第四章ダンジョン&アリスベル
第72話敵強すぎない!?
ガギンッ! ガンッ! キンッ!
「エレオノ!」
「了解!」
私の声に答えたエレオノはモンスターと鍔迫り合いをしている私の背中を目掛けて駆けてくる。
私は自分に近付くエレオノの気配を感じエレオノに向かって思い切り後ろに跳ぶ。当然私と鍔迫り合いになっていたモンスターは、急に私の力が無くなった事で前につんのめり武器を地面に打ち付けて仕舞う。
そして、後ろに跳んだ私は私目掛けて走るエレオノとぶつかる──その瞬間、エレオノの【霧化】が発動し文字通り私をすり抜けていく。
「ハアアアァァ!」
「グギァァア!」
武器を地面に打ち付け無防備になったモンスター目掛け、エレオノが剣技【穿孔迅】を放ちモンスターの胸に大きな穴を穿つ。
って、タイム! 胸に大きな穴とかそれ魔石を砕くって事じゃない?
「「あっ!」」
二人同時に気が付き二人同時に間抜けな声を上げる私達。
そして、魔石を砕かれたモンスターは断末魔の悲鳴を上げながら倒れ、そのまま灰へと変わっていく。
「……エレオノ」
「……ゴメン」
「もう、何をやってるんですかエレオノ」
「反省してます! ごめんなさい!」
私の時よりちゃんと謝ってません?
「おねちゃん乙」
「二人ともお疲れ様かな」
「ともあれ、お疲れ様です二人とも怪我は無いですか?」
「うん、それは全然」
「でも、ハクアが言ってた通りあの交代方法は楽だね」
エレオノが【真祖変化】を解きながら言って来る。
「でしょ。【霧化】の事を聞いて行けると思ったんだよね」
「そうですね。聞いた時はそれほど便利そうにも思いませんでしたが、実際にああやって実演を見ると有用性が分かりますね」
と、皆でさっきの戦いの感想を言いながら、ダンジョンの安全地帯まで警戒しつつ進んでいく。
現在私達はユルグ村鉱山の地下ダンジョンの地下19Fに居る。スケルトン祭りの時に地下10Fのフロアボスは倒していたので、今回は素通り出来た。
何でも皆曰く、フロアボスはダンジョンにもよるが一度倒すと10日~20日程度の間出なくなるらしい。
何処までMMOのシステムを流用してんだか。
『シルフィン:だってバランスいいんだもん』
だもん、じゃねー!?
「あっ、ハクアあそこが安全地帯かな」
「んっ、了解。そこで一旦休んでご飯食べよ」
予定通り私達は安全地帯で一休みし食事を始める。食事の最の話題はここまでの道程の話になった。
「やっぱり敵弱くなってたね」
「確かに」
「そうですね。私達が強くなったのは多少なりとも有りますけど、何よりもギルドで買った周辺モンスターの情報の本とダンジョンの地図が大きいですね」
ですよね~。
「……あんなのあるの知ってたんなら先に教えて欲しかった」
「あははは……ごめん。まさか知らないとは思わなくて……」
「まぁ私も知ってはいたんですが、これ普通はあまり買う人間いない物何で忘れていました」
「何で皆買わないの?」
「この本も地図も結構高いからね。だからかな」
「命より金か~。世知辛い」
私だったらすぐ買うのにな。
「う~ん、でもさハクア。言いたい事は分かるけどこの辺りのモンスターなら、ちゃんとした装備が整ってれば危なく無いよ?」
えっ? マジで!? 私結構ギリな感が有るんだけど!
〈まぁ、マスターこの中で一番ステータス弱いですからね〉
うわん! そんなん私が一番分かってるよ!
「まぁ私達はパーティー組んで日が浅い上に殆どが素人ですからね」
確かに、アクアとアリシアは全くの素人、エレオノは訓練だけ、実践経験有ったの実はコロだけなんだよね。まあ、私も殺し合いの実践って意味では素人だし。
「でもやっぱり、祭りの最中よりも敵が弱いかな」
そうなんだよね。コロがダンジョンに入る前に言ってはいたけどここまで敵の強さが変わるとは。
まぁ、祭りの最中は一番強く、祭りが終ると弱くなるらしい。戦った感じ、前に潜った時に地下9Fに居たスケルトンが今いる地下19Fのハイコボルトと同じ位の強さかな?
〈そうですね。大体それくらいですね〉
そう、そして一番変わったのがモンスターの種類だ。
前はスケルトンやゾンビなんかの死霊系モンスターばかりだったけど、今回はまさに人の形をした犬人間。と言う表現が相応しいコボルトというモンスターばかりだ。
実はこのコボルトというモンスター、ゴブリンの巣に一匹居たからニアミスしてるんだよね? まぁ一回も会わなかったけど。閑話休題。
因みに、地下1F~9Fまでがレッサーコボルトとコボルトが多く住み、地下11F~19Fまでがハイコボルト、更にその下がエルダーコボルトが多く出てくるらしい、しかもエルダーコボルトになると常に何匹かの手下まで連れていると言う話だ。
「そういえば、ハクアは何か新しいスキル増えたの?」
「一応ね」
「何増えたのゴブ」
「えっとね【嗅覚LV.2】と【暗視LV.3】後は【土魔法LV.1】だね」
「何かパッとしないね」
「地味?」
「ぐはっ!」
二人の言葉にダメージを負う私。
地味は傷付くの……。
「パッとしないだなんて失礼ですよエレオノ! アクアも地味とか言わない!」
「「は~い」」
「大丈夫ですかご主人様?」
優しさが痛い。
「でも、正直ダンジョンの中暗いから【暗視】は見やすくて助かる」
「それは少し羨ましいかな」
「あ~、確かに私も羨ましい」
「後、ダンジョン入ってからずっと維持してたからさっきの戦闘で【結界】が一つレベル上がった」
「そうなんだ?」
「あっ、私も上がりました」
「アクアもゴブ」
「ふ~ん。やっぱりずっと維持するのは良いんだね? 私も出来るだけ【魔闘技】と【闘気】維持してるからそのうち上がるかな?」
「上がると思うよ。後HPとMPも」
「あっ、そっか常に両方に負荷が掛かるのか」
「そうそう。で、20Fのフロアボスはジェネラルコボルトだったよね?」
「はい、ギルドの地図にはそう書き込まれています。20Fは階段を下りたら直ぐに、ボスの部屋なので気を付けて行きましょう」
「了解」
〈30Fの最後のボスもコボルト系なので戦い方をよく観察して下さい。それとジェネラルコボルトも多少の上下が有りますが、ステータス平均が300なので気を付けて行きましょう〉
あれ? そんなんなの!?
〈はい、因みに30Fはステータス平均500です〉
あれ~? いきなり敵強すぎない!? クソッ、頑張って強くなっても全然楽にならないだと!!
『シルフィン:大丈夫まだ序盤ですからね。貴女ではずっと楽になりませんよ』
何が大丈夫なのか分からない! そして嫌な宣言来たー!?
私は改めて自分の弱さを再確認させられて、気を引き締め直してボス部屋への階段に向かうのだった。
チクショー!
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