第16話人の夢と書いて儚いと読むby女神
───私は自分の顔が嫌いだった。
いや、正確に言えば怖かったのかも知れない───。
───私には5つ年上の姉がいた。
───姉は幼いながらに完璧な人だった。
頭もよく運動も出来、人当たりも良い。
私に出来ない事を全て出来、私が欲しいものを全て持つ。
そんな姉に小さい頃の私はずっと後ろを付いて回っていた。
それが小さい私にとって一番大切な事だったから……。
私達は両親とは不仲だった為いつも二人でいた。そしていつも一緒にいる私を、今にして思えば姉は異常な程可愛がってくれていた。
そんな私が唯一自慢出来たのが姉に似たこの容姿だった。
でも、それは姉が私の目の前で車に轢かれた時から変わった。
車に轢かれ、大好きだった姉が見るも無惨な姿に為った時から、私は自分の顔が怖くなった。
年を重ねる毎に姉に似ていく容姿、いつしか姉の年齢を超えた時には、自分の姿をまともに見ようとも思わなかった。
そんな私を両親は疎み、元々不仲だった事もあり、私は両親から離れ高校に通い一人暮らしする事になった。
元々人と話すのが苦手だった私は、姉に似ていく容姿を人に見られるのを嫌い、人とまともに話す事も無く、次第に引きこもりゲーム等の別の世界にのめり込んでいった。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
───あぁ、そういえば私の死因ってお姉ちゃんと同じだったんだ……。
「あの、ご主人様?」
「ゴブ?」
アリシアとアクアが心配そうに私の顔を覗いてくる。でも、不思議な事に顔を隠そうとは思わなかった。
「だいじょうぶ」
二人に応えながら私は考える。
少しは姉の事を受け入れられたのか? 一度死んだ事で心境に変化があったのか? それともこっちに来てからの影響が大きかったのか?
〈全部じゃないですか?〉
ヘルさんも微妙に感情表現豊かになった?
〈そうかも知れません〉
「あの、私何か気に障るような事言いましたか?」
───と、アリシアが恐る恐る聞いてきたので、私は分からない事を考えるのを止め、出来る限り優しい声音で、ごめん。ねぼけてた。と、答え安心させる。
「だいぶ喋り方が滑らかになりましたね。進化のお陰ですかね?」
〈恐らくそうでしょう〉
「ご主人様が進化して繭状になっている間は、アクアと二人きりだったので色々話していましたが、格段にコミュニケーション能力が上がっていましたからね」
そっかぁ……ん? 話してた、アクアと? まだゴブッとしか言えないよね? あれっ?
〈アクアの【言語理解】がMAXになっています〉
おぅっ!! マジか!? 人が寝てる間に凄く成長してる……だと……!?
〈テンションがおかしいですよ?〉
いやぁ~、改めて寿命から暫くの間解放されたと思うと、なんかテンション上がっちゃって、だって後数日しか無かったからプレッシャー半端なかったしね。
意外と私も焦ってたんだろう。まだ油断は出来る程ではないが、余裕って大事だと心の底から思う。
「それでご主人様、これからどうしますか?」
「とりあえずは、ステータスのへんかだけみよう」
私に服を渡しながら聞いてくるアリシアに、少しだけ考えて提案する。
〈その前に一つ良いですか? マスター〉
んっ? どうしたのヘルさん?
〈女神様からのメッセージがあり───〉
「よし! さっそくステータスチェックだ!」
「えっ? ちょっ!? ご、ご主人様!? 女神様ってあの女神様からですよね? 聞かなくて良いんですか? とても光栄な事ですよ!!」
えっ? ナニヲイッテルノアリシアサン? 光栄? 駄女神の言葉が? はっ! まさか……洗脳か!?
「えっと? なっ、なんですか? その反応」
「ありしあが、どのめがみのことをいってるかわからないけど、すくなくともワタシのしってるのはロクでもない」
「この世界で一番有名な女神様と言えばシル───」
私は慌ててアリシアの口を塞ぐ。
「なまえをおそわったら、レギュラーで、でてきそうだからダメ!」
〈どれだけ嫌っているんですか〉
当たり前じゃん!?
「一体何が?」
アリシアが何か言っているが聞こえない。
〈しかしマスター、もしもメッセージを再生しないと更に不幸に見舞われる──と……〉
あの、駄女神がぁ!
