第73話さあ! キリキリ働こう!

 〈マスター後ろです〉


「くっ!」

「ご主人様! きゃっ!」

「アクア、コロ! お願い! このおぉぉぉ!」

「エレオノ! アクアは大丈夫かな! こっちはボクに任せて」

「ゴブ!」


 現在私達はボス戦真っ最中で想像以上の苦戦を強いられる事になった。


 クソッ! 正直こんな事になるとは思わなかった! このままだと押しきられる!


 私は数十分前に始まった戦闘を思い返した。

 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

「ここの階段がそう?」

「はい、地図通りです」

「う~ん、長かったのかな? 普通に考えれば早いか」

「多分早い方じゃ無いかな?」

「ボス戦頑張るゴブ」


 おお! アクアさんがやる気だ!


「回復として後ろで見守ってるゴブ」


 違った! これサボります発言だ!? でもあながち間違いでも無いから、強く言えない……だと!? くっ、何て巧妙な! アクア、恐ろしい子!?


「まぁ良いや。ここまででアリシアとアクアの【結界】ならハイコボルトの攻撃防げるって分かったから、コロとエレオノが前衛で私が真ん中に入ってアリシア達がその後ろ。今回は私が二人のサポートに回る」

「分かりました。でも、ご主人様も前に加わった方が押しきれるんじゃ無いですか?」

「だよね? いつもは三人で前衛だし」

「仮にもボス戦だから用心をね」

「そっか、了解かな」

「行くゴブ」


 軽い打ち合わせをし、アクアに強化魔法を掛けて貰い私達は目の前の階段を下りて行く。下りた先は薄暗くあまり中が見通せない。

 私達は用心しながらゆっくりと階段を下りきると、それに反応したかの様に周囲が明るくなり、中央にハイコボルトよりも二回りほど大きい甲冑を来たコボルトが倒れていた。


「ハァッ?」

「えっ? ちょっとハクアどう言うこと!?」

「分かんない、けど全員警か──」


 ドシンッ!


 異常事態故に私が全員に警戒を促そうとした時、不意の振動と共に何処からともなく、ジェネラルコボルトと思われるモンスターよりも更に大きいコボルトが現れる。


 何あれ!?


 〈マスター、あれは30Fのボス。コボルト・ロードです〉


 んな!? 何で!?


 〈分かりません。ですが皆さん気を付けて下ださい〉


【鑑定士】スキル成功

 コボルト・ロード

 名前:ガガイア

 レベル:35

 HP:2500/2500

 MP:800/800

 物攻:610

 物防:470

 魔攻:400

 魔防:600

 敏捷:350

 知恵:400

 器用:380

 運 :50

 スキル:【本気】【頑強】【豪腕】【破壊】【呼声】【押し潰し】【大剣のコツ】【凪ぎ払い】【咆哮】【地走り】【烈空】【閃刃】【疾風刃】【地捲り】【回転迅】


 なっ! こいつグロス達より強いの!? しかも大剣技まで持ってる。


「嘘っ! あれ名持ちなの!?」

「名持ち……??」

「名持ちとはたまに現れるモンスターで、亜種や通常より強力な個体だったりするモンスターですよ」


 様はレアモンスターね。


 〈来ます〉


 ヤバ!


「散開」


 私の声と共に全員がコボルト・ロードの攻撃を避ける為散らばる。

 何とか全員が避けた所へコボルト・ロードの大剣が地面を打つ。すると、その地点を中心に地面が捲り上がり、回避した私達に向かって石つぶてが飛んでくる。

 私とアクア、アリシアはそれぞれ【結界】を張る事で何とかダメージを免れ、コロはアリシアが庇い結界の陰に隠れる。エレオノは【真祖変化】のスキル【霧化】を使い石をすり抜け、そのままコボルト・ロードに向かって【閃光】を放つ。


