第176話「いや、何と無く?」
「我らを襲いあれだけの被害を出し、あまつさえこの私までもあんな卑劣な手で騙した奴を信じられると思うのか!」
(……こいつ、絶対最後のが本音だろ。器ちぃせぇな)
(おい、まだ続くのか?)
(みーちゃんもハーちゃんもちゃんと聞きましょうよ。一生懸命喋っているんですから)
(と言うか、ミオ様に騙されたのを相当根に持っていますね)
(私、ああいうねちっこいの嫌──)
(エレオノ様に同意。ミミも嫌)
(私もパスですね。ミルリルはどう?)
(エルザと同じで私もちょっと──コロ様は如何ですか?)
(ボクもちょっと嫌かな)
(私もですね。ご主人様は──聞くまでも無いですね)
(まあね)
「私は騙されんぞ! 負けそうになったから口から出任せを言っているんだな! ふん。そこの頭の悪い小娘は騙せても私は騙せんぞ!」
(……うわ、あれに頭悪いとか言われた。マジ泣きそう)
(あれに言われるのは辛いな──)
(ハーちゃん元気出して下さい!)
(そうですよご主人様! あんなのは気にしないで良いですよ)
(アリシアは本当にブレ無いのじゃ)
(ゴブ)
(最近アクアさんゴブしか言ってなくないっすか?)
(おねちゃんそれは気のせい)
(あ、はい)
(あら? まだ続いていたのね?)
(アイギス、アレクトラも無事で良かった)
(ミオ様、フーリィーもありがとうございます。皆様もご迷惑を掛けてしまって申し訳ありませんでした)
(気にするな)
(そうです。アレクトラ様達を守るのが私等の兵士の使命ですから)
(私らの方も気にして無いよ)
(はい、アレクトラ様が無事で良かったです)
(因みに、操られてる間の記憶は?)
(はい、ちゃんと覚えています。お姉さまやミオ様に裏切られていた。という事以外は全部本心でしたので──)
(そっか。じゃあこれからも今まで通りで良いかな?)
(はい! お願いします。ハクア様、皆様も)
(うん。よろしく)
「──そもそも、今の言葉が仮に本当だったとしても、一度人間を裏切った奴等は劣勢になれば必ず裏切るに決まっている」
(決まってるってさ、裏切りもん)
(馬鹿への説明はこれだから面倒なんだ)
(確かに私も独自の価値観を持っていて、絶対に曲げようとしない部下にはミオ様の様に苦労しますね)
(へ~、そんなもん何だ?)
(本当ね、異世界だろうが何だろうが、ああいうのは何処にでも居るのね)
(((確かに)))
(それにしても長いですね。まだ続くんでしょうか?)
(続くんじゃろうな)
(飽きて来たゴブ)
(だね~、え~と確かこの辺に──と、あったあった。お菓子持って来たけど食べる?)
(白の手作りか?!)
(そうそう。食べやすい様にドーナツだぜ)
(食わせろ! 私もお前の料理が恋しかったんだ)
(慌てんなよ。全員分余裕であるから。はい、フーリィーやアレクトラ、アイギスも)
(ドーナツ──懐かしいわ。前世以来)
(ドーナツですか? 不思議な形ですねハクア様)
(これはどの様に?)
(このまま手にとって普通に、ハムッ! と、うむ。甘い)
(ハムッ!…………!? お、美味しいですハクア様!)
(確かにこんな甘くて美味しい物初めて食べました。アイギス様の作ったケーキとは違う甘さです!)
(アイギス、ケーキ作るんだ?)
(ええ、それを大々的に売り出そうとした矢先にロークラのあの宣言だったから参ったわ。本来ならケーキの販売から商会を繁栄させる予定だったのに……)
アイギスは落ち込む様に屈みながら、ドーナツをモソモソと食べ地面にのの字を描いている。
周りの空気から本当に苦労したのだろうと察したハクアは、もう一つドーナツを渡しながら話を続ける。
(タイミング悪かったね)
(本当よ。私の第二の人生プランどうしてくれるのよ)
(王族なだけで勝ち組じゃね?)
(そうでも無いのよ。ロークラのせいでウチの領はカツカツだし、お父様は領の運用を教わる前に死んでしまうしで、大変だったんだから)
(アイギスさんも大変でしたね)
(わかってくれる瑠璃さん)
(そのわりに慕われてるね)
(はい、アイギス様は常に民の事を考えてくれていますから、我ら領民は皆慕っているんです)
(お姉さまはとても慕われています。お姉さまが領の運用に乗り出してから、各所の貧富の差が減ったと、皆とても喜んでいましたし)
(でも、最近はロークラが怪しすぎて、通商が滞っているから大変なのよね)
(ほう、なら帰ったらアリスベルの十商、紹介したげようか)
(えっ? 本当?)
(おい、目的は何だ?)
(やだな~、ちょっと一枚噛ませて欲しいだけだよ)
(ハクアまだ稼ぐの? 余ってる位じゃん)
(だってこういうの好きなんだもん)
(もん、じゃねぇよ! こっちには国の運営が関わってるんだぞ!)
(良いじゃ~ん。個人だといろいろやりたい事にも限界が在るんだよ~)
(やりたい事って──ハクア結構今の段階でも色々やってるよね!?)
(ふっ! 私の欲望に際限は無いのだ!!)
(魔王か!? 何だそのセリフ言ってみたいぞ!)
(((言ってみたいのかよ!)))
(息ピッタリだな)
(うんうん。いい感じに纏まって来たね)
(これで良いのか主様よ?)
(まっ、こんなもんじゃね? それよりおかわ──)
「貴様等~!」
「うわっ! 何だようるさいな。耳元で叫ぶなよ!」
「全く、食事中に騒ぐとはマナーの無い奴だな」
「くっ! 私は騙せんし、絶対に貴様等の様な人間の裏切り者を認めんぞ」
そう言いながら澪に向かって指を指すゲイルに、流石にウザったくなって来たのか、澪が動こうとする。しかしその瞬間、澪の横から手が伸びて来てゲイルの人差指を握りグキッ! と、曲げる。
「ギャァァァア! き、貴様何をする!!」
「いや、何と無く?」
「何と無くでやって良い事と悪い事がわからんのか!?」
「知らん」
「ぐっ! くぅぅぅ!」
「はぁ、まあ言いたい事は全部言ったみたいだね。じゃあ、ここに居る人間でこのハゲと同じバカな事言う奴居る?」
「何だと!」
「お前は何もわかってないよ」
(さて、今の内にこいつを抑えておくかな)
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