第109話「「ご主人様(ハーちゃん)の趣味じゃ無いんですか?」」
「今私達はカーラの元に私の頼んだ物が届いたと聞き、一路カーラ邸へと来たのだった!」
「ハーちゃんいきなり誰に何を説明してるんですか?」
「まあまあ」
ここに来た目的と道中安定の馬車内でのお楽しみタイムにテンションが上がりまくった。とは、流石に言えんな!
でも、何がとは言わないけど今回もごちそうさまでした。
そんな訳でカーラ邸へと着いた私達は早速屋敷へと入る。すると何故かカーラが玄関まで出迎えに現れ私達に挨拶をする。
「いらっしゃい。早かったわね」
「カーラこそ、こんな所まで出迎えに来るなんて珍しいね」
「分かってるのにそんな事言うなんて相変わらず良い性格ね。いいわ、こっちよ」
カーラはそう言って私達を広間へと通す。
心なしかそわそわしているのは私の計画がカーラ自身楽しみなのだろう。奇遇だな私もだ!
広間へと入ると何時も並べられている椅子やテーブルが全て片され中央にシーツを被せた物が置いてある。
大きさは私と同じ位か?
〈そうですね。大体同じです。あれは何なのですかマスター?〉
「そうだよハクア。早く教えてよ!」
ヘルさんの言葉に反応したエレオノが私に聞いてくる。
その反応を見たカーラは中央に行くと大変満足そうな顔でシーツを掴む。
「これが……私が競り落とした物よ!」
そう言って勢いよくシーツを剥ぎ取るカーラ。
すると中から現れたのは腰まであるストレートの髪が光の具合で少し青っぽく見える銀髪。
エレオノとは違う感じの銀髪だな。エレオノはどちらかと言うと紫っぽく見えるし。
そして、背丈はやっぱり私と同じ位、顔は作り物の様に綺麗に整っており長いまつ毛が印象的な美少女だった。
「ハ、ハーちゃん!」
「ご、ご主人様!」
瑠璃とアリシアが美少女を見て固まって居たが急に私に向き直って左右から肩を捕まれる。
あれ? 何で!? この反応は予想してなかったよ。
「「遂に人身売買に手を出したんですか!?」」
「そんなんしとらんわ!」
何? 何でいきなりそうなるのさ!? びっくりしたわ。私の信用はどこに行った!?
「って、言うか何であの子裸なの?」
「そう言えば」
「「ご主人様(ハーちゃん)の趣味じゃ無いんですか?」」
私のイメージが天元突破でおかしい件について。
〈日頃の行いです〉
畜生!?
「まぁ、買い取ってそのままだからね」
エレオノの言葉に少し思う所が有ったのかカーラがシーツを美少女の肩に掛けながら言う。
あれ? もしかして皆気が付いて無い?
〈精巧な造りのタイプですからね。これは
「「「ロストソウルズ?」」」
「流石ヘルさん」
〈ロストソウルズは魂や自我を失った機人種の総称です。戦闘や故障等で魂や感情データが消えてしまい、修復出来なかった者、魂を容れられなかった者、そのまま廃棄された者等の事を指します〉
「つむりこの子は廃棄された機人種何ですか?」
「ええ。今回私が競り落としたのは昔戦闘用として造られながらも、魂を容れる前に敵に奪われその人間の様な精巧な造りから、美術品として使われ一度も起動される事が無かった物よ」
「だから綺麗なままなんだね」
「ええ。しかも、噂ではロストナンバーと呼ばれた、最終製造ラインの物らしいわ」
ここで説明しておくと、現在機人種はその数がどんどん減っている種族である。
その理由は今よりも遥か昔、駄女神達がこの世界を創ったばかりの頃、他種族間での戦争をしていた時にまで遡る。
当時まだ機人種に魂が宿らずただ感情データと人工知能に依って活動していた時、今は邪神と呼ばれている神々の手により、魔法と機械が融合した事で魂を持つ様になった初めての機人種が造られた。
その後も神々は面白半分に様々な機人種を創ったが、その神が討たれ居なくなり、製造方法が分からなくなった事で新たな機人種は産まれなくなった。と、言う事らしい。
『シルフィン:今機人種は限り無く自分達に近いアンドロイドは造っていますがね。流石に魂までは作れないようです』
『ティリス:人工知能と感情データで本人達以外はたいして気になりませんよ。それに機人種自体は故障等する前に新しい体を作ってそっちに魂を移していますから、あんまり減っている訳でも有りませんよ』
そうなんだ?
