそんな事を言うと、この世界の神たる駄女神ズは、エリコッタ以外一斉に私からもぶら下がっている不発物からも顔をそむけた。
くっ、仕方ない。
私は萎える勇気を絞り出し、なるべく触らない様にロープを一気に切断する! 何故かって? 変態が移ったら困るでしょ? ロープを切られた事で重力が仕事を果たし、自由落下して見事に腹から地面に落ちる。
その瞬間に一際大きくビクンッ! と、なったのは気のせいだろう。そうだろう。気のせいだからな!
そして私は、エリコッタに猿ぐつわやロープを外す様に指示して、漸く変態を通常の状態に戻す。
『???:ふぅ、ありがとうございましゅ。流石に何度もだと堕ちちゃうかと思った。初めましてごしゅ……んんっ! ハクア』
と、そんな事を言うので、とりあえずゴミを見るような目で蔑んだら、今度は両手で肩を抱きクネクネモジモジしだした。私はその変態を放置して、駄女神に近寄り取り合えず胸ぐらを掴む。
『シルフィン:な、何ですか……?』
うん。駄女神取り合えずこっち見ようか?
『???:あぁ、ごしゅ……んんっ! ハクア。胸ぐらを掴んで罵る何てそんな高度なプレ……失礼な事、シルフィンでは無く私にして……んんんっ! 私が変わります!』
黙れ変態。取り合えずその口から二酸化炭素出して酸素減らすな! 迷惑だ!
『???:ハフゥウン! さ、流石ごしゅ……ハクア。私の目に狂いは無かったでしゅ』
その微妙に呂律の怪しい言葉を聞きながら、掴む手に更に力を込めるが駄女神は頑なに顔を背ける。そんな駄女神に。
流石にアレはダメだろ?
真面目にダメ出しすると、涙目になりながら『だって、しょうがないですか! 私だってあんなんだとは知りませんでしたよ!』等と言うので周りを見ると、全員が気まずそうに頷く。(一人は未だに悶えている)
帰りてぇ──。
『シルフィン:待って、い、一応紹介だけ。彼女の名前は……』
変態ドMクズ?
『???:ハゥン!』
『シルフィン:……もうそれでも良いですかね?』
『???:あぁ、流石シルフィン。貴女もなかなか──』
『シルフィン:ひっ!』
『ティリス:先輩ファイト負けないで!
『シルフィン:貴女達遠いぃ! クソ~。えっと、取り合えず名前はアスモと言います』
…………それ、アスモデウスじゃね?
『シルフィン:いやまあ、こっちでは女神やってます』
いやいや、えっ? 良いの?
『クラリス:……一応審査は在るのよ? 一度』
『イシス:彼女の場合は優秀な人間を見付けるのが得意だから赦されたのよ。彼女以外にも純粋な神で無い者は結構居るわ』
『ブリギット:その代わりの措置として、純粋な神と違い、下界への干渉する権利が無いし、元の力を大部分失ってるけどな』
ほう。一応の措置は取ってるのか。
『ティリス:優秀なんですよ……一応』
オイ、顔背けるなよ全員。
『シルフィン:ええ、そして彼女は勇者召喚担当です。そして召喚したのが──』
澪って訳か。それで一度澪に干渉したからさっきのプレ……お仕置きと。
『シルフィン:ええ、そうです。プレ……お仕置きです。ええ、お仕置きだったんですよ! 本当に! 本当は!?』
『アスモ:ありがとうございましゅ』
そんな言葉に若干引くと周りも追従してくる。そして駄女神が『違うから、本当に違うから』と、叫んでいたので暖かい眼差しで見詰めてあげた。
そんな訳で紹介が済み、改めてアスモを見てみる。長めのピンクの髪を後でアップに纏め、切れ長の目、肉感的な身体、更には女神らしからぬ、谷間とヘソと生足を出した格好をしていた。
うん、これで変態じゃ無ければな~。そんな事を思いつつ用事が済んだならと、帰ろうとすると駄女神に引き留められる。
『シルフィン:アスモも貴女の腕輪に力をくれるそうですよ』
えっ? やだ。変態が移る。
『アスモ:ハフン! ありがとうございます!』
『シルフィン:ま、まあ、貰えるなら貰って置きなさい。明日はそれほど危険なんですから』
駄女神は珍しく真面目な顔で私に言ってくる。そして、その危険性を分かっている私も、今回はちゃかす事無く言葉を真剣に受け止める。が……。
『アスモ:はぁっ、はぁ! やっぱり良い……』
何か色々台無しだった。
その後いやいやながらもアスモにも力を貰った。その際私が、変態はさっさと視界の中から出ていってくれ。と、言ったら良い笑顔で『ありがとうございます』と言われたのは実に不愉快な出来事だ。今回はステータスは上がらず代わりに【MP吸収】【HP吸収】の二つのスキルが付いた。
渡した本人は当初、ヤベ! 見たいな顔をして駄女神を見ていたが、その後のお仕置きを想像して、自分のその後を妄想していた様なので、そこから先は考えないようにした。駄女神は『これ位なら今の貴女には釣り合っているでしょう』と言って見逃されたのでラッキーだった。
その駄女神の後ろでお仕置きが敢行されず、四つん這いで地面を叩いてる姿が見えた気がするが、全員見ていないし、勿論私もただの勘違いなので気にしない。気にしてませんの事よ?
だが、変態からの施しに喜んだのは、微妙に納得がいかなかった。変態の癖に良いチョイスとは実に小賢しい。
するとそんな私のそんな気配に気が付いたのか、変た……もといアスモが『そんなスキルじゃなく【痛覚変換】の方が良かったですか?』と、にこやかに聞いて来たので何それ? と言うと『新たなトビラが開……オホンッ! 痛みを快か……では無く、ダメージを受ける度にステータスに補正の掛かるスキルですよ?』とか、言ってきたので丁重にお断りした。
私はそんなトビラを開きたくは無いし、変態に勧誘されて変態になるのはもっと勘弁だった。
そして私は、終わったらまた来ると言って目覚めるのだった。
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翌朝、朝も早くから色々な人間が決戦の為に動き回る中、既に準備が完了しているハクア達は、ゆっくりと朝食を食べ準備を整えていた。
「フワァ~ア」
「眠そうですけど、眠れなかったんですかご主人様?」
「いやまあ、なんと言うか、うん。大丈夫?」
「いや、疑問系で言われても」
(流石に変態ドM女神の事は言えんよな? アレは無い──流石の私でも言うのを躊躇うレベルだ)
「しっかりしろよ白。お前のお守りをする余裕は無いぞ」
そんな風に冗談目かして言う澪に「そっちこそ」と、互いに軽口を叩きながら出発の準備を整る。
そしてその最中に昨日の時点で軽く触れていた女神達からコンタクトが在り、戦いが終わった後に話しが在るらしいと全員に伝える。すると澪からも「そうだな。私も一度お前達に話す事が在るからちょうど良い」と、言って女神との話し合いを了承した。
そして、遂に作戦が開始される時間になる。
「嬢ちゃん達! 準備は良いか!」
その声に返事をしてハクアは皆に振り返り。
「さあ、派手に暴れてさっさと終わらせて、のんびりしよう!」
「「「お~う」」」
こうして今回の作戦最後の戦いが始まる。
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