第15話何を言っているか分からない? 私も分からないよ!!
いやぁ、短いようで長かった。
何せ自分の寿命をほとんど使いきる勢いの長さだったからね! もう寿命が尽きるまで一週間しかないよ! マジでギリギリだった。
ゴブリンの巣に行きミランダとレイドの二人の冒険者と別れ拠点に辿り着くと、もう夜が明けて空は明るくなり始めていた。
やっぱりどうせならどんどん進化して、最終的にはオーガとか鬼神とかなりたいよな。
あれ? なれるよね?
〈マスター〉
どうしたのヘルさん?
〈テンション上がっているところ恐縮ですが進化について提案があります〉
提案? 提案って何? ヘルさん?
〈はい。二つ程提案があるのですが、まず一つ目は二人同時に進化するのではなく一人ずつ進化して下さい。二つ目は最初にアクアから進化させて欲しいです〉
「二つ目は寿命の事を考えれば分かりますけど、一つ目の二人同時に進化するのはなんで駄目なんですか?」
〈別に絶対駄目と言う訳ではないのですが、進化するには時間が掛かるからです〉
ヘルさんが言うには、一度の進化に掛かる時間は凡そ八時間程で、進化が始まると全ての弱いモンスターは繭状か卵状になり、その間は無防備になるらしい。
なのでヘルさんは、その間は残る二人で守る都合上、あの二人組の冒険者が万が一攻めてくる場合、戦力的に考えてもアクアを先に進化させる方が安全だと判断した。
〈それに恐らくですが、マスターが進化している間、私自身【俯瞰】等のスキルが使えない可能性が高いです〉
そしてアクアの進化が無事終る程時間が経てば、あの冒険者達が攻めてくる可能性も更に低くなるので、安全性が増すという考えだ。
〈進化を行うとレベルが1に戻るので、進化直後はなるべく安全な方が良いでしょう〉
そっかぁ、進化って直ぐ終わるんじゃないんだ。
「モンスターって、そうやって進化するんですね?」
アリシアは私達を見ながら感心する。
〈理解が得られたようで良かったです。では、改めて進化についてお教えします。まず、アクアに【魔物調教】を使って下さい。そうしたら私が【可視化】を使って見やすくします〉
ヘルさんに言われた通り【魔物調教】を使うとゲームに出てくるようなプラスチックのような板が出てきた。
これがヘルさんの【可視化】だろうか?
〈そうです。今まで頭の中でしか出来なかった事を、手元の操作で出来るようになりました〉
本当にゲームっぽい。
▶ゴブゑのエディットを開始します。
スキル編成
スキル習得
魔法管理
装備編成
名前変更
進化
あ~、そうか名前名乗っただけで変えてなかった。今のうちに変えておこう。
▶ゴブゑの名前をアクアに変更しますか?
はい←
いいえ
▶ゴブゑの名前をアクアに変更しました。
「へぇ~、こうなっているんですね?」
アリシアに見やすいようにしながら二人で覗く、これで進化を選べば良いんだよね?
〈はい、そうです〉
▶アクアの進化先が複数ありますどのモンスターに進化するのか選んで下さい。
ゴブリン
ミニゴブリンメイジ
ミニゴブリンシャーマン
ミニゴブリンプリースト
オォ! 進化先が四つも。
「最初のゴブリン以外はみんな魔法職ですね」
確かに、どう違うんだろうゲームと同じかな?
