第74話 「ギブ……ゴブ」

「エレオノ! HPは?」

「大丈夫もう回復したよ!」


 メンバーを二手に分け、私達は現在コボルト・ロードと打ち合いながら戦っていた。

 コボルト・ロードが横凪ぎに大剣を振るいエレオノが屈んで避ける。その隙を突き私は後ろへ回り込み短剣技【バックスタブ】を放つ、するとコボルト・ロードは後ろに飛び仰向けに倒れ私を押し潰そうとする。


 そんなんアリですか!?


 私は慌てて風縮を使い距離を取る。倒れこんだコボルト・ロードはそのまま後転の要領で転がりながら、その勢いで起き上がりそのまま私に斬りかかる。


 クソッ! 見た目ゴツいのにコミカルな動きで味な真似を!


「ハクア!」


 エレオノに呼ばれ視線を移すとアリシア達がエルダーコボルトにフロアの角近くまで押し込まれていた。

 エレオノは私を呼ぶと同時にそちらに向い走り出し救援に向かっている。

 私はコボルト・ロードの目の前でエレオノを追って風縮を発動、影魔法を使いコボルト・ロードとアリシア達を追い詰めようとするエルダーコボルト達を影のドームに閉じ込める。

 しかしそれも実態の無い影なだけあり、すぐ様破られて仕舞う──が。


「ライティング!」


 破られた瞬間、アクアが絶妙なタイミングでコボルト達全員の目を焼く、それでも見えない筈の目でコボルト・ロードは先程私達の向かっていた方に距離を詰めてくる。

 その間にコボルトの群から抜け出したアリシア達と合流し、私はアリシアの手を握りると攻撃の準備に入る。


「アリシア行くよ!」

「はい」

「「ゲイルテンペスト」」


 アリシア達が追い詰められる振りをしてコボルト達を部屋の角まで誘導し、コボルト・ロードの目の前で分かり易く角に移動してきたお陰でコボルト達は殆んほとんど一塊になっていた。

 作戦通り私達のレゾナンスの巨大な竜巻に目が見える様になったコボルト達全員が呑み込まれる。


「グクウウゥウ」

「「ハァァァ!」」


 ゲイルテンペストは発動にMPを50使いその後もMPを消費している間は魔法を維持出来るらしい。


 くっ! キツい、まだ!?


 〈マスター、エルダーコボルト全個体HP全損しました〉


 ▶アクアのレベルが13に上がりました。


 ▶エレオノのレベルが3に上がりました。


 それを聞き私達はレゾナンスを解く、すると竜巻の中にはHPが無くなり倒れこんだエルダーコボルトと、こちらを睨み剣を構えるコボルト・ロードが居た。


【鑑定士】スキル成功

 名前:ガガイア

 HP:1000/2500

 MP:400/800


 風が収まる瞬間、私達は走りだす。


「エレオノ、コロは私と一緒に! アクアとアリシアは回避優先で援護を、アリシアは魔法よりも弓攻撃20メートル以内に入らないで!」


 そう、さっき私がコボルト・ロードの叫びで動けなくなった時、私の後ろに居たエレオノも私と同じく動けなくなっていた。けど、それより遠くに居たアリシア達は動けていた。


 恐らくコボルト・ロードの【呼声】と【咆哮】は同時使用可能で【咆哮】の効果は範囲内にいる人間の足止め効果で範囲は10メートル程【呼声】は吼え終わりと共に来た事から、それまでにキャンセルさせれば仲間は呼ばれない! …………筈!!


 私はその推測を【念話】で伝えながらコボルト・ロードに向かう、しかしそんな行動を黙って見ていてくれる訳もなく、コボルト・ロードは大剣技【地走り】を放ち私を足止めしようとする。


「【天泣】」


 その瞬間アリシアの弓技が発動し、コボルト・ロードの頭上から名前の通り、正に天から降る雨の様に一本の矢が幾重にも分裂しコボルト・ロードに降り掛かる。


「グギァウ!」


 【天泣】を何とか大剣を頭上に掲げる事でやり過ごそうとしているが、無数に降る矢がコボルト・ロードの体を貫きその場に縫い止める。

 その間にコボルト・ロードへと肉薄した私達は、攻撃が終わると共に武技を放とうとする──が、コボルト・ロードは大剣技【回転迅】を使い私達を寄せ付けない。


「うわっ!」

「くっ!」

「わぁっ!」

「アイスバーン」


 回転攻撃を何とか武器で受けダメージこそ受けなかったが、やはり近寄る事が出来ない。しかし【回転迅】を使い私達を遠ざけた瞬間、アリシアが水魔法で足元を凍らせ、氷に着地した瞬間コボルト・ロードは足を滑らせ見事にすっ転ぶ。

