第112話(チッ! 駄女神共、後で話しつけるからな)

「ははっ! マジかよ! 誰かと思ったら瑠璃ちゃんに白亜ちゃんじゃん」

「馴れ馴れしく人の名前何ぞ呼ばないでくれるか?」

「……私も貴方には名前呼ばれたく無いですね」


 名前を呼びながら二人の身体を舐めるように見回す政人にそう言って拒絶を示す二人。

 ──だがそれにもかかわらず政人は更に露骨に二人の身体を見て下品に嗤う。


「つれないな~二人共。こんな異世界で運命的に再会したのにさ~。こっちに来なよ。俺、これでも勇者様だからさモンスターから守ってあげるよ。まあその代わり、チョットは良い思いさせて貰うけど、それはほらお互い様だと思わない? 持ちつ持たれつみたいな。命に比べれば軽いものでしょ? そっちのお友達も一緒にさぁ優しくしてあげるよ」

「ははっ! 気持ちの悪い口を閉じろよ下衆!」

「ああ! 何だと、クソアマ! 人が優しく言ってやりゃぁ、調子に乗りやがって! もういい、テメエら全員俺の奴隷にして、好きな時に好きなだけヤってやるよ! ああ、そうだよ。それが良い!」


 そう叫びながら狂ったように嗤う政人に結衣は震えを強くする。

 それを感じたハクアは結衣を強く抱き締め「大丈夫」と、一言耳元で囁き結衣をヘルに預けながら政人を睨み付ける。


(はぁ、一人で来るべきだったかな?)


 と、少し前の事を思いながら考えるのだった。

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 カーラに結衣達が依頼をこなす為に街を出たとの報せを受けたハクア達は、東西南北に別れているアリスベルの北門に向かっていた。


(クソ! まさかここまで早く動くなんて。完全に油断した)


「ご主人様やっぱり疑っているんですか?」

「絶対。とは言え無いけど限り無く疑ってる」

「なら私が空から先行して場所を割り出します」

「分かったお願いヘルさん」


 ハクアがヘルに頼むとフリーウィングを呼出し、かなりのスピードで飛んで行く。

 ハクア達がそれを追って北門に着いたタイミングで、丁度良くヘルが偵察を終え帰って来たので走りながら報告を聞く。


「ヘルさん! どうだった?!」

「結衣は発見しました。が、もう一ヶ所別の所でも戦闘が発生している様です」

「もう一ヶ所?」

「はい。片方が結衣なのは確認しましたが、流石にもう片方迄確認は出来ませんでした。どうしますかマスター」


 ヘルの言葉に少し考え。


「二手に別れる。私、ヘルさん、瑠璃、アリシアで結衣ちゃんを助けに。クー、エレオノ、コロ、アクアはもう片方の戦闘場所に行って。第一が偵察、救援に入るなら各自の判断に任せる。ただ、見ず知らずの誰かの命より皆の方が大事だから引き際は見極めて! 最悪援護に入った相手は見捨てても良い」

「ハクア!?」

「何と言われてもソコは譲らない」

「分かった」

「クーそっちの指揮は頼んだ」

「うむ、任せるのじゃ! 伊達に長年ふんぞり返っていた訳では無い所を見せるのじゃ!」


 こうして結衣と合流する前にハクア達は二手に別れ、クー達は結衣とは別の場所で戦闘が起こっている所へ、ハクア達は結衣の救援に向かった。

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「えっ? なになにもしかして白亜ちゃん一人で俺とやる気? 無理無理、さっきも言ったけど俺勇者だぜ? ああそれとも「私を好きにして良いから皆には手を出さないで」的な? そんなん赦す訳ねーじゃん。お前ら全員俺の奴隷にするってもう俺決めちゃったんだからさー。ああそっか、奴隷だと人聞き悪いよな? じゃあアレだ。ペットだペット! ペットの躾もご褒美あげるのもご主人様の大事な役目だもんな!」


(……よく喋る奴だな。それよりも)


 名前:柏木 政人

 レベル:15/40

 位階:1

 性別:男

 種族:人間

 クラス:盗賊

 HP:900

 MP:500

 物攻:450

 物防:300

 魔攻:350

 魔防:250

 敏捷:600

 知恵:250

 器用:590

 魔法:

 火魔法LV.6、暴風魔法LV.3

 称号:

 異界からの勇者、快楽者

 スキル:戦闘系スキル

【闘気LV.5】【結界LV.2】

 技能系スキル

【集中LV.3】【野生LV.1】

 補助、その他スキル

【魔力操作】【MP自動回復LV.2】

【女性特攻】

 ギフト

【??????】

 スキルポイント4000


(スキルは育って無いけどステータスが高いな。【女性特攻】は女へのダメージupって所か? ヘルさんギフトって?)


 〈スキルはご想像の通りです。ギフトとは勇者が女神様から授かる自分の特性に合った特別な能力です。一度使えばどんな物なのかもわかるのですが……〉


(チッ! 駄女神共、後で話しつけるからな)


『全員:……はい』


(ここは卑怯だ何だ何て言わずに全員でボコるのが得策かな?)


 ハクアは未だに何事かを喋っている政人の言葉を聞き流し、冷静に考えを纏める。


 しかし……。


「とは言え、流石の俺でもこの人数は骨が折れるし、大サービスでここは俺のとって置きを見せてやるよ」


(!? 何か不味い!)


「全員防御! ヘルさん結衣を連れて逃げ──」

「させるかよ!【愚者の領域】」


 政人が叫んだ瞬間、ハクア達を取り囲む様に辺りがドーム状の黒い壁に囲まれ、ハクアは自分の身体から急激に力が抜けていくのを感じる。

 仲間を見ると皆が同じ様に身体から力が抜けた様に地面に膝を着いている。


(これは……何だ?)


「くはっ、あはははははははは!」


 力が抜け地面に膝を着くハクア達を見下ろしながら、政人の狂気に満ちた嗤いが辺りを包み、耳障りな声が嫌に大きく響いていた。

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