第121話あぁ、異世界あるある何だこれ。
ギルドを出た足で私達が向かったダンジョンは、全10層からなる塔型ダンジョン、カシムの塔だった。
ダンジョンは最初に踏破した者が命名権を獲得するので、こうして人の名前が付くことが多いのだとか。
そしてこのカシムの塔は推奨ステータス400以上のダンジョンで、通常のダンジョンよりも探索範囲が狭く、モンスターが密集しているので、今の私達なら一匹一匹は対して苦労せず倒せるが、纏まった敵を相手にするには丁度良いレベルだった。
今回ここを選んだ理由はこの先に控える対魔族戦を見据えた為だ。
戦闘の経験値も去ることながら、集団戦闘にも慣れていない為、狭い場所での密集戦闘を行うのが目的だ。
「──と、言うわけで本来ならこんな狭いダンジョン、この人数で行くなんてお互いの邪魔にしかならないけど、今度の集団戦闘はこれ位密集して戦う可能性も十分に有り得るから、お互い同士討ちには気を付けるようにね?」
私がこのメンバーからフレンドリーファイア何て食らったら死んじゃうからな!
「了解ですハーちゃん!」
「フリじゃねーぞ」
良い笑顔でサムズアップする瑠璃に思わずツッコミを入れる。
いや、マジだからな。
「分かってますよハーちゃん」
「マスター、瑠璃そろそろ行きますよ」
「「あっ、はい」」
「二人ともそこは大人しく従うんですね」
塔の前で漫才を始めた私達がヘルさんに諌められる事で、ようやく全員塔に入る準備を完了させる。
「ハクアの武器は結局満足のいく良いのが作れなかったんだよね?」
「うん。ハクアごめんかな」
「気にしなくて良いよ」
勇者との戦いの最中に全ての武器を壊されてしまった私は、コロに新しい武器の作成を頼んだが、ダンジョンにも市場等の店にもこれといった素材が無かった為、骸や暁、宵闇の様な武器は作れなかった。
それでも一応全ての武器を溶かして素材に戻す事で、間に合わせの武器は作ってくれたのだが、コロの満足出来る物では無かったらしい。
コロに聞くまで知らなかったが、この世界では一度素材として使った物は、溶かして作り直しても元の武器の劣化版しか作れないのだと、コロから説明されたのは軽い驚きだった。
「一応間に合わせで作ったけど本当にこれで良かったのかな?」
「うん。オッケーだよ」
「やっぱりハーちゃんは刀がよく似合いますね」
コロがそう言い私が受け取った武器は瑠璃の言う通りの刀だった。
久しぶりに使うけどこの感じ、やっぱり良いな。
水転流は様々な武器の業が在るが、私が好んで使っていたのは徒手空拳の業と刀による物だった。
刀は力を入れなくても切れるから良い。皆にはそう言って特に刀の稽古は進んで修めていたのだった。
因みにもう一つの理由としては刀が格好良いからである。
誰にも言わなかったが恐らく皆にはバレていたかも知れない。
「おお、流石コロいい感じ」
受け取った刀を抜き、ちょっと上機嫌で感想を言う。そして「ハッ、フッ!」と、馴れた様に刀を振るう。
「うん。重さも私好みだな。欲を言えば手元にもう少し重さが欲しいけど──って、皆どうしたの?」
「いや、少しびっくりして……ハクア何で今まで短剣使ってたの?」
「そうですよご主人様。初めから刀の方が良かったのでは?」
「最初のギルドには刀無かったから何となくそのままね。それにこの世界に刀が在るとも思わなかったし」
「ふむ。異世界人によく有る事じゃな」
あぁ、異世界あるある何だこれ。
「おねちゃん格好いいゴブ」
「うん。格好いいですハクア先輩」
「ありがと。じゃ準備も出来たしそろそろ行こうか」
刀の具合を調べている間に全員の準備が整い、警戒しながらも塔の中へと入る。
塔の中は思ったほど通路も狭くなく、モンスターは取り合えず確認出来る位置には居なかった。
外周には居ないって聞いてたけど本当みたいだな。
この塔は外周に沿って歩き、中央へ続く扉を潜り抜け中央を踏破、その後また外周に沿って歩き階段を昇る。と言うルートになっている。
上階に向かうほど塔が先細りになり、中央の部屋のモンスターの密度が高く、最上階はボス部屋だけ。と、なっていると事前に説明を受けた。
モンスターは中央部からは出て来ないらしいけど警戒はしとこう。それにこの塔は人が入る度に中央部が変わるらしいからね。
この塔の一番の問題がそこである。
この塔はパーティーが一組入ると、踏破するかアイテムを使い逃げ出す。
もしくは全員が死ぬまで、塔の入り口が開かない様になっている。その為この塔に入るにはギルドに申請する決まりになっていた。
そしてこの塔は人が入る度に中央部の形を変え、罠や宝箱、モンスターが毎回違った配置で出てくる。
そしてその形は複雑な迷路で有ったり、一本道、はたまた大広間の様になり、モンスターがたむろしている場合も有るのだ。
さて、それじゃ久しぶりにやりますか!
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