第123話私、雑魚相手なら意外に有能だった件!
休憩を終えた私達が中央部を進んでいると、前方に五体のモンスターが固まっているのが見えた。
「五体か……」
「一人で戦うには多くない? 大丈夫ハクア」
「うん。脅威度も低そうだからやってみるよ。増援来たらよろしく」
脅威度とは、この塔に入る前にヘルさんに頼んでやって貰った物で、【鑑定士】のスキルを使いステータスを見た最、HP、MP、気力の横に【鑑定士】スキル使用者と相手のステータスから比較して、大体の力量を一目で把握出来る様にして貰った物である。
今までは全ての敵のステータスやスキルを調べてから戦いに挑んでいたが、これからはそんな余裕が在るとも限らない。しかも次の戦いでは尚更その暇は無いだろう。と言う事で、一目で撤退すべきかどうかの判断をつけられる方が良いだろうと言う判断だった。
因みに現在は色による判別で、脅威度が低い物は青色、同等のステータスは黄色、強敵は赤、更にその上は黒になっていて、だんだん色が変わりそれぞれの色が混ざる事で、多少細かく分かる様になってる。
最初ヘルさんが表示した時は低、中、高の三種類だったが、それを見た駄女神が私の案を採用して、システムを付け足す事で現在の形になり【鑑定士】のスキルを持ったアースガルドに住む全員にスキルレベルが低くても適応される事となった。
本人曰く『異世界に来て能力貰って、無謀に突っ込んで行く人間が多くて人死にが多いので……』との事だ。
これに対し「アイデア料にチート寄越せ!」と私が主張、それに対し『チートはやらないがアイデアの礼はする』と確約を取り付け一人満足していた。
▼▼▼▼▼▼
「じゃあ行ってくるね」
そう言って【魔闘技】を自然に発動しながら一人進む。
「……白亜先輩凄い」
結衣がそう言うのも当然。
自身も【魔闘技】を使える為、あまりにも自然に、無駄の無いスキルの発動に、ステータスでは上を行っているが、ハクアが自分よりも実力が上だと一目で分かる程、結衣から見たハクアの【魔闘技】は自然な発動だった。
勿論これにも訳がある。
ここ最近具合が悪く家に引きこもっていたが、この世界にはハクアが生前ハマっていた様な娯楽が全く無い。
その為に暇をもてあましたハクアがやった事は【結界】や【魔闘技】等の、スキルや魔力の扱いの効率の良い発動&運用の練習だった。
元々集中力が群を抜いているハクアが、一週間ほぼそれだけに時間を費やした結果、普通に日常生活をするだけなら【結界】と【魔闘技】を発動したまま、一日過ごせる程にスキルを使いこなせる様になっていた。
ハクアが近付く気配に気が付いたのか、モンスターがこちらを警戒し始める。
(青が2、黄色が混じった青が3……か、なら)
ハクアが脅威度を見て、頭の中で戦闘の流れを組み立てていると、青で表示されていたポイズンフロッグという、中型犬並の大きさの蛙型のモンスターが一匹、ハクアに向かって飛び出して来る。
ハクアはその奇襲にも慌てず、空間魔法のボックスの中から、コロに貰った刀を取り出し、納刀状態のまま右足を前に出し半身に構え腰を落とすと、そのまま刀を自分の顔の横まで掲げる様に、左手は鞘に、右手は持ち手を持ち上げる。
そして、ポイズンフロッグが一際大きく飛び上がり、間合いに入った瞬間、前に倒れ込む様に一気に距離を詰め、刀を上段に構えたまま抜き放ち、ポイズンフロッグを真っ二つに両断する。
水転流抜刀術奥伝【落水】
通常横凪ぎに払う抜刀を、突進しつつ上段から行う事で、通常の抜刀の威力に、突進の力+刀の重さ+重力加速まで加えた斬撃を放つ事が出来る業である。
ハクアに向かったポイズンフロッグが両断されるのを見て、他のモンスターもハクアを狙いそれぞれ突進して来る。
それを見たハクアは黄色が混じった方の三匹。
猿の様な姿で両腕だけが異様に発達したモンスター。ズイパーに鈍重の邪眼を使う。
鈍重はデバフの一種で、掛かって仕舞うと一定時間体が重くなりスピードが落ちる物だ。
