第174話「気が付かれましたか?」

「うっ! ……ここは?」


 熊型のモンスターとの戦闘の後、気を失った澪が目覚めると、そこは見た事も無い場所だった。


「気が付かれましたか?」


 目覚めた澪に話し掛けて来たのは、澪が助けた少女だった。初めは必死だった事からあまり良く見ていなかったが、その姿は水色の髪をした愛らしい少女だった。身なりも良く、艶のあるその髪は一目で位が高い事も見てとれた。


(この世界、時代的にはかなり昔の設定だ。そこから照らし合わせれば、少なくとも貴族、もしくは王族に連なる者か?)


「アレクトラ様、あまり近付かないで下さい」


 澪は予想をたて会話を進め様とする。すると、後ろに控えていたのか騎士風の美女がいきなり声をかけ、澪との間に割り込み守る様に少女を庇った。


 そこからの展開は早かった。フーリィーと名乗った美女が他の者に澪の事を知らせ。

 護衛が到着するまでの僅かな間に自分が助けた少女がフープという名の国の姫で在る事、襲われる事になった経緯、澪が助けた後どういう経緯で、この状況になったか等を教わった。

 暫く聞いていると、更に白い甲冑を着た騎士と、威厳と高貴さを併せ持つ、自分よりも少し年上と思われる美女が現れ、澪に話し掛けて来た。


「貴女が妹を助けてくれた方ね? その格好高校生かしら?」


 自分がどんな状況かイマイチ飲み込め無かった澪は、会話のイニシアチブを握ろうとしたが、その一言でそんな考えは吹き飛んでしまった。


 彼女はそのまま自己紹介を始め、共に来た白い甲冑の騎士がカークスという名前で在ること、自分の名前がアイギスで、しかも転生者と呼ばれる者だという事を教わった。


 更にはこの国の置かれている状況、周辺諸国の動き等、澪が聞きもしないのに何故か話して来た。それを訝しんでいるとアイギスは「匿う代わりに力を貸して欲しい」と、交換条件を提示して来た。

 澪としては、もう何かを成す気力も無かった為に断る事を考えたが、その話しを聞いたアレクトラが、あまりにも無邪気に損得勘定無く喜ぶ姿を見て、何故か自分でも分からずその提案を受けてしまった。


 最初の内は兵に受け入れられる事が無かった澪だが、持ち前のリーダーシップとカリスマもあり、だんだんと周りの者に認められていった。


 だがそれには別の心理的要因が大きかった、それはフープに来てすぐの事、ふとした切っ掛けでアイギスに瑠璃の事を話す事になった。

 瑠璃に起こった不可思議な現象に心当たりが在ると言われ「アレクトラのスキルを使えば、もしかしたらこちらの世界で出会えるかも?」と、いう事でダメ元で調べて貰ったら、瑠璃だけで無く死んでしまった筈の白亜まで、こちらの世界に居る事が判明したからだ。


 アレクトラの【占い】スキルは、連続で使う事は出来ないらしく、この世界に居るという事しか分からなかったが、澪にとってはそれだけでも十分意味の在る物だった。


 その事が澪の活力になり持ち前の魅力を発揮する引き金となった、それからも何度か【占い】スキルを使い二人の近況を調べ、その度に澪は元気を取り戻していった。そして、澪が兵に完全に受け入れられて来た頃、事件は起こったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る