第110話「……私の上位互換じゃね」
「マスター……ありがとうございます。これからは共に戦う仲間としてよりマスターの為に働きます」
私に向かってそんな言葉を言ってくれるヘルさんに私は心の底からこの計画を考えて良かったと思った。
「これで……これからはマスターに物理的な突っ込みも出来ますね」
…………ん? ナニカキコエタキガスルヨ?
「あっ、そうですね。ご主人様が暴走した時に一緒に止めてくれるのは有り難いです」
「うんうん。ハーちゃん無茶ばっかりですもんね」
「はい」
あれ? おかしくない。早まったか!?
「冗談です」
ヘルさんが冗談を……。
しかし、ヘルさんはそう言いながらもおもむろにファイティングポーズを取ると、何故か完成度の高いシャドーボクシングを始める。
「本当に冗談何ですよね!!」
「勿論ですマスター」
良い汗かいた風に額を拭いながら無表情で言うヘル様。
(ヘルさんああ言ってるけど、絶対本気だよね?)
(うむ。ヘルは今まで体が無かった分、主様に思う所があっても実力行使に出れなかったからその反動じゃな)
(ゴブ)
五月蝿いよ外野!?
〈大丈夫ですよ。本当に冗談ですから〉
と、言うかヘルさん何か性格変わってません!? って、あれ? 何で今までみたいに頭の中でも聞こえるの?
〈マスターとは深く繋がっているので大丈夫なようです。しかし、流石に他の仲間までは出来ません。それと、性格に関してはこの機体の感情データが豊富な為でしょう。私はマスターに感情を与えて戴きましたが、表現の仕方までは分かりませんでしたから。この身体に慣れれば表情も感情もより豊かに表現出来るでしょう〉
ふむふむ
「しかし、いきなり冗談何て言うからビックリしたよ」
私がそう言うとヘルさんは無表情ながらも顔を赤らめて照れているようだった。
おう、なにこれ可愛い。
「おお、ヘルが赤くなっておるのじゃ」
「後期の方に造られた機体なだけあって、感情ベースや表情等は豊富な様です」
「ともあれ、改めてこれからもよろしくお願いします。ヘルさん」
「ええ、よろしくアリシア。他の皆さんも」
ヘルさんがそう言うと皆口々によろしくと言い和やかな感じになる。
そして私達はヘルさんが肉体? を、獲た事で一部のスキルの仕様が変わったり、新しく増えたらしいので確認する事にした。
そう言えば、ヘルさんはロボ? だからその辺レベルとかどうなるんだ?
〈それを含めての確認です〉
すいません。先走りました。
「【可視化】はそのまま使えるので私のステータスを表示します」
名前:ヘル
性別:女性型
種族:機人種(生体型)
強化:1
HP:∞
MP:1000
物攻:150
物防:150
魔攻:150
魔防:150
敏捷:150
知恵:500
器用:150
運 :50
武装:
フリーウィング
固有技:
魔創
称号:
使い魔
スキル:戦闘系スキル
【魔闘技LV.1(新)】【魔力砲LV.1(新)】
【魔力弾LV.1(新)】【結界LV.1(新)】
技能系スキル
【鑑定士(極)】【見切りLV.1(新)】
【魔創LV.1(新)】【飛行LV.1(新)】
耐性系スキル
【毒無効(新)】【魔甲殻LV.1(新)】
【精神攻撃無効(新)】
スキル補助系
【武器の扱いLV.1(新)】
攻撃ダメージUP系
【魔力ダメージupLV.1(新)】
【射撃LV.1(新)】【格闘LV.1(新)】
補助、その他スキル
【全種族言語理解】【スキル大全】
【俯瞰(極)】【聞き耳(極)】
【念話】【可視化】
【共有空間】【透視LV.5】
【並列思考(新)】【MP自動回復LV.1(新)】
【自動修復(新)】【自己強化(新)】
【武装呼出し(新)】【武装解除(新)】
「うわ、滅茶苦茶増えてる」
「へぇー、これが【可視化】って物なのね」
そういや、カーラには初めて見せたっけ?