しかし、強敵とばかり戦い、あまり使っていなかった邪眼では、一匹しか掛からず、無事な二匹がハクアに飛び掛かる。
だが、ハクアは【マヒ付与】のスキルを刀に使い、最初に飛び込んで来たズイパーを浅く傷付け、マヒ状態にする。
そして二匹目のズイパーが、タイミングを少しづらして来た事により、刀での迎撃が間に合わ無いタイミングになると瞬時に判断すると、素早く刀をボックスに入れる。
異様に発達した腕を大きく振りかぶり、叩き付ける様な攻撃して来ようとしているズイパーに、今度は【疫爪】のスキルと風爪を使い、攻撃して来た腕をくぐり抜け、カウンターで足を切り裂き、ポイズンフロッグの所まで駆け抜ける。
「ギギィー!」
後ろをチラリと見ると【疫爪】を食らったズイパーは、足が石化した様で身動きが取れなくなっていた。
(ラッキー♪)
それを確認して前を向くと、眼前にポイズンフロッグの舌が迫って来ている。その舌を慌てて【結界】を貼り軌道をずらすが、ハクアの肩を掠めHPを軽く削り取る。
(意外に攻撃力高いな。こいつ防御の少ない攻撃タイプか……)
ハクア達はここまで遭遇戦に馴れる為に、ステータスを確認せずに戦って来ていた。その為、ポイズンフロッグからの初めて受けたダメージに、多少の驚きが有った。
(ステータス確認しないって言うのは、これが怖い所では在るな)
しかしハクアはダメージを受けても、治療魔法を自身に掛けながら、体を止める事無く、ポイズンフロッグへと肉薄していく。
風縮を使い、距離を一気に詰めるとその勢いを全て拳に籠め【結界】を纏わせた拳で【疫崩拳】を叩き込む。
ドゴォッ! そんな轟音と共にポイズンフロッグは吹き飛び、壁に当たった所でHPが完全に無くなった。
(うん。これなら腕への負担が少なくて良いな)
攻撃した腕の調子を確認しながらも、鈍重状態になっているズイパーが自分に向かって、石を投げようとしているのを把握する。
「ギッギィー!」
気合いの鳴き声と共に、石を投げ付けて来たズイパーの攻撃を避け、投擲体勢で固まるズイパーに向かいながら刀を取り出す。
そして、風縮で距離を一気に詰め、擦れ違い様に、一瞬にして刀で全身を切り裂く。
水転流刀術皆伝【霧雨】
傘を差していても体が湿るかの如く、回避不可能な斬撃スピードで相手を一瞬にして切り裂き、血塗れにする剣技である。
(残りは二匹、いや一匹か?)
【霧雨】で斬り付けたズイパーのHP全損を確認すると、他のズイパーに目を向ける。
【疫爪】で攻撃したズイパーはどうやら石化だけで無く、猛毒状態にもなっていた様でそのまま倒れていた。
(今まで日の目を見なかった【疫攻撃】系が、雑魚相手だとここまで光るとは……)
『シルフィン:貴女は本来なら強い種族で、出会いたく無い敵ですからね』
(だよね。状態異常効かない位の強敵と当たりすぎ何だよ! 私、雑魚相手なら意外に有能だった件!)
今までの戦闘と違い余裕があるのか、女神と話しをするハクア。
そんなハクアに対し、マヒの解けたズイパーが、怒りの形相で突進ふる。
そんなズイパーに対し、今度は呪いの邪眼のを試しながら攻撃を避ける。
呪いの邪眼は相手のステータスを下げる効果のある物で、どうやらそれも上手く掛かった様だった。
(少しだけど、先よりもスピード下がってるな。それに脅威度の色が完全な青に変わってる)
ハクアはそれを確認しつつ、ズイパーの大振りの攻撃を、刀で横から弾きつつ今度はゆっくりと近付いてゆく。
(なるほどね。腕が発達した分、懐に入られるは弱いのか)
ギルドで買ったモンスターの情報に書いていない情報を集めつつ、一対一になったズイパーの情報を引き出して行く。
そして、もうこれ以上収穫は無いと判断したハクアは【霧雨】でズイパーを切り刻み戦闘は終了した。
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