第122話早い話がバイキ〇トだよね!

「「つらたん……」」


 私とアクアが声を揃えて言うと皆が同意する。


 私達は現在塔八階の外周部分に居る。

 本当なら何時もの様に集中力が切れ欠けて来た段階で休憩するが、次は集団戦闘。しかも相手を強襲するとなれば休みなど自由に取れないだろうから。と、言う理由で何時もより休憩を遅らせてみた。


 とは言え、もう少し早く休憩しても良かったな。私のやる気ゲージが無くなる。


「ハーちゃんじゃ無いけど疲れました」


 何かなその言い方?


「そうですね。ご主人様では無いですけど疲れました」


 だから何その言い方!?


 〈日頃の行いです〉


 心の中にツッコミ止めて!?


 〈止めても良いんですか?〉


 すいませんでした。それは寂しいです。


「まさか、こんなに疲れるダンジョンとは思わなかったね」

「確かにもうちょっと簡単に行けると思ったかな」

「勝手が違うから、精神的に凄く疲れます」

「結衣ちゃんは、全体的にもう少し周りを見た方が良いよ」

「うっ、頑張ります」


 まあ、精神的に疲れる理由も分かるけどね。

 何せ一階の一本道は良かったけど二階、三階と大広間の戦闘が続いた。

 まさか大広間タイプは入ると出入口が閉まるとは思わなかった。ダンジョン系のゲームで良くあるタイプを自分が経験するとは……現実でやられるとクソですな。


 お陰で私と結衣ちゃん、エレオノ、瑠璃、アクアの五人で様子を見る為、先に入ったから扉が閉まって大変だった。


 いや、マジで。

 扉が閉まってモンスターが出た辺りで、結衣ちゃんがパニくったり、アクアがいきなりあきらめモードに入ったりと阿鼻叫喚だったね。

 正直結衣ちゃんのギフト【存在強化ブーステット】が無ければ危なかった。


 このギフトは任意の対象の魔法や武技を、MPを使い二倍の威力に引き上げる事が出来るらしい。


 まあ、早い話がバイキ〇トだよね!


 このギフトの弱点としては、一度使うと二分間のリキャストタイムが在る事とMP依存と言う事だ。


 とは言え、一見地味だけどMP消費はたったの10だし。

 二分に一度、二倍の威力の攻撃がランダムで向かって来るとか怖すぎる。味方だから良いけどね!


 さっきもエレオノとのレゾナンスを強化して貰ったけど、正直引く位の威力になったし。


 まあ、四階からは普通の迷路タイプだったんだけど……これがまた酷かった。


 罠のオンパレードにモンスターとのエンカウント率の多さ、敵自体は私と同じか少し下位の雑魚だし、強くても私より少し上程度だから苦労はしない。って、誰が雑魚だし!?


『シルフィン:ノリッコミとか、まだまだ元気ですね』


 テンション上げないとやってらんないだけです!


 そんな訳で、一匹ずつは強く無いが兎に角数が多い。しかも上に行くに連れて加速度的に増えている。


 いや、まあ、知ってて選んだけど。まさかここまで面倒だとは……。

 ただまあ、良いことも結構あった。


 その内の1つは少し歩けばモンスターに出くわすので、遭遇戦の経験値は皆なかなか上がったと思う。

 最初の方は会う度に軽い混乱状態だったけど、この階に来るまでかなりの数をこなしたから冷静に対処出来てるしね。


 そして、弱いとは言え敵の数が多いから、皆レベルがぐんぐん上がって行く。


 まあ、流石にフロストは頭一つ抜けてるからそんなでも無いけど。


 それに敵の数が多いと言う事は、私とヘルさんのパワーアップにも繋がる。

 しかも通常なら素材や魔石は幾らかでも売って、生活費にあてなきゃいけない所を、私達はカーラに売った紙の利権が在るから必要無い!


 なのでヘルさんのパワーアップに注ぎ込める訳なのだよ!


 お陰でヘルさんのステータスは結構上がって私を軽く追い抜いております。


 悲しく何て無いんだからね! 私だってスキルのポイント貯まっていってるし! まだ何があるか確認はしてないけど。


 そう、私は未だにスキルの確認はしていなかった。

 それどころか勇者退治の強化ポイントも使っていなかった。その理由としては久しぶりに動くので、取り合えず今現在のステータスでやってみたかったと言う事。もう一つは未だにどのステータスを上げるか迷っているのだ。


 上げたいステータスは在るけどイマイチピンと来ないんだよね?


 そんな風に考えているとコロが私に話し掛けて来る。


「ハクア? 武器使って無いけどやっぱりダメだったかな?」

「あぁ、違う違うそんなんじゃなくて。今は取り合えず自分のスキルの確認と、休んでる間の皆の連携を特に頭に入れてただけだよ。私も次からもっと本格的に攻撃する予定」

「そっかなら良かったかな」

「つー訳で、次敵が少なかったら私に一人でやらせてみてくれる?」

「ご主人様一人でですか?」

「うん。多対一も少しは経験積んどきたいからね」

「分かりました。しかし、マスターが危険だと判断した場合は介入するのでご容赦下さい」

「了解」

「じゃあ、ハクアの次は私もやる!」

「私もエレオノちゃんの後にやります」

「二人も?」

「うん。だって私も前衛だからね。孤立する可能性も無くは無いし」

「私もです」

「それなら私もですかね先輩?」

「ボクもかな?」

「いや、二人には後衛組の守りをフロストとやって貰うから、前に出過ぎても困るかな?」

「わかったかな」

「それに結衣ちゃんは人型のモンスターは苦手でしょ?」

「う……、はい。どうしても人の形をしていると抵抗が」

「まあ、普通はしょうがないよ」

「でも、皆さんは平気なのに」

「私と瑠璃は頭のおかしい友人のお陰で感覚狂ってるから」

「ハーちゃんとみーちゃんは同じ感じだと思いますよ」

「失礼な!」


 何て失礼な事を言うんだ! 人をあんなのと同列に語らないで欲しいね!


「何考えてるかは分からないですけど、多分みーちゃんも同じこと言うと思いますよ?」


 想像は出来るよね。


 こうして一通り確認をして一休みした後、私達は八階の攻略に取り掛かった。

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