第144話いやぁ~、失敗、失敗。
「………………眠い」
「「寝ちゃ駄目ですよご主人様(ハーちゃん)」」
「…………はい」
私はダンジョンでの事に付いて、一晩中正座しながら今もなお怒られている途中の為、遅い来る眠気や足の痺れと必死に戦っていた。
「おはようございます皆さん」
「おはよーエルザ。二人は?」
「今ミミは庭の手入れを、ミルリルは食事の支度をしています」
「そっか、少しは慣れた?」
「はい。奴隷印のある人間としては破格の待遇です」
「いや、ネタにしてるけど提案は君からだよね?」
「そうでしたか?」
この女、わりといい性格してんだよな~。嫌いじゃない、嫌いじゃないぞ。と、いうか本当に足がもうそろそろ限界何ですが!?
「ふう、しょうがありませんね。もう朝食の時間ですし、この辺にしておきましょうかルリ」
「そうですねアリシアちゃん。ハーちゃんももう良いよ。イタズラもほどほどにね?」
「了解です!」
「返事が良すぎると不安ですね」
「ハーちゃん、反省してます?」
どうしろと!?
とりあえず許可が出た事で私は立ち上がろうとする──が、一晩中正座して今の今まで座っていた為、無理矢理立ち上がろうとした瞬間、私はバランスを崩し目の前で話をしていたエルザを押し倒してしまう。
おう。柔らかい。
不覚にも触ってしまったが、無意識に感触も確かめる私。
「ゥン! ハクア様? せめて誰も居ない所か、部屋が良いのですが?」
「ハッ! いや、違う! 不可抗力だ!」
「でも私はハクア様の奴隷なので、お望みなら……」
マジか!?
「って、何でいきなりしおらしくなるの?! て、いうか手ぇー、口元からどけろ笑ってんじゃん確実に!?」
「ひどいですわハクア様。押し倒しておいてそんな言い掛り」
「ハーちゃん?」
「ご主人様?」
うわん。追加(おかわり)入りました!
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それから少しするとエルザに起こされた皆が、食堂へと集まってくる。
「……まだやってたの?」
「違うもん! おかわりだもん!」
「それもっと駄目ゴブ」
「グハッ!」
「自業自得ですよハーちゃん」
「事故なのに……事故なのに……」
「やってしまった人は皆そう言いますものね」
「いやいや、ややこしくしたのは君だよね!?」
「でも触りましたよね?」
「事故です!」
「揉みましたよね?」
「不可抗力です!」
「柔らかかったですか?」
「うん!」
「判決は?」
「「「有罪で」」」
「ギャース!」
「何やってるのよ。貴女達」
「エルザ、ハクア様からかったら駄目だよ」
そんないつものやり取りにメイド組を加えてふざけた後、ミルリルが作ってくれた朝食を全員で食べていると、ミミが私にギルドからの呼び出しがあったと伝えてくる。
「私何もした覚え無いんだけど?」
「いや、主様の事じゃから覚えが無いだけと言うことも……」
「二人共何を言ってるんですか? この間の騒動の報告をする約束だったじゃ無いですか」
「騒動?」
「えっ? いや、ご主人様?」
「……アリシアちゃん。ハーちゃん本気で忘れてますよ。アレ」
「ハクア様? 私達三人が何でここに居るのか覚えています?」
「…………ああ」
「本気だったのハクア様!?」
そう言えばあったねそんなイベントも。
「しょうがない。体調不良で欠席……」
「駄目ですよ」
「え~」
「ルリ、二人でご主人様を連れて行きますよ」
「わかりました」
「及ばずながら私も協力しましょう。マスターは少しでも目を離すと何をしでかすか分かりませんし」
抜群の信頼だな私。解せぬ。
こうして、私達はギルドへ行く事に決まり。他のみんなとはギルドの後に合流して買い物に行く事に決まった。
そして私は、そのまま私の【喰吸】のスキルの事に付いて皆に話し始めた。
そもそも何故昨日の段階で進化可能となっていたのに触れる事すら無かったのか? それにはちゃんと訳がある。
それはアクアやクーのステータスを話している時、私は自分のステータスをチェックする前に、スキルのわり振りをしていた。
その時【喰吸】のレベルが上ったのを知り、進化可能となった事を女神に話した。すると「忙しいから明日にしろ」と言われしょうがなく引き下がったのだった。
因みに説明の途中悪いとは思ったが、ヘルさんに聞いた所【喰吸】はオリジナル要素が強い為、詳細は女神に聞いた方が良いと言われてしまったのだ。