〈概ね同じですが一応の説明をします〉
まずゴブリンはミニゴブリンの進化先では一般的なもの。
特長は全体的なステータス上昇で、他にはこれと言った特長はないらしい。しかも、ゴブリン自体子供が倒せる程度なのでそこまでのパワーアップはしないとの事。
次にミニゴブリンメイジ。
この進化候補の中で一番の火力がこの進化。特長は魔法が使える事、それに魔法攻撃力が上がり攻撃的な魔法が使える。その反面この中では一番防御力は低いらしい。
次のミニゴブリンシャーマンはアシスト型の進化。
分かりやすく言うとデバッファーで、特長は相手を阻害をする魔法や、罠等を張る魔法が多く使え、魔法三職の中では一番HPが高い。
そして最後はミニゴブリンプリースト。
この個体はシャーマンと同じくアシスト型だが、回復、バフ特化で、回復を使い仲間を癒し、ステータスを上げる魔法も使いこなせる。
三職の中では一番火力が低く、その反面防御力はそこそこ高い、特に魔法防御が高いらしい。
フ~ム。
「ありしあは、どうおもう?」
「悩み所ですね。私としては自分が魔法攻撃が得意な分、メイジ以外、特にアクアは回復魔法のスキルを持っているのでプリーストを推したいですね」
確かに他の二つも魅力的では有るけど、どんなにゲームみたいな世界でも一回死んだら終わり。
そんな中、回復魔法は正に生命線その物。オマケに回復薬とかの補給が出来るとも限らないからな。
個人的にはシャーマンのデバフとか、メイジに進化してアリシアと二人で、高火力の魔法使い編成も非常に捨てがたいけど! 捨てがたいけど!
「きめた、ぷりーすとにする」
「良いんですか?」
「かいふくは、じゅうよう、それに、いちおう、こうげきまほうも、あるから」
「そうでしたね。風魔法も有りましたからね」
▶アクアの進化先が複数あります。どのモンスターに進化するのか選んで下さい。
ゴブリン
ミニゴブリンメイジ
ミニゴブリンシャーマン
ミニゴブリンプリースト←
▶一度進化すると元の個体には戻れませんが、アクアの進化先はミニゴブリンプリーストで良いですか?
はい←
いいえ
▶アクアがミニゴブリンプリーストに進化します。進化を開始します。暫くお待ち下さい。
瞬間、アクアの体が輝きだし光の糸が体を包み繭を形成する。完全に繭状になると光が収まり繭だけが残る。
「初めて見ました。進化中はこんな風になるんですね?」
〈はい。最初全てのモンスターは繭状か卵状になります。進化を重ねればそうでない個体も居るようですが、この状態は頑丈ではありますが、壊れない訳ではないので注意して下さい。壊されれば死んでしまいます〉
う~ん。正に命懸け、そういえば今回は私が選んだけど、普通はどうやって進化先が決まるんだろう?
〈通常のモンスターはそのまま上位個体になりますが、今回のように複数の進化先がある場合、自分に適したものに進化先が決まります。アクアで言えばプリーストですね〉
やっぱりそうだよね。
「ご主人様の進化も進化先だけ見てみませんか? 考える時間も有りますし」
あぁ~、確かに見たら進化したくなるけど、アクアの進化が終わってから決めるんじゃ時間の無駄遣いだもんね!
それはいけないな。時間は有限なんだから大切に使わないとね。と、言う訳でさっそく見てみよう!
〈……必死ですね〉
そんな事無いんだからね! あくまで仕方なくなんだから!!
〈口調変わってますよ〉
そんなやり取りを終えて自分の進化先を確認する。
っと、先に名前だけ変更しないと。
▶ゴブ子の名前をハクアに変更しますか?
はい←
いいえ
▶ゴブ子の名前をハクアに変更しました。
▶ハクアが進化出来ます。進化先が複数あります。どのモンスターに進化するのか選んで下さい。
ゴブリン
ミニゴブリンソルジャー
ミニゴブリンナイト
ミニゴブリンモンク
ミニゴブリンメイジ
ミニゴブリンシャーマン
ミニゴブリンプリースト
パラライズミニゴブリン
「すごい! たくさん進化先があります」
私的には選ぶ物はほぼ一択だけど、一応説明聞いてみよう。
〈分かりました。先程と重複している物は飛ばします〉
まず最初はソルジャー。
特長は攻撃力が上がり易く、その他のステータスはほぼ平均的に上がる。
次はナイト。
こちらは防御特化型で防御力とHPが上がり易く、反面攻撃力はあまり上がらない。
お次はモンク。
スピードと会心率が高く、会心率はステータスに表示されないが、時々ダメージが多く相手に入る。
〈最後にパラライズミニゴブリンですが、こちらはレア進化です〉
やっぱりホブゴブリンみたいなレア進化系だったか!
