第42話だといいけどね……

 〈マスター西の方300メートル先に一団が居ます〉


「OK」


 私が考えた一つ目の作戦は至ってシンプル。まだ誰も見付けていない一団をヘルさんにスキルを使って見付けて貰い先に倒す事だった。


 何せヘルさんのスキルは【俯瞰】と【透視】の二つだ。


 上から全てを眺め、隠れた的も見透すこのスキルがあれば、誰よりも先に敵を発見する事が出来る。


 そうしてヘルさんのスキルを使いスケルトンを倒す為、現在私、エレオノ、コロの三人で動いていた。


「ごめんねコロ。私のわがままで」


「気にしないで。武器くらい祭りが終わってからでも作れるし」


 コロは依頼終了後すぐに武器を作る筈だった所を、エレオノの事柄の方が大事だと言って私達の手伝いを優先してくれた。


 いい子過ぎて抱き締めたい。


「シンプルな作戦だけどやっぱりズルっぽいよね?」


「エレオノ? スキル、使う、当然。悪くない。OK?」


「なんで片言なの!?」


 はっはっはっ! 別にやましい事なんて何もないよ?


「ハクアそれだと怪しさしか残らないかな」


 失敬な! 私のどこが怪しいと!? ……全部か?


「見えた。二人とも」


「大丈夫行けるよハクア」


「ボクも大丈夫かな」


 私達は見えてきたスケルトンの一団の六体と距離を詰めながら、その少し手前で攻撃に移る。


「ウリャー!」


「ハーアッ!」


 コロとエレオノは集団に向い【破壊の一撃】と【真空斬り】を放つ。


 コロの一撃は地面を割りながら進みスケルトンの陣形を崩し、エレオノの一撃は真空波の鎌鼬を飛ばし遠くに居る敵を切り飛ばす。


 よし、今ので真ん中に居る二体と後方の一体を倒せた。これで分断して戦える。


「二人は前よろしく」


「了解」


「わかったかな」


 中央の地面が隆起し前後に分断する事に成功した事で私は後ろの一体に集中出来る。そして私は新しい魔法を試みる。


「風爪」


 この魔法は前回のボス戦で武器に魔法を込められた事で思い付いたものだ。


 今まで使っていた鎌鼬は、腕全体に風の魔法を纏わせ剣のようにするのに対し、今回の風爪は風で鉤爪のような物を作る。


 この二つは似たようなものだが、鎌鼬が自分の力だけで攻撃するのに対し、風爪は自分の体の延長のようなものと認識する事で【疫爪】を併用して使う事も出来る。


 それに鎌鼬は威力を最大限引き出す為に使用時間が少なかったけど、風爪は魔力を手先により限定して圧縮する事で、威力を多少下げるだけで効果時間を大幅に引き上げた。


 攻撃力の低い私にとって素の威力を下げるよりも、スキルの力をプラス出来る方がずっとダメージを上げられるのだ。


 勿論違う能力もあるけどね。


「グガァ」


 スケルトンが近付く私に気が付き剣を振り上げ斬り掛かってくる。


 それに対し懐に潜り込み、振り下ろされる剣の横っ腹に風爪を当てると、その瞬間に魔力を込める事で風を解放して剣を弾き飛ばす。


 その勢いに負け、体が流れたスケルトンに【疫爪】を使い攻撃する。


「グガァァ」


 それでもまだ攻撃を続けようとするスケルトンだが、上手い具合にマヒが入り動きが鈍った。


 その緩慢な動きを跳躍で避け、頭上からウインドブラストを拳に纏わせ叩き付ける。


 攻撃が当たり、骨が盛大に砕け散る大きな音と共にスケルトンが砕け去り戦闘が終わった。


 あっ、ヤバ! 粉々になったからスキル使えない! くっ、ソウルテイカーは使えるのにな~。


「そっちも終わった?」


「うん。今終わった」


 エレオノが分断した壁の向こうから聞いてくるのでそれに答える。


「結構いいペースの筈だけどこれで勝てるのかな?」


「どうだろうハクアはどう思う?」


「正直わかんないけど、二手に別れてやってるから効率は悪くない。それに私達は探索時間が極端に少ないから有利な筈だよ」


「だね」


「でも相手は二年連続で優勝してるんでしょ?」


 そう、昨日暫定二位になった事で一位のパーティーについて調べてみた所、なんとそのパーティーは二年連続優勝の猛者だった。


 とはいえ、調べて分かったのはその成果が人海戦術のなせる技だったというとことだ。


 そのパーティーは何組かで登録し、そのスコアを一ヶ所に集める事でスコアを稼いでいた。


「本当にズルいよね」


「まあね」


 勿論その方法が露見してからは他の組もやってはいるが、トップの効率は段違いらしくここ最近はそのパーティーに優勝されている。


 そもそも景品も豪華な為にわざわざ仲間を集めたとしても、誰の物にするのかという問題も出てくる。


 だから、その方法が出来る組はあまり数が多くないらしい。


「こっちも結構倒したけど、アリシア達は大丈夫かな?」


「平気だよ無茶はしないように言ってある」


「だといいけどね……」


 私はエレオノの言葉の意味が分からず首を傾げていた。

 ▼▼▼▼▼▼▼▼

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」


「……もう、疲れたゴブ」


 〈もう少し頑張って下さい〉


 今私とアクアは沢山のスケルトンを引き連れながら人の居ない道を延々と走っていた。


 アクア程ではないですけど流石に疲れて来た。