 【閃光】は居合い切りの様に攻撃を当てそれと共に距離を取る技だ。


「ガァァア!」

「えっ!? うわ!」

「エレオノ平気!」

「うん何とか!」

「ゴブ!」

「ハッ!」


 エレオノが攻撃範囲から出ると同時にアクアとアリシアが、二人同時に【無詠唱】で数十発分のゲイルスラッシュを放つ。


「グカ? ガァァ!」


 しかし、コボルト・ロードはそれに気が付き大剣で二人の魔法を迎撃する。自身にあらゆる角度から迫る数十発のゲイルスラッシュを【回転迅】で駒の様に回り、その殆どを手に持った武器を使い切り落とした。


「嘘っ!?」

「ゴブ!?」

「ハァァァ蒼天破斬」


 隙を突きコロが攻撃を仕掛けるがまたもコボルト・ロードは素早く反応、コロの一撃を受け止め鍔迫り合いになる。


「ハクア! エレオノ!」


 コロがコボルト・ロードとの鍔迫り合いになると同時、エレオノは【穿孔迅】をコボルト・ロードの背中目掛けて放ち、当たると同時に素早く退避する。私は少しタイミングをずらし、エレオノが穿った傷口に鎌鼬を突き入れ、コボルト・ロードの体内でウインドブラストを爆発させる。


「クギァァア!」


 ドパンッ! と体内でくぐもった音が鳴り私の魔法が体内で炸裂する。その攻撃でコロとの鍔迫り合いに余裕が無くなり、コボルト・ロードは素早くバックステップで下がりコロとの距離を取る。

 しかしコロはその隙を見逃す訳も無く追撃を仕掛ける。


「破壊の一撃!」

「フレイムランス!」

「グガァギャ!!!」

「きゃうっ!」

「きゃあ!」

「コロ! アリシア!」


 コロが全力攻撃を仕掛け出来た一瞬の隙を突き、コボルト・ロードが【地走り】を放ちコロを斬撃が襲う。何とかその斬撃を武器でガードするコロだが、その衝撃はコロを吹き飛ばし、地を這う斬撃は同時にアリシアも襲う。


「くっ! この!」

「エレオノ焦らないで!」

「グオォォォ!」

「えっ? きゃあぁ!」


 二人が攻撃を受けた事で逆上したエレオノが焦って攻撃してしまう。コボルト・ロードはその大振りになった攻撃の隙を突きエレオノに向かって大剣技【疾風刃】を放つ。

 高速の突きがエレオノを襲い、何とかその攻撃を【柳】のスキルを使い防ぐも、処理が追い付かず咄嗟に盾で攻撃を受けその衝撃に吹き飛ばされる。

 そんなエレオノを救う為、私は何とかコボルト・ロードの気を引こうと、影魔法でコボルト・ロードを囲もうとするが──。


「ガァァオォォォォウォ!」


 私の体はその声を聴いたとたんに動けなくなり、遠吠えの様な物をしたコボルト・ロードの後ろから五匹のエルダーコボルトが現れる。


 マジか!? つうかこれもう、呼んでるってよりただの召喚扱いだろ!?


 〈マスター! アリシアとコロの治療は終わりました。エレオノも傷は回復したようです〉


 ありがとヘルさん! さて、この状況どうするかな?

 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

「エレオノは私と一緒にコボルト・ロードを、残りは回りのエルダーコボルトお願い」

「「「了解」」」


 私は口頭で指示をだし【念話】で別の指示を追加で出す。


 ヘルさん!


 〈ステータスを出します〉


【鑑定士】スキル成功

 エルダーコボルト

 レベル:20

 HP:900/900

 MP:400/400

 物攻:300

 物防:250

 魔攻:150

 魔防:100

 敏捷:250

 知恵:200

 器用:180

 運 :50

 スキル:【頑強】【大剣のコツ】【凪ぎ払い】【咆哮】【地走り】【烈空】【土魔法】



【鑑定士】スキル成功

 名前:ガガイア

 HP:1700/2500

 MP:600/800


 思ったよりは減ってるけど正直ヤバめだな。


「ハクア大丈夫かな?」

「あそこに行くまで頑張ってくれる。それにエルダーになら二人の魔法が効く」

「うん。そうだね、よし! 私達はこっちを時間まで頑張ろう!」

「焦らないでね?」

「了解♪」


 さあ! キリキリ働こう!

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