〈いえ、ホブゴブリンがレアな訳では無く、あの個体が亜種と言うレア個体なだけです〉
ちなみにこちらはミニゴブリンの段階でスキル【マヒ無効】を覚えている事が進化条件だったようだ。
特長はなんと言ってもパラライズ、つまりマヒが効かなくなり、MPを使った直接攻撃のスキルがマヒの効果を持つ。
マジか! これ強いんじゃない!?
〈いえ。残念ながら【強マヒ攻撃】のような上位の攻撃なら一時的に相手を動けなく出来ますが、只の【マヒ攻撃】ではそこまでの事は出来ず、相手を動きにくくするような感じです〉
そうか、そこまでの効果は無いのか。でも、それでも十分なくらいの効果だよね?
「敵としてはまず出会いたくありませんね」
〈私としても進化先にはパラライズミニゴブリンを推します〉
全員同じ意見のようだ。
〈警戒は私がしておくので、マスター達は休んでください〉
私の進化先を確認し、ヘルさんに言われた事で私達はようやく休む事にし就寝した。
あっ、もちろんホブゴブリンとゴブリンソルジャーは頂きました。ウプッ! ───うっ!? 吐き気が……。
▶【喰吸】のスキルが発動しました。
【野性LV.4→6】に上がりました。
【爪攻撃LV.2→4】に上がりました。
【背後攻撃LV.4→6】に上がりました。
▶スキル熟練度が一定に達しましたスキル【見切りLV.1新】獲得しました。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
翌朝目覚めるとまだアクアの進化は終わっていなかった。本当に凄く時間が掛かるのね。
「おはようございます。ご主人様」
アリシアが目を擦りながら挨拶してくる。───が、服は二度も破られた為ボロボロになり、その状態で寝た為大変乱れていた。
はっきり言って同じ女とは言え、美少女が無防備にこんな格好をしているとドキドキする。
そんな私の視線に気が付いたのか、アリシアは顔を真っ赤にしてミランダから貰った服に着替えていた。
昨日の内に貰ったけど、自分達だけだからといって疲れてたから寝ちゃったからね。
「うぅ、ちゃんと着替えておけばこんな事には……」
いやいや、眼福だったよ?
「かわいいから、だいじょうぶ」
ちゃんとフォローする私。出来る子!
「あっ、あう、うぅ、ご、ご飯作ってきます!」
その言葉を聞いたとたん、また真っ赤になって逃げてしまった。
あれ~?
「お待たせしました」
ご飯を作って帰ってくるアリシア、何も言わないでおこう。そう思いさっさとご飯を食べようとする。
「あれ? これって」
「あっ、はい。昨日ミランダさんに食材を貰っていたんです。自分達は朝になったら直ぐに村に戻るからって、全部くれたんですよ。狩りで蓄えた分もあるので暫くの間は食事は平気ですね」
「おいしい」
アリシアは私の言葉を聞いて、後ろを向きガッツポーズをしている。なんでだろう?
〈マスター。アクアが───〉
ヘルさんが慌てたように言ってくるので、アリシアと共にアクアの所へ行くと再び繭が光っていた。
▶アクアがミニゴブリンからミニゴブリンプリーストに進化しました。アクアの進化が完了しました。
バリッバリッ。
そんな音とともに繭の中から人影が現れる!
わぁ~、美幼女だ、かわいい~。───って!? 今、繭から出てこなかったか?
「「あれっ? えぇぇぇぇっ? どういうこと!?」」
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ。繭から出てきたらゴブリンっ子が美幼女になってた! 何を言っているか分からない? 私も分からないよ!!
〈間違いなく彼女がアクアです〉
マジか!? いやいやマジか!?