「今から説明します」
「「お願いします」」
「はい。まず、機人種にはHPレベルは無い様です。その代わりクーの【不死】と同じで、心臓に当たる部分に在る存在結晶を破壊されると私と言う存在が居なくなるようです。MPが切れると機能停止する為、MPは多い様ですね。そして、一度MPを使いきると10%回復するまで機能が停止します。また、レベルの代わりに存在結晶に魔石を取り込む事で【自己強化】が出来る様になり、ステータスが上がり。魔物の素材を取り込む事でスキルを覚えられる様です」
「……えーと、あのさ? それって──」
「……私の上位互換じゃね」
だって私のはステータスまで上がらないもん。
「アクアだけの【飛行】スキル……ゴブ」
「……我も今の所唯一の長所だった【不死】が被った!?」
私とアクア、クーが三人揃って膝から崩れ落ち、皆が同情的な目で見つめる──が、ヘルさんは安定のスルーで説明を続ける。
「次に固有技とスキルに在る【魔創】ですが、これが機人種の戦闘スタイルです。【魔創】は魔力を使い自身の近接、遠距離武器と防具を作り出す能力でレベルが上がると耐久性や距離、威力等が上がります。こんな風に──」
ヘルさんがそう言うと、スキルを使ったのか今まで裸にシーツを掛けていただけの体に、美少女アニメ風のパイロットスーツが光と共に現れる。
「あぁ、今度はボクの【錬成】スキル……」
コロナが仲間に加わった。
しかし、ヘル様のスルーは華麗に続く。
「次の【魔力砲】【魔力弾】は機人種の基本攻撃の一つですね。自分で作った遠距離武器で打ち出す。MPを使った魔力攻撃です。
【魔甲殻】はレベル×3%のダメージ軽減スキルで最大で30%のダメージ軽減が出来ます」
「私は後衛タイプなので羨ましいですね」
「ありがとうございます。後の【並列思考】は【共有空間】を使い何時もの様に相手のHP、MPを表示出来ると思って頂ければ良いです。【自己強化】は先程話した通り。【自動修復】は私の機体が生体型なので見た目は普通の人間の様な肌ですが人工スキンで出来ているので、時間は掛りますが存在結晶さえ壊れていなければ修復されます。【武装呼出し】は機人種用の外部パーツが在る場合、持ち歩かなくても装着する事が出来ます。【武装解除】はその逆ですね」
「このフリーウィングって言うのがそう?」
エレオノがそう聞くとヘルさんはおもむろに後ろを向き「転送」と唱える。
するとヘルさんの肩甲骨辺りが光りその光が次第に形を変えていく。
光が収まるとヘルさんの肩甲骨辺りに、飛行機の羽根の様な機械が取り付いている。そして今度は羽根の噴射部分から光の出力の様な物が吹き出し、ヘルさんの身体を持ち上げ宙に浮かぶ。
それを見たアクアが自分よりも格好いいと更に落ち込んでいたので頭を撫でておく。
確かに格好良い。くっ、流石新しい属性のロボ娘だぜ。
「これが今ある外部パーツ、フリーウィングです」
「おお、格好いい」
「後、最後に今まで皆に話していた【念話】のスキルが一方的に伝えるだけの一方向になりました」
そんな訳でヘルさんのステータスチェックが終了した。
因みに私達四人は立ち直るまでの間、皆にほっとかれた。
世間が冷たい。しくしく。
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「気は済んだ?」
「ああうん、ネタの時間をありがとう」
「「「ネタだった!?」」」
「貴女達いつもこんななの?」
「大体ね」
そんな話をしていると部屋の戸をノックしてデミグスが礼をして入って来る。そして、何かカーラに耳打ちし。
「ハクア貴女が気にしていた奴等が、今宿を出たそうよ」
「なっ!?」
タイミングをずらしてきた? いや、そんな事より。
「いいわ。渡すものは渡したし行ってらっしゃい」
「ありがとカーラ! 皆行こう」
こうして私達は足早にカーラ邸を飛び出して行った。
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