 〈あの木の向こうがポイントです〉


 ヘルさんに促され私とアクアは走るスピードを上げやっとの思いで辿り着く。


「は~、は~、は~」


 つ、疲れました。


 私達が何故こんな人気の無い場所でスケルトンと追い駆けっこをしているのか、それは昨日の話に理由がある。


 ご主人様が提案した優勝の為の方法は至ってシンプル。


 ヘルさんのスキル【俯瞰】を使い、まだ発見者が居ないスケルトンを倒すというものだった。


 そしてもう一つ、そのスケルトンを引き連れ人の居ない場所に出現するスケルトンまでも、追い掛けて来た音や気配で引き連れ巻き込みながら、開けた場所まで大量に誘き出す事で一網打尽にする。


 それが今やっている私達の役目だった。


 ご主人様曰く、モンスターを引き連れて他のモンスターの組にぶつかると、そのモンスターも合流して追い掛けて来るらしい、ご主人様はこれをトレインとか言ってましたね?


 〈アリシアそろそろです〉


「はい」


 私はヘルさんに合図を貰いアースクエイクを唱える。


 そして引き連れていた全てのモンスターが範囲内に入った事を確認すると、モンスターの周りにドーム状の土壁を作る。


 〈お見事です〉


「ありがとうございます。ヘルさん」


 私とアクアはドームに軽簡単な足場を作り、ドームの頂上まで登ると、そこに人が入れそうな穴を開ける。


 ちょっとドームを大きく作りすぎましたかね? 登るのがキツいです。


「ファイアブラスト」


「ウインドブラスト」


 私達はその穴に向けボルケーノを放つと、急いでドームを飛び降りる。


 ボルケーノがドーム内部で爆発し、そのエネルギーが火柱となり頂上の穴から立ち上る。


 凄い。何処までこの火柱は上がっているんでしょう?


 目の前の成果に私は現実逃避気味の考えをする。


 これではご主人様の事を強く言えませんね?


 ▶アリシアのレベルが2に上がりました。

 HPが475に上がりました。

 MPが535に上がりました。

 物攻が105に上がりました。

 物防が125に上がりました。

 魔攻が298に上がりました。

 魔防が286に上がりました。

 敏捷が125に上がりました。

 知恵が430に上がりました。

 器用が215に上がりました。

【魔弓LV.2→LV.3】になりました。

【野生LV8→LV.MAX】になりスキルが【直感LV.1新】に変化しました。

 スキルポイントを20獲得しました。

 

 ▶アリシアのレベルが3に上がりました。

 HPが500に上がりました。

 MPが570に上がりました。

 物攻が120に上がりました。

 物防が140に上がりました。

 魔攻が316に上がりました。

 魔防が302に上がりました。

 敏捷が135に上がりました。

 知恵が460に上がりました。

 器用が230に上がりました。

 運が40に上がりました。

【速射】を習得しました。

【薬草調合LV.7→LV.8】になりました。

【思考加速LV.1→LV.2】になりました。

 スキルポイントを20獲得しました。


 あっ、レベルが二つも上がりました。これでもっとご主人様のお役に立てます。


「レベル上がったゴブ」


「アクアもですか?」


 私が聞くとアクアが首を縦にコクリと動かす。


 可愛いですね~。


 ご主人様も私よりアクアみたいな、可愛らしい子の方が好きなんでしょうか?


「どうしたの?」


 そんな事を考えながらずっとぼ〜と眺めていたのか、アクアにそう聞かれてしまう。


「い、いえなんでもないです」


 いけませんね! ちゃんと集中しなくては。


 そう思い直し私はもう一度アースクエイクを唱え、今度はドームを上から崩して瓦解させて行く。


 こうする事で頭上からの落下物を更に武器として使えるらしい。


「アクア。まだ生きている敵が居るかも知れませんので注意していて下さい」


「ゴブ」


 そう言ったアクアは何時でも戦闘が出来るように構えている。


 今回私達が二人で組んだ理由。


 それがこのご主人様が考えたドームの中に相手を閉じ込め、中に爆発を起こす葬送という、ご主人様オリジナル魔法を使うためだった。


 この技法は鍛冶師の使う炉と同じ原理で普段よりも高い火力と、熱を産み出せるようです。


 上に大きな穴を開けたのは圧力をここから逃がす為だとか言ってましたっけ? 


 それに、スケルトンには効果が無さそうだからやらないけど、本来は更に火柱が収まったら蓋を閉じて更に蒸して、空気も無くす事も出来るとか?


 私は詳しく説明されてもあまり理解出来なかったのが悔しい所です。


 そんな事を考えながらドームの横部分も崩して行くと遂に全て崩し終わる。


「残りは居なそうですね」


「ゴブ。アリシア乙」


「はい、まだ続けましょうか」


「今度は普通に倒そうゴブ」


「そうですね。そろそろ合流時間ですしね。帰りながらモンスターを倒しましょう」


 そして私達はご主人様達と合流するまでに更に十五体のスケルトンを倒し、ご主人様に頭を撫でて貰えました!


 私、大満足です!!

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