第150話 君も何を言っているのかな?!
前乗りした冒険者の構築した陣に向かいながら、私は竜車に揺られ一人考え事にふける。
「どうしたんですか。ハーちゃん?」
「ん~。や~、やっぱり竜車って良いな~、と思ってさ」
「前にも言ってたよねハクア」
いや、だって竜車だし! テンション上がるよね普通! それに竜の騎乗スキルは正直羨ましいんだよね。
「……ハクア様? そんなに熱視線を送られると照れてしまいます」
「ハーちゃん?」
「ご主人様?」
「エルザさんは何を言ってるんですか!?」
いや、本当に何を言ってるよこの女。
「でも、確かにずっと見てました」
アリシアさん!?
「ハーちゃん、私じゃ無くてエルザさんに!?」
君も何を言っているのかな?!
「もう、ダメだよエルザ。ハクア様達をからかったら」
「弄りがいがあってついね?」
つい、でやられる身になって下さいません!?
「それにしても、ミルリルはハクア様にご執心ね」
「そ、そんな事無いよ! 無いですよ! 無いですからねハクア様!」
「そこまで否定されるのは……」
「あ、あぅ、え~と、ハクア様には返し切れない恩も有るし、美人で格好良いしゴニョゴニョ……」
後半聞こえんかった。でも──。
「大好きねミルリル。じゃあハクア様に迫られたら?」
何その例え!?
「それは──って! 何言わせようとしてるのエルザ!?」
「ふふ、冗談よ」
あの、その手の冗談辞めて貰えません? 若干二名からの視線が怖いの。
「ミルリル」
「は、はい」
「勘違いしている様だから言っておくけど、私はミルリルの事もミミの事も助けて何て無いからね?」
「は? え?」
「私が私の為に行動して、その結果たまたまそう思える様な結果に繋がっただけ、言い方は悪いけど……言ってしまえばミルリルもミミも、私の行動の結果勝手に助かっただけ、私に感謝も恩義も感じなくて良いんだよ」
「で、でも」
「ミルリルちゃん」
「ルリ様?」
(ハーちゃんのコレは何時もの事だから気にしなくて良いですよ。ようは気にしないで良いって事ですから)
(でも、それでは──)
(そうよ! それじゃあ感謝も出来ないじゃない!)
「なら、私達が勝手に感謝します」
「はい?」
「私はそのハクア様の行動の結果で、ミルリルが助かった事に勝手に感謝します。ミミとミルリルは助けて貰ったのでは無く、勝手に助かって勝手にハクア様に感謝するだけです。それなら何の問題も有りませんよね?」
「…………はぁ、それは私の管轄外だね。それなら勝手にして良いよ」
「ええ、勝手にします。それはそうと、何で私の事を見てたんですか?」
そういえばそんな話しだったっけ。
「それにミルリルやミミの身体も舐め回すように見てましたし」
「「ええっ!?」」
「ご主人様?」
「ちょっとお話ししよっかハーちゃん?」
「濡れ衣だ!!」
「話し進まないから聞くけど、何で見てたのハクア?」
「うう、ありがとエレオノ。何と言うか、ただ単に竜の騎乗スキルが羨ましいな~。と」
「主様何処まで気に入ってるんじゃ?」
呆れんなよ。
「そうですね【騎竜】スキルならアリスベルに帰ったら買いに行きますか?」
「本当ですかエルザさん!?」
「……何で敬語何ですか?」
「マジで買えるの?」
「ええ」
おお、これで私も竜に乗れる!!
「わかりました。私が買ってきます」
私がエルザの言葉に喜んでいると、何故かアリシアが自分が買いに行くと言いだした。
「えっ? それ位私が勝手に行くよ?」
「ダメですよハーちゃん」
「何故に?」
「「だって絶対他の物も買うと思うし……」」
「ハッ!? そうか!? 【騎竜】のスキルの種が在るなら他のスキルも売ってるのか!!」
私とした事が竜に乗れる嬉しさでそんな事を忘れるとは……不覚!!
「よし! 帰ったら早速行こう!!」
「だから駄目です」
「やだ! 行く!」
「ハーちゃんワガママはメッ! ですよ」
そんな子供あやすように言うなや!
「でもスキルはともかくとして、皆さんレベルの冒険者ならそろそろ遠出する時の為に、専用の騎竜を買うのも良いかも知れませんね? 世話なら私達メイドが出来ますから」
「専……用……? 本当? 本当に!? 私の騎竜が買えるの?!」
あまりの事態に私は思わずエルザの肩を掴み詰め寄る。
「え、ええ、今のハクア様の財力なら上等な物が買えます。そ、それよりそろそろ離してくれませんか? ち……近いです……」
「エルザって昔から攻められるのは弱いよね?」
「う、五月蠅いわよミルリル!」
「竜~♪ 騎竜~♪ 私専用の騎竜~♪ もう魔族とかどうでも良いから、帰って竜見に行こうよ!」
「うわっ! ハクアがミノタウロスの時と同じ位上機嫌かな」
「ご主人様しっかりして下さい! アレクトラ様の前で何て事言ってるんですか!?」
「ふふ、構いませんよ。これも皆の緊張を解すハクア様の気遣いでしょうし」
ヤベェ、天使が居る。
「そうだ、アレクトラに一つ聞いておきたかったんだ」
「何ですかハクア様?」
「勇者のギフト知らないって言ってたけど、何か思い当たる節もない? 直接的じゃ無くても触りとか?」
「すいません」
「いや、良いよ」
分からんものはしょうがないか。
いや、それよりも誤情報を掴まされて無い分マシなのか? 判断に迷うけど良しとしよう。勇者と当たる時は先入観を捨ててあらゆる可能性を考慮に入れないとな。
「やっぱり勇者とは戦う事になるのかな?」
「多分ね」
エレオノの言葉に答えを返すと全員の表情が強張る。
とはいえ、当たるとしたら多分私か瑠璃だろう。いや、私かな? 何と無くそんな気がする。
そんな事を考えていると不意に行者台の方から声が掛けられる。
「皆さん、陣が見えて来ましたよ」
そして私達は遂に陣へと辿り着くのだった。
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