駄女神に頼らなければいけないとは……。
「あ~。それで触れなかったんだね」
「誰からもツッコミ無かったから、別に説明は駄女神に聞く時で良いかなーと、てか何で聞かなかったの?」
「いや、へルさんとハクアが二人揃って何にも言わないから、ツッコミいれたら何か危なそうで……」
「失礼な!?」
「全くですね。マスターと一緒にしないで下さい」
「そうだよ! って! それも酷くね!?」
「冗談です。それよりも早くしてしまいましょう、予定もありますし」
「そうだね」
つー訳でよろしく。
『シルフィン:貴女もう少し頼み方が在るでしょうに。まあ貴女はそう言う人間だから良いですけど。まず【喰吸】を何時も進化する時のように選んで見なさい』
OK、OK。え~と。
▶喰吸の進化先が複数ありますどのスキルに進化するのか選んで下さい
喰吸.生
喰吸.精
喰吸.強
喰吸.減
喰吸.魂
うむ。効果が分からん。
「これどんな効果何ですか?」
「分からないかな」
『シルフィン:今から説明します。とはいえ貴女なら、何を選ぶのかわかってますけど。と、いう訳で取り合えず上から順に説明していきます。
まず喰吸.生は、使うとスキル取得と共に最大20%HPが回復します。レベル毎に2%ずつ回復効果が高まるので、取得後すぐは2%ですね。そして喰吸.精はMP&気力が回復します。回復率は生と同じ回復率ですね』
最大20%回復はかなりでかいな。今後ステータスが伸びるんなら、生存率が大幅に上がるし、MP&気力なら戦闘の継続がしやすくなる。う~ん悩む。
『シルフィン:続けます。次に喰吸.強は、純粋に今までの強化版ですね。今までよりも多くのスキルポイントを取得出来る様になります。
喰吸.減は、相手が生きてる時にスキルを使うと、ランダムに相手のスキルを奪いスキルレベルを下げられる様になりましたよね? それを更に強化して、もっとスキルレベルを下げられる様になります。しかし、取得出来るスキルポイントは今までと変わりません。
最後に喰吸.魂ですが、これはスキルを指定回数使う毎に、ステータスの強化ポイントが1増えます。指定回数はレベル毎に変わり、LV.1では10回、LV.10では1回で1増える様になります』
「どうするのハクア?」
「ご主人様」
「ハーちゃん」
ヤバイ、思ってたよりも重要だ。正直私のステータスなら、魂が良い。私的にもすごく好きだし。
でも強敵と戦うなら減で相手のスキルレベルを下げるのは、大きなプラスになる。それはこの世界がステータスも重要だけど、スキルレベルはもっと大事な物だからだ。
そして同じ理由で強も同じ。確実に私自身を強化出来るならそっちの方が強くなれる。
さて、どうするか? 生存率なら生、戦闘継続なら精、自己強化なら強と魂、強敵との戦闘なら減。正直どれを選んでも、どれを選ばなくても後悔はする…………よし。決めた。
私は説明が終わった時に一番嬉しかった物にする。
▶喰吸の進化先が複数ありますどのスキルに進化するのか選んで下さい
喰吸.生
喰吸.精
喰吸.強
喰吸.減
喰吸.魂←
▶喰吸の進化は喰吸.魂で良いですか?
一度進化すると元には戻りません。
はい←
いいえ
▶喰吸が喰吸.魂に進化します。進化を開始します………………進化完了しました。
▶喰吸が喰吸.魂に進化しました。
うし。やる気出た。頑張ろう。
『シルフィン:ええ、頑張りなさい』
「喰吸.魂にしたんですねハーちゃん」
「個人的には安全を考えれば喰吸.生が良かったですが、一緒に頑張りましょうご主人様」
「うん」
「でも他のも勿体無かったね?」
「まあね、でもそれはどれを選んでも同じ事だから」
「そっかぁ」
「さて、それではそろそろギルドへ向かいますか」
「そうですねハーちゃん」
こうして私達はギルドへと向かうのだった。
──そう。在る事を忘れたまま。
ギルドへ行くと瑠璃が馴染みの職員に話し掛け、ギルド長へ取り次いで貰う。そして、執務室に向い扉を開けると。
「ふん、やっと来たな疫病神め……って、誰だ貴様は! いや、待てよ貴様が小娘か?」
そう。私は進化した為、たった数日で身長が伸びていたという事実を忘れていた。
いやぁ~、失敗、失敗。テヘッ。
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