第111話『シルフィン:私は担当では有りません!』
神城 結衣は一人森の中を走り回っていた。
時折後ろを振り返っては自分を狙う襲撃者が居ない事に安堵し、少しでも物音がすると全身をビクッとすくませ過剰に反応しては、立ち止まっては行けない――――と、自分に言い聞かせまた走る事を繰り返して居た。
(何で……何でこんな……)
疲れが出れば弱気も襲って来る。
幾ら勇者として召喚され肉体が強くなったと言っても、何処にでもいる普通の女子高生だった結衣には、常に狙われながら追い回される事はとても耐えられる物では無かった。
(もう追って来て無いかな?)
精神的に疲れきりその事が体力までも急速に奪っていく中、自分に都合の良い事を考え速度を落としてしまう。だが、それを待っていたかの様に背後から魔法が放たれた。
結衣のすぐ側で爆発を起した魔法は、その爆風で結衣は紙切れの様に吹き飛ばされ、近くの木に背中を打ち付ける。
「きゃっ! あっ、ぐっ」
痛みに喘いでいると、そんな暇など与えないと言う様に今度は矢が襲って来る。
だが、その矢は背中を打ち付けた木や自分の近くの地面へと刺さり、何とか助かった事に安堵する暇も無く結衣はまた逃げ始める。
最初は外れた事に喜んでいたが流石に同じ事が何度も続けば、外れているのでは無く外して遊んでいるのだと嫌でも理解してしまう。
しかも時折肩や足などを射抜かれ、その度に自分で治療魔法を使い治しているのでそろそろMPまでも尽き掛けていた。
治療の間、攻撃が来る事は無かったのは幸いと言うべきか、しかしそれもいつまで相手が続けてくれるのかも分からない。
治療が終わり逃走を始めればまた矢が襲ってくる。先程からそれの繰り返しだ。
傷を治せても、傷を負った際の痛みの記憶も感覚も鮮明に覚えている。
幾度となく続くそれは確実に結衣の精神力も削っていく。
(早く相手を見付けないと)
圧倒的な恐怖と焦燥の中、相手を見付け何とか反撃に出る。それだけが結衣が唯一持っていられる希望だった。
しかし、そんな結衣の考えを嘲笑うかの如く、矢も魔法も背後からだけで無く様々な方向から飛来し結衣に襲い掛かる。
「キャアァァア! あっ、うぐっ、はっあ」
【魔闘技】と【結界】を使い何とか攻撃を耐えるも、結衣のHPは無くなる寸前まで追い込まれてしまった。
そして、もう身体を動かす気力すら無くなったそんな結衣の前に、柏木 政人はゆっくりと歩いて現れた。
「クッハハハハハ。良いね。その格好そそるよ! 読モの公開ストリップってか? あははははは。どうだ! 今から俺の物になるって誓えばこれから毎日可愛がってやるよ」
「うっくっ! だ、誰が貴方なんかに、あぐっ!」
「あ゙あ゙? 誰がそんな言葉言えって言ったよ! お前が言えるのはどうか私の事を可愛がって下さい。だけなんだっよっと」
政人は答えた結衣の腹を何度も踏みつけながら言葉を重ねる。
「どいつもこいつも俺の事を馬鹿にしやがって! お前みたいな女は俺に媚売って滅茶苦茶にされれば良いんだよ! はっ、良い事考えた。あははは、そうだ。今からお前を街のド真ん中で滅茶苦茶にしてやるよ。良い考えだろ? おらっ、街の人間全員の前で何度も何度も滅茶苦茶にして抵抗する気力も無くなってから殺してやるよ!」
政人はそう言うと攻撃によりボロボロになった結衣の服を掴み力任せに引きちぎる。
「やっ! やめて! やだ!」
上着の前を引きちぎられ下着が顕になり、反射的に手で隠そうとするもそのまま両手を押さえられ押し倒される。
「くっふふふ。どうせ後でやるけど、やっぱ我慢できね~。ここで一回味見でもしとくか」
「や、やだ! やめて! やめてよ!」
「うるせーよ! おらっ」
「あっ……」
自分の下で暴れる結衣の顔を殴り付け今度はスカートに手を伸ばし強引に引きちぎる。
もうダメだ。そう思った時に浮かんで来たのは何故かこんな異世界で偶然再開した先輩の言葉。
(諦めちゃダメって言われたのにもうダメみたいです。これでも私、頑張ったんだけどな……)
もう身体に力が入らない。
抵抗する気力すら無くなった結衣の中で、この世界で出会った、再開した人達の顔が過ぎる。
(ありがとうって言いたかったな……)
そして、下着姿になった結衣の最後の砦である下着迄もを剥ぎ取ろうとした時、政人は何かに気が付き結衣の上から素早く退避する。
政人が結衣の上から居なくなった瞬間、政人の頭が在った位置を矢が貫き、そのまま木へと激突し轟音を響かせて半ばからへし折れる。
へし折れた木は政人の方へ向かって襲うかの様に倒れる。
チッ! そう舌打ちしながら更に回避する政人の背後から白い何かが近付き、政人の無防備な背中へ攻撃を痛烈な一撃を食らわせる。
「がはっ!」
政人はとっさに【結界】を使って攻撃を防御するが、襲撃者の攻撃はそれを貫通して政人の背中に突き刺さりダメージを与えた。
政人が攻撃を受けながら見た光景は遥か上空から何かが飛来し、自分の獲物である結衣を連れ去り自分を攻撃した何かと合流するものだった。
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「大丈夫結衣ちゃん?」
「白亜先輩?」
「そうだよ」
私が答えると結衣ちゃんは私に思いきり抱き付き泣き始める。
いかん! こんな状況だけど下着姿の年下美少女に抱き付かれてると思うと結構来るものが有りますよね!?
〈……マスター〉
あかん! 聞かれてた!? でも、かなり酷い状態では在るけど何とか間に合ったみたいで良かった。
〈今更取り繕っても遅いですよ〉
すいません赦して下さい。ここから真面目に行きます。
「ご主人様」
「うわっ! すいません!」
「何を謝っているんですか?」
「何でもない。何でもないよ?」
「後でゆっくりと話しましょう。それよりアレは知合い何ですか?」
追求逃げ切れるかな?
「出来れば知り合いだとは言いたくないけどまあ顔見知り?」
「……私も顔見知りです。……多分?」
「じゃあ、アレが勇者何ですか?」
「そうみたいね」
勇者の選別に一言物申したいけど。
『シルフィン:私は担当では有りません!』
『ティリス:女の敵ですね? 殺りましょう』
おい! 女神共それで良いのか?
『全員:OKで』
全会一致!? まぁいいか。私も許すつもりは毛頭無いしね。さてこの男どうするかな?
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