 当然私達もそれを見逃さず攻撃を仕掛ける。


「【回天】」

「【蒼天破斬】」

「【穿孔迅】」

「グギァウッ!!」


 私達の攻撃は全て当たるもまだ倒れず、むしろスキル使用直後の隙を狙い私に向い剣を突き刺してくる。

 その攻撃を首を逸らす事で避け、そのままカウンターで前に踏み込みオリジナルスキルの鬼崩剣をコボルト・ロードの胸の中心にブチ込む。

 だが、それでも倒れないコボルト・ロードは私の事を両手で掴み掛かろうとする。


「ハァァァ!」

「【連なり打ち】」


 しかしその行動は左腕をエレオノの【閃光】が斬り飛ばし、右腕をアリシアが【連なり打ち】を使い、一本の矢が五本に連なり弾き飛ばす。

 瞬間私は風縮をコボルト・ロードを蹴りつけながら発動し、攻撃と同時に距離を取る。

 更にコロが風縮の爆発で体勢の崩したコボルト・ロードの右手に【破壊の一撃】を当て大剣を弾き飛ばす。

 大剣と左腕を失ったコボルト・ロードは、アリシアに向い突進を仕掛けるも、アリシアとコロの土魔法で壁を作られそれにぶち当たる。

 私は【鬼気】を使い重くなった体を無理矢理動かし、エレオノと共に双短剣技【強襲アサルト】と剣技【連斬】を壁にぶち当たりめり込んでいるコボルト・ロードの背中に向かって全力で斬り掛かる。


「オォォオォオ!」

「ハァァァァアァ!」


 【連撃】の上位である【連斬】も【強襲アサルト】も、共に連続攻撃を仕掛ける武技で、攻撃を受け中断されない限り使用者のスタミナとMPが続く間は攻撃出来る。

 私達はこの攻撃で全てのHPを削り切る積もりでただひたすらに攻撃にのみ集中する。

 【連斬】も【強襲アサルト】も息継ぎの余裕すら無い連続攻撃故、永遠にも思える程の苦しさを耐えながら攻撃を続ける。だがコボルト・ロードも壁から抜け出し、残った右手で私に殴り掛かる。


「オリャァァ!」


 いまだ攻撃を続け避けられないコボルト・ロードの攻撃をコロが右腕だけを狙い斧で攻撃を加える。右腕を攻撃した斧はその衝撃に砕け散り、その破片はコボルト・ロードの顔や眼に当たり更にひるませる。

 更に、アリシアとアリアが壁を乗り越えその勢いのまま飛び上がり。


「風魔【連なり打ち】」

「ホーリーレイ」


 アリシアは【魔弓】スキルで風魔法を纏わせ貫通力を上げた弓技を、アクアは今も攻撃を続ける私達に当たらないよう、範囲の狭い攻撃魔法をコボルト・ロードの真上から頭を目掛け放つ。

 その攻撃を受けコボルト・ロードのHPは一気に減り。


「グギァァァァアァアギ…………」


 〈戦闘終了です〉


 ▶ハクアのレベルが11になりました。

 HPが620に上がりました。

 MPが373に上がりました。

 物攻が211に上がりました。

 物防が210に上がりました。

 魔攻が135に上がりました。

 魔防が162に上がりました。

 敏捷が260に上がりました。

 知恵が340に上がりました。

 器用が280に上がりました。

【鬼気LV.2→LV.3】になりましました。

【影魔法LV.3→LV.4】になりしました。

【剛力LV.7→LV.8】になりました。

 スキルポイントを20獲得しました。


 ▶アクアのレベルが14に上がりました。


 ▶アリシアのレベルが7に上がりました。


 ▶エレオノのレベルが4に上がりました。


 ▶コロナのレベルが19に上がりました。


 ▶コロナのレベルが20に上がりました


「毎回これとか死ぬ」

「本当ですね。はぁ」

「今回も大変だったぁ~」

「疲れちゃったかな」

「ギブ……ゴブ」


 何とかコボルト・ロードを倒した私達は余りの疲れからその場に座り込み、しばらくだらだらするのだった。

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