『ティリス:はい。後、機人種が作ったアンドロイド達を機人種は欺機人と呼んでいます』
何で?
『ティリス:自分達とは違う……と、言う事にしたいんですよ。あんまりそんな風には言わないで欲しいですけど』
そうだね。とは言え魂が在る時点で他者との優劣を付けたがるのはしょうがない事では在ると思うよ。それはある種の本能だから。
『シルフィン:確かにそうですね』
まぁ、話を戻すと今回カーラが競り落としたのはその中でも最後に造られた、謂わばもっとも新しい機体であり人間に近い構造を持っているらしい。
カーラの言った最終製造ラインとはそう言う意味である。
「でもさ、こんなの競り落としてハクアはどうするの?」
「まさか……ハーちゃん。人に近い可愛いお人形さんでお人形さん遊びにを……」
「違うからな?」
何故すぐにそうなる?
「今回競り落として貰ったのは、このロストソウルズにヘルさんを容れる為だよ」
「「「へっ? ……ええぇぇえ!?」」」
私の言葉にカーラ以外の全員が驚きの声を上げる。
まぁ、そうだよね。
〈マスターそんな事が出来るのですか?〉
駄女神には確認したし、何よりも最初の頃に約束したしね。
〈マスター……覚えていたんですね?〉
わお、忘れたと思われてた!?
〈すいません〉
普通に謝られたよ!? はぁ、それより駄女神どうすれば良いの?
『シルフィン:はいはい。っと言いたい所ですが、私よりもティリスに聞いた方が良いでしょう。この子機械に強いから』
ああ、だから居たのか。
『ティリス:気が付いていてスルーだったんですね。まあ良いです。最近そんな扱いもちょっと癖になってきましたから。ハクアさん先輩に言われていたアイテムは?』
うん。ツッコまないからな。もちろんあるよ。
私は予め用意しておいた【付与】スキルが無くても一度だけ付与を行える付与石を取り出した。
意外に高かったけどヘルさんの為だからね。
『ティリス:では、先輩に話を聞いていたので調整は済んでいます。そのまま使って下さい』
私はティリスの言葉に従いアイテムをロストソウルズに向かって使う。
▶付与石を使う対象を選択して下さい。
▶付与石を機械人形に使用しますか?
はい←
いいえ
▶機械人形に付与する物を選択して下さい。
どうすれば良いの?
『ティリス:ヘルと一緒に使い魔を付与する……と念じて下さい』
ヘルさん。
〈分かりました〉
▶使い魔ヘルを機械人形に付与しますか。
はい←
いいえ
▶付与石を機械人形に使用しました。
▶機械人形に使い魔ヘルを付与する事に成功しました。
『ティリス:上手く行きました。これで大丈夫です』
「ヘルさん?」
脳内アナウンスが流れ、ティリスにそう言われた私は目の前に立つ少女の姿をした機械人形に話し掛ける。
すると──最初、動く気配の無かった少女の瞼が開き、水晶の様な感情の無い青い瞳が私を見つめる。
そして──。
「マ……ス……タ……マスター」
「ヘルさんだよね?」
「はい。マスター」
その声を聞き私はそのまま駆け寄り思わず抱き締める。
そんな私に続いて他の皆も次々に近より、ヘルさんに話し掛け抱き締める。
ヘルさんも何処か嬉しそうにそれを受入れ話をする姿を見て本当に良かったと私は思った。
ティリスありがと駄女神も。
『シルフィン&ティリス:どういたしまして』
「マスター……ありがとうございます。これからは共に戦う仲間としてよりマスターの為に働きます」
こうして私はヘルさんとの約束を守り、もう一度改めて仲間になったのだった。
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