第162話「やはり分かるか嬉しいぞ親友♪」
突然のモンスターの奇襲を【結界】で防ぐハクア達。
(チッ! 場所が悪い。お陰でゲイルも守ってしまった。不覚)
「助かったぜ嬢ちゃん」
「フロスト! 結衣ちゃん! クシュラ! アレクトラを頼む。私達は上を叩く! 刻炎、暁は前後よろしく。もしも言った通りになったら、各々の判断で」
「ああ、上は頼んだぜ嬢ちゃん」
「こっちは任せなさい。ついでにお姫様達のフォローもするわ」
「頼んだ! アクアはクーをヘルさんはアリシアを連れて左に。瑠璃、エレオノ、コロは右! 三人は私の後に着いて来て」
「「「了解」」」
素早く指示を出したハクアは【雷装鬼】を纏い、岩壁に向かって走り【結界】を足場にして、次々に飛び移り一気に崖上まで飛んでいく。それに習い、瑠璃達も同じ様にハクアの作った【結界】を足場に上へと駆け上がる。
崖上に辿り着くと、まさかここまで辿り着くとは思わなかったのか、ゴブリン、コボルト、オークの混成集団が慌てふためいていた。
その隙を黙って見過ごす筈も無く【充電】で溜まっていた力を解放し【雷鳴】をオークに向けて放つ。
「「フゴォア……ァア……」」
まともにハクアの攻撃を食らったオーク二匹は叫びと共に絶命し倒れる。それを見てようやく再起動を果たした他のモンスター達が、ハクアに狙いを付け殺意を漲らせながら突撃する。
──が、ハクアはその集団を【雷速】で回避し集団の後方に回り込むと、無防備に後ろ姿を晒しているゴブリンに旋空を放ち四体のゴブリンを斬り裂き首を落とす。
一瞬の出来事に短い悲鳴を上げる──いや、上げさせられたゴブリン。そのお陰で悲鳴を聞いたモンスターはハクアの位置を知り、モンスター達は後方に居るハクアを殺す為に向き直る。
しかしそれは崖に向かって背を向ける行為にほかならない。
(悪いがそれは悪手だよ)
その瞬間音を立てず崖上に着地した瑠璃、エレオノがハクアの方を向き背を晒すオークに向い、瑠璃は最大まで高めた火魔法を放ち、二匹を纏めて炎が襲う。
エレオノは【魔法剣】で闇魔法を纏わせた剣技、穿孔迅で背中から一体のオークを突き貫き魔石を破壊、コロは遠距離から【地走り】を放ち、突出していた五体のゴブリンを纏めて倒す。
たて続けに三度もの奇襲を食らったモンスター混成軍は、統率を取っていたオークが全て倒されてしまった事も相まって、立て直しが効か無くなるほどの混乱に陥り、最早残されたコボルトとゴブリンでは、ハクア達に手も足も出ず物の数分で全て倒されていった。
(う~ん。レベル3か。流石にここまで進化すると、ゴブリンやコボルトじゃレベルが中々上がらなくなってきたな。と、そんな事考えてる間に)
「ギギャー」
「ハクアこっちは片付いたよ」
「最初のハーちゃんの奇襲で大分混乱してたから楽勝でした」
「うん。あっちももう終わってるみたいかな」
(殲滅力ならあっちのが上だしね~。ヘルさん、アリシア、アクアにクー、私なら即死するな!)
ハクアの思う通り、殲滅を第一に考えた行動の結果、向こうの混成軍は魔法により殆どの者が消し炭に成り、文字通り跡形も残っていなかった。
ハクアはそれを見ながら恐ろしい──と、素直に思ったが、物理攻撃主体の為、死体と血が散乱しているこちらも中々な地獄絵図を醸し出していた。
(下もそろそろ終わるな。向こうを頼んで正解だった)
下では未だに刻炎メンバーと暁の乙女のメンバーが、モンスターとの戦いを繰り広げている。
そこに居るモンスターは今のハクア達でも倒すのに時間が掛かる様なモンスター達だった。
ハクアが崖上のモンスターを受け持ったのは、何も空を飛べるメンバーや崖上に登る手段が有ったからと言うだけでは無い。
一番最初の一撃でハクアは敵の主力が前後から来る部隊であり、崖上に居るのは主力級では無いと判断したからだ。上からの攻撃は厄介でかつ非常に強力な半面、魔法や武器等を使わないモンスターには攻撃手段が少ない。
そう判断したハクアが上をよく確認すると、見えたのがこの混成軍だった訳だ。そして引き連れている隊長格が、オークだという事も直ぐに理解出来た為、自ら崖上の迎撃を買って出たのだ。
(しかし【雷鳴】でも当たり所が良ければオークを一撃でいけたのは大きな収穫だ。まあ、属性の相性も良かったんだろうけど)
暫く戦闘を眺めていると、最後の一匹も漸く刻炎メンバーによって倒される。それを見届けてから、ハクア達は崖下へと降りて行く。
「それが空を移動する方法か。その使い方は盲点だった」
「へ~、面白い事考えるものね? ハクアちゃん、後でウチの副官のターニャに教えて上げてくれないかしら? あの子今の見て、是非頼んでくれって戦闘中まで言ってくるのよ」
「これくらいなら良いよ」
「本当に? ありがとう」
「それでハクア、これからどうするの?」
「とりあえずこの事態を引き起こしたゲイルを──」
「その必要は無いぞ白亜」
突然会話に割って入った人物に全員が目を向ける。そこには水色の髪をした美しい少女が、フープの兵を従えて立っていた。
「……やっぱりお前だったか」
「……う……そ」
「やはり分かるか嬉しいぞ親友♪」
そこにはハクアと瑠璃が前の世界で最も共に過ごした親友、安形 澪が敵として立っていた。
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