第43話悪いけどこの子は私の物だから、あんたみたいな小物に渡す気は無いよ

 ナデナデ、ナデナデ。


「はぁ~」


 幸せそうですねアリシアさん?


「そろそろ良い? アリシア?」


「えっ、あっ、は、はい、もうちょっと……、じゃなくて、だ、大丈夫です!」


「本音が漏れてるよアリシア」


「あう~」


 エレオノがアリシアを弄っている光景を見て一人静かに拳を握る。


 うん、美少女同士の絡みって良いよね!


 〈マスター〉


 すいません。


「え~と、こっちのチームは合計で二十体倒したよ。まぁ、レベルの確認してないけど」


「こちらはご主人様の作戦で集めた二十体と、帰り道に十五体倒しました」


「ほら言った」


「あは……は……は……」


「何がですか?」


「「なんでも無いです」」


 うん。まあ、予想よりもかなり多いけど結果オーライだよね。


「じゃあ今日だけで五十五体も倒したんだね? うわー、このタイミングでこれだけ倒せるなんて凄いかな! これなら逆転してるかも知れないよ」


 コロが興奮するのは無理もなく。


 スケルトン祭りは封印が弱まる事でモンスターが増えるので、祭りの初日から徐々に増えていき中頃に最高潮となり最終日にはほとんど居なくなる。


 それを全十日間の日程で行うのがスケルトン祭りなのである。


 とはいえ、それは広い範囲での事なので最終日は範囲を絞る事でモンスターを集中的に出現させる事が出来るらしい。


 まあ、決勝戦でモンスター少なかったら祭りもこんなに続かないもんね。


 そして今日は九日目。

 コロ曰く、この時期には三十体も倒せれば良い方らしいので、大分一位に近付いた筈だ。


 更に言えば明日の最終日は上位三組だけでの決戦となる為、私達にも十分な勝機がある筈だ。


「ご主人様。早くギルドに行きましょう」


「そうだね」


 私達はそんな話しをしながらギルドに向い、早速スケルトンの討伐報告を受付嬢さんに行う。


「この時期に五十五体討伐なんて凄いですね」


 まぁ、驚くのも無理無いよね。


「ランキングはどうなりました?」


「はい今の所暫定一位です」


「やった! ハクアやったよ!」


「そうだね……」


「どうしたのハクア? 嬉しくないの?」


 一位になった事で皆が喜ぶ中、私一人だけ反応が薄い事に気が付いたエレオノが問い掛けてくる。


「ご主人様?」


「おねちゃん?」


「ハクア?」


 そんな私達に気が付いた皆も、エレオノ同様私の反応が気になったようだ。


「一つ聞いて良い?」


「はい。なんでしょう?」


「一位だったパーティーってもう報告に来た?」


「いえ、まだです」


 やっぱりか。


「ハクアどう──」


「おい、邪魔だどけ餓鬼共!」


「なっ、今は私達が──」


「エレオノ」


「──っ、うん。わかった……」


 ここで問題を起こしても下手をすれば立場が悪くなる。


 だからエレオノを止めたが、納得出来ないまでもエレオノも渋々ながら引いてくれる。


「ふん、とっとと確認してくれ」


「えっ? 討伐数八十体……!?」


 受付嬢の驚きの声を聞いた周りの冒険者も、ザワザワとしだし「オイ、マジかよ」「幾らなんでもおかしいだろ」と、一位のパーティーに懐疑的な目を向ける。


「るせー! 言いたい事が有るならハッキリ言え! まぁ、結果が全てだけどな屑共! くっはっはっはっは」


 見た所こいつらのパーティーは近接装備ばかりで魔法職が居ないみたいだな~。


 でも九日目の今日は上位五組だけで、この中にこいつらのグループは居ない筈。


 ──だったらどうやって?


 こんな近接ばかりのパーティーじゃ、相当上手くやってもこんなにスコアを稼げない筈……ん? 近接ばかり? まさかっ!?


 私は自分の考えを確める為に【鑑定士】のスキルを使い、相手のパーティーを一人一人確める。


 なるほどね。そう言う事か。


 そんな細工までしているなんて流石に騙されたし、そこに気が付くなんてなかなか面白い方法だな。


 まぁ、私も最初に考えたけど……。それもこうやって気が付かれたら終わりだけどね?


「まぁ、結果が全てって事には賛同するよ」


「あん、なんだ急に幾ら媚びを売った所でテメーみてえな餓鬼は興味無いんだよ」


「貴方!」


「アリシア」


「ふっ、なんだよ。まともなのも居るじゃねえか。あんたなら相手してやっても良いぜ!」


 そう言う男はアリシアの事を全身舐め回すように見る。


「──っ!」


 その視線にアリシアは自分の体を庇うような仕草をする。


 私はそれを庇うように前に出てアリシアの前に立つ。


「悪いけどこの子は私のものだから、あんたみたいな小物に渡す気は無いよ」


「あぁ、なんだとクソガキ!! テメー誰に向かって口聞いてんだぁ!」


「お前だよ小物」


「テメー」


 殴り掛かろうとする男の横を抜け、後ろに居た小柄な男を引き倒す。


「ぎゃあ」


 自分に攻撃が来るとは思わず小柄な男は簡単に倒され私に組み敷かれる。


「なにしやがんだ」


「言いたい事があるならハッキリ言えって言われたからね? あんたらが最終日間近でこんなスコアを稼げた理由を、皆に親切に教えてあげようと思ってね」


「このっ!?」


「動かないでくれるかな? 弾みで折っちゃうかも知れないし」


「ぎゃぁぁ!?」


「ほら?」


「くっ」


 私が小柄な男を組み敷きながら男を脅す。


 すると「これ以上の揉め事は止めて下さい」と、私達のやり取りを見ていた受付嬢が割り込んでくる。


 そして──。


「その通りだ! これ以上騒ぐのなら二組共失格にすることも出来るぞ!」


 今度はデップリと太った大柄な男が出てくる。


 何これ?


「オーク?」


「ぶはっ!」


「ククッ」


「クスクス」


「確かに……」


 私の一言を聞き周りで吹き出したり、笑ったりする声がする。


 そして当のオークは顔を真っ赤にし「私はここのギルド長だ!」と叫んでいる。


 ふむ、私悪くない。オークに似てるのが悪い。笑った奴はそう見えた奴だしね!


 〈……マスター〉


「それでこれはなんの騒ぎなんだ」


 見切り発車かよ! やっぱ頭もオーク並みじゃん!


「スケルトン祭りの詳細なルールを私は知らないけど、祭りの生れた経緯から言って、コイツらのした事がルールの範疇とは思えないんだけど?」


「その事か……」


 おっ、把握してるのか。ちょっとは役立つかこのオーク?


「確かに複数のグループのスコアを一つのチームに集めるのは誉められた行為ではないが……」


 あっ、やっぱ役に立たんわ。このオーク……。


「その事じゃないんだけど?」


「何?」


「そんな事より。クソガキさっさと俺の仲間から手を離しやがれ!」


「コレに逃げられるのは困るんだよね」


「この!?」


「待て! その事じゃないとはどういう事だ!」


「今からその説明をするよ」


 そして私はこのパーティーのスコアの秘密を話し始める。


 まっ、答え聞くと単純なんだけどね?

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