「あっ、あれ? えっ? えっ?」
アリシアは混乱しているようだ。
〈マスターもテンションがおかしいですよ〉
───とっ、全員で混乱していると。
「ゴブ~!!」と、全裸の美幼女が凄い良い笑顔で抱き付いてきた。
ありがとうございます!
「あぁ~!! ズルい!!」
何を言ってるのアリシアさん?
「ゴブ~、ゴブ、ゴブ~」
うん、どうやら本当にアクアのようだね。いつもと同じ反応に私はなんとなく納得する。
「でも、驚きました。まさかこんな、あっ、でも、ちゃんと小さな角も有りますね」
そう、見た目は完璧に只の人間の子供なんだけど、額に小さな角が有り、それが
〈いえ、恐らくですが、ゴブリンは生れた時♀と♂の姿はほとんど変わりませんが、進化すると人の姿に近くなるのでしょう。それならゴブリンの♀の個体が進化したモンスターがほとんどいない理由が分かります〉
「──それってまさか」
〈進化したてはHPも殆ど無い状態になりますから、その状態でゴブリンの巣の中、こんな姿で繭から出てくれば襲われ、そのまま命が尽きるでしょう〉
そんな理由でゴブリンの♀は少なかったのか。
〈……恐らくですが〉
「そうですね。ほとんど無い事ですが、ゴブリンもオーガなどのモンスターにまで進化する事が有るらしいですから。上位種の鬼になると人間の姿に近くなるそうですし……はっ! という事はご主人様も進化するとこんな風に……」
アリシアはアクアに回復薬を使い、ミランダから貰った服を着せながら何か言っているが、最後の方までは聞こえなかった。
〈聞かなくて良いと思いますよ? では、次はマスターの番ですね〉
「そうですね! ご主人様! 早く進化してしまいましょう! 私達が見張っておくので大丈夫です!」
アリシアさんなんか鼻息荒いですよ? と言うか、こんなキャラでしたっけ? アリシアがホブゴブリンに一人で立ち向かった時よりも気合いの入った声だ。
うん、まぁいいか。私も待ちきれないし、とりあえず進化しよう。
▶ハクアが進化出来ます。進化先が複数あります。どのモンスターに進化するのか選んで下さい。
ゴブリン
ミニゴブリンソルジャー
ミニゴブリンナイト
ミニゴブリンモンク
ミニゴブリンメイジ
ミニゴブリンシャーマン
ミニゴブリンプリースト
パラライズミニゴブリン←
▶一度進化すると元の個体には戻れませんが、ハクアの進化先はパラライズミニゴブリンで良いですか?
はい←
いいえ
▶ハクアがパラライズミニゴブリンに進化します。進化を開始します。暫くお待ち下さい。
そのアナウンスとともに私の体からアクアのように光が溢れ輝き出し、やがて光が糸のように私に巻き付く、そして私の意識は途切れた───。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
▶ハクアがミニゴブリンからパラライズミニゴブリンに進化しました。進化した事でスキルポイントを50獲得しました。ハクアの進化が完了しました。
その声で私は目覚める。
暗い───。
〈おはようございますマスター〉
ヘル……さん? え~と?
〈マスターは進化したんですよ?〉
あぁ……そっかそうだった。じゃあここは繭の中?
〈はい。そうです大丈夫ですか? マスター〉
うん平気だよ。ごめん寝起きで頭がぼーっとしてるみたい。
〈いえ、二人も外で待っています。早くでましょう〉
うん、そうだね。
バリッバリッ。
「ご主人様!?」
「ゴブ!?」
「おはよう、二人とも」
私は二人に挨拶するが、何故か知らないが物凄く驚かれてしまった。
なんでそんなに驚いてるの?
「あっ、すいません。あまりにも綺麗だったので少し驚いて……」
「ゴブッゴブッ!」
二人はそう言いながら水瓶を渡してくる。
何? 飲んで良いの? 確かに喉は乾いてる。
〈鏡の代わりにしろという意味では?〉
あっ、そうか。なるほど。
私は渡された水瓶を覗いてみる。
そこにあったのはある意味最も見たくなかった前世の自分の顔だった。
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