第133話これぞ簡易変装の魔法だ!

(その為にここに来て貰ったんだ……ね? 人の事普通に拐っておいて何言ってんだか?)


 ――――と思いながらもハクアはククスに答える。


「それじゃあ私が何の為に呼ばれたのか、そろそろ教えてくれる?」


(ここに居るのは二人だけど、屋敷自体には結構居そうだな。それにどっかから視線と気配は感じる。隠せてないしどっかにマジックミラーみたいのがあるのか?)


 ハクアは質問をしながら、自分の置かれている状況を把握していく。


「何の為に、ね? それは自分が一番分かってるだろ?」

「さあ?」

「惚けるのもいい加減にしろ! お前が知っている秘密を吐け!!」


(秘密ね~。実は本当に何も知らないんだよね? カーラも何をしてるのかまでは知らなかったし。ここ調べれば分かるかな?)


「秘密か~、それを言うならもう一人ちゃんと呼ばないと……ね、そうでしょコルクルさん?」

「何を?」

「居るでしょ? ここはあんた達みたいのが、勝手に住み着けるようなレベルの屋敷じゃない。しかも、この広さの家をこの都市で維持できるとすれば十商レベル。それで私にこんな事するとしたら、この間会ったコルクルくらいだからね?」

「勝手な事を!!」

「ククス下がれ!」

「こ、コルクル様……」

「これはこれは、ハクア君久し振りだね?」


(うわ~、苛つくわ~)


 ハクアがカマを掛けると、視線を感じた方からコルクルが現れ、ニヤツキながらさも当たり前のように話し掛けてくる。


「さて、要件はククスが伝えた通り。君が知っている儂の事とやらを教えて貰おうか」

「あんたの秘密? あぁ、実はその髪が偽物でカツラだとか?」

「下らない事を言うな! どうせお前はあの女から儂の不正を聞いたんだろ! 答えろ! さあ、答えろっ!!」


 ハクアの挑発にコルクルはキレ、ハクアの顔を何度も叩きながら怒鳴り付ける。

 ──だが。


「知らないね」

「このクソガキが! ……もういい。話したくないなら好きにしろ。ククス! 他の奴も連れてこい。全員で好きなだけ弄んだ後、薬漬けにしていつも通り売り捌いてやる!」


(なるほど、人身売買か。この様子だと他にもありそうだな? とはいえ……我慢すんのも面倒だしこれくらいでもういいや)


「早く行って連れてこいクク……あがっ!」

「コルクル様! なっ! 体が……重い」


 突然倒れたコルクルに近寄ろうとしたククスだが、何故か自分も動く事が出来なくなる。辺りを見回すとハクアの後ろに居た部下も倒れ、それをハクアが冷たい目で見下ろしていた。


「お、前……儂に……何……を…………ぐっ! 」


 コルクルは倒れた姿のままハクアに、問い質そうとするが、ハクアに顔を蹴られ顔を押えながら何か言って居た。


「コルクル様! くぐっ! お前何をした!」


「あのさぁ。何をした? とか、聞いて答えて貰えると思ってんの? まあ、私は答えるけど……別に大した事はしてないよ?」


 ハクアがしたのは単純に邪眼のスキルを使い、麻痺の邪眼でコルクルを封じ、ククスには呪いと鈍重の邪眼を掛けただけだった。

 因みにククスの部下はハクアが逃げ出さないように、ずっとハクアの肩を押さえて居たため、麻痺毒を使い動けなくしていた。


「それにしても、一度会ったのにまだ分からないなんて、注意力が足らないんじゃ無いククス?」

「お前何を?」

「あら? これでもまだ分からないかしら?」


 そう言うと、ハクアの全身を影が包み込み、その影の中から夜の闇のような黒髪を持つ女が現れる。


(これぞ簡易変装の魔法だ! まっ、影で髪の毛覆って黒くしてるだけだけど)


「なっ!?」


 それは誰しもの目を引く火傷の痕は無いが、確かにククスにコルクルの使いを名乗り、ハクアの似顔絵と情報を伝えて来た女だった。


「二日振りかしらククス?」

 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 その頃、王から出兵の許可を貰ったと言うカーラからの連絡を受け、アリシア達は竜車に乗りハクアの元へと向かっていた。

 そしてその車内では、今回の事情について瑠璃から説明がされていた。


「──という感じです。だから心配しなくても大丈夫ですよ。今もヘルさんがハーちゃんの事を守ってます」

「「「ええ~」」」

「じゃ、じゃあこれってハクアの自作自演なの!?」

「簡単に言えばそうですね。まあ、ハーちゃんもこんな風に拐われるとは思わなかったでしょうけど」

「ハクア……そんな事してたんだね? 本当にボクたちが心配する事無かったかな」

「主様、流石じゃな。頭がおかしい……」

「ゴブ」

「そんな訳だから大丈夫ですよ。アリシアちゃん……アリシアちゃん?」


「ご、ご主人様のばかぁ~~~!!!」


 結果、狭い竜車の中にアリシアの絶叫が響くのだった。

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