第163話コレ、私とネタ被ってね?!
安形 澪、聖嶺高校二年の生徒会長。
ハクアと瑠璃のもう一人の幼馴染みにして親友兼悪友の一人。
黒髪のポニーテールにキリッとした切れ長の目、十人中十人が美女と言うような見た目の大和撫子を体現した様な存在だったが、ハクアの知るその姿とは大きくその印象が変わっていた。
ハクアにとって澪の最大のトレードマークだと思っていた黒髪は、今は何故か水色に変わり、トレードマークになっていたポニーテールを今はおろしていた。
それだけでも印象はかなり変わるが、澪は更にこの世界の服を着ていた為に、その髪色と相まってどう見てもこの世界の人間にしか見えなくなっていた。
(髪と服であそこまで印象が変わるか。つか、良くあの格好が似合うな。見た目が良い奴は何でも着こなすな)
突然の登場にハクア以外の面々はそれぞれに困惑を露にする。
刻炎、暁のメンバーはハクアに向い親しみの籠った言葉を投げ掛ける、澪とハクアそれぞれに疑惑の目を向け。
ハクアの仲間は元々澪の存在は聞いていた──しかし、その人物が本当にこの世界に居る事、そしてその人物がハクアや、瑠璃の敵として現れるとは思ってもおらず、反応する事が出来ずに二人をただただ見詰め静観するしかなかった。
特に結衣は元から澪の事やハクア達との関係を知っていた為に、今目の前で起こっている自体にもかかわらず信じられない物を見ている気分だった。
しかしそれすらもハクアからすれば大した問題では無かった。
それよりも──。
「やはり分かるか嬉しいぞ親友♪」
「みーちゃん……」
「澪、お前……今何で同じセリフ二回言ったんだ?」
「ふっ。愚問だな白亜! 今のはどう見ても引きの場面だから、分かりやすく編集点作ったに決まってるだろ?」
そしてこれを知るものは少ないが澪はハクアと同じでかなりのレベルのアニオタだった。
『シルフィン:ありがたい事です』
(ウルセェよ駄女神!? つーか、相変わらずガチのアニオタなんだよな)
「それに何だその格好! メッチャエロいな!」
(最近のソシャゲのヴァルキリーとかみたいだし! けしからん! 実にけしからんぞ! もっとやれ)
ハクアの言う通り澪の格好は青を基調にした、肩と背中が剥き出しのホルダーネック、しかもその胸の中央がバックリ開いたヘソ上までしか長さのないキャミソールタイプ。
下はミニスカートに足の付け根部分までスリットが入り、ガーターベルトが覗いていた。そして金属製の鎧を手足と腰に付け、胸の下を支えるコルセットの様な物を鎧として着いていた。
「ふっ、そうだろう。この世界の女性用防具は、こんなんで防御力有るからふざけているな。全くけしからん! 私もわりと気に入っているが良い世界だな」
「うむ、禿同だよ!」
「みーちゃんが、みーちゃんが私の知らない間に不良に……!? 髪を染めてます!?」
「ちょっ! ハクアもルリも何言ってるの!?」
「そ、そうですよ! 前の世界からの友達が今目の前に敵として現れてるんですよね!?」
(まあ、確かにそうなんだけど……)
「まさかみーちゃん。こっちの世界で悪い人に騙され──」
「それは無いから。瑠璃はあれ騙して言う事聞かせる奴が居ると思うか? なによりアイツよりも悪人何てそうそう居ないだろ」
「……そうですね。それは無いですよね。ふぅ、良かったです」
「オイコラ親友共! 何だその言い方! もうちょっと無いのか! 感動とか!!」
「無い!」
「……泣くぞオイ。はぁ、この髪はこっちに来た時に変わってたんだ。それよりも抵抗のひとつもしなくて良いのか?」
「おいおい、冗談言うなよ。こんな囲まれた状況で抵抗しても皆死ぬだけでしょ? 無駄無駄」
「えっ? 囲まれてって?」
ハクアの言葉に全員が辺りを見回すと、澪の登場に気を取られ気が付けずに居たが、既に周りはハクアの言う通り包囲されて居た。
前後は勿論の事、ハクア達がモンスターを倒した崖上にも弓を構えた兵が既に布陣を敷き、澪の後方とハクア達の後ろの隊には、既に大規模魔法の発動準備を終えた魔法使いが待機している。
合図があればここに居る人間の殆んどが死ぬ事は誰もが簡単に想像出来る程、完璧にハクア達は包囲をされていた。
「それにしても、本気で驚いたぞ白亜。こんなお粗末な行動を許すとはな? こっちで鈍ったか?」
「それについてはお前のせいだろ!? コイツが先走ったんだよ!」
そう言いながらハクアは、澪が登場してから一言も発っさず黙りこむゲイルの首根っこを掴み前に押し出す。
「な……何故……君が……?」
「お久しぶりですゲイル様。また御逢い出来てうれしいですわ」
ゲイルが漸く絞り出した言葉に澪はニコリと笑いながらそう返した直後、口の端を上げてニヤリと笑いの質を変える。
(あれ? デジャビュ? コレ、私とネタ被ってね?!)
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