「くっ、じゃあ、さいせいして」
〈そんな今にも血反吐を吐きそうに……。とりあえず再生リストします〉
『久しぶりです士道白亜。生まれた時ぶりですね? 改めて面白いですね貴女は……ゴブリンに生まれ変わるわ、エルフを奴隷にするわ、アースガルド最弱なのにホブゴブリンまで倒すだなんて』
所々に薄っすら笑い声が漏れているのがさらにイラつく。
『それにあの魔法の使い方も、笑いすぎて死んじゃうかと思いましたよ。良いですね。実に面白いです。貴方のお陰で、ゴブリンの♀が進化しても直ぐに死ぬ理由も分かりました。私の中の疑問を解消したお礼に、スキルポイントを20差し上げます』
ムッ、ムカつくけどこれは普通に嬉しいやつ。
『それと今までは寿命の期限が短かったから気を散らさないよう、遠慮していましたが、これからは積極的に会話に参加していきます。それでは私は貴方の事を、ずっと眺めているのでまだまだ私を笑わせて下さいね』
駄女神のメッセージが終わった! ───あぁ……やはりヤツは敵か!!
「いっ、今のが女神様からの伝言、い、イメージが少し違います……ね……?」
アリシアがショックを受けている。さもありなん。
『人の夢と書いて儚いと読むby女神』
うるさいよ!! と、いうかさっそく
「ゴブ?」
アクアは理解していないようだ。癒される。
〈え~、とりあえず進化したので、皆のステータスを確認しましょうか?〉
……お願いします。
〈了解しました。ではマスターから〉
名前:ゴブ子改めハクア
レベル:1
性別:女
種族:ミニゴブリン→パラライズミニゴブリン
HP:190
MP:90
物攻:23
物防:23
魔攻:28
魔防:28
敏捷:55
知恵:180
器用:120
運 :40
武器:なし
魔法:風魔法LV.1→LV.3
称号:転生者、同族殺し、同族喰らい
スキル:戦闘系スキル
【爪攻撃LV.4】→【マヒ爪攻撃LV.4(新)】
【マヒ噛みつきLV.1(新)】【麻痺崩拳LV.1(新)】
技能系スキル
【鑑定士LV.6→LV.7】【集中LV.2→LV.4】
【野生LV.6→LV.8】【罠師LV.4】
【跳躍LV1】【会心LV.1→LV.2(新)】
【見切りLV.1→LV.2(新)】
耐性系スキル
【マヒ無効】【毒耐性LV.5→LV.7】
【痛覚軽減LV.7→LV.8】
ステータスUP系スキル:
【剛力LV.1→LV.3(新)】
【堅牢LV.1→LV.3(新)】
スキル補助系
【魔法の片鱗LV.2】【魔法のコツLV.2】
【武器のコツLV.6】【風魔法のコツLV.1】
攻撃ダメージUP系
【背後攻撃LV.4→LV.7】
【急所攻撃LV.3→LV.4】
【ゴブリンキラーLV.8→LV.MAX】
【格闘LV.2→LV.3】
属性スキル
【破壊LV.1(新)】【マヒ附与LV.1(新)】
補助、その他スキル
【喰吸LV.4→LV.6】【言語LV.8→LV.MAX】
【奴隷術】【魔物調教LV.6→LV.7】
【危機察知LV.1】
あれっ? 魔法スキルの欄が無くなってる?
〈項目が同じなので〉
そっか、やっぱり進化したては少し弱くなるみたいだね。
スキルも色々増えてレベルも上がった。流石に苦労しただけの事はあるって所だね。
しかも、なんか強そうなスキルも増えてる。
〈ではいつも通り説明します。前回から新しく覚えたスキルは九個です〉
まず最初【爪攻撃】は上位スキルの【マヒ爪攻撃】に統合された。このスキルはMPを使い、通常の1.5倍の攻撃力でマヒ効果のある攻撃をする事が出来る。
【マヒ噛みつき】も同様で、共にレベルが上がる事でマヒ効果が上がる。
【麻痺崩拳】は2倍の攻撃力の破壊属性と、麻痺効果のある攻撃をする事が出来る。レベルアップで破壊属性と、麻痺効果が上昇するらしい。
【会心】【見切り】は共にクリティカル確率上昇と、攻撃軌道を予測しやすくなる効果で【剛力】【堅牢】はレベルアップ時にレベル×1分のステータスアップ効果ある。
【破壊】は相手の体を壊す効果でレベルが上がる程、破壊しやすくなり【マヒ附与】は武器にマヒ効果を持たせ、レベルアップでMP減少、附与時間延長、マヒ効果がアップする。
【喰吸】はレベル6になった事でモンスターを食べる事無く、スキルを使いモンスターを吸収する事で今まで通りスキルが発動するようになった。
おふっ! さ、流石に説明が多いな……。
でも、パラライズってだけあって、マヒ効果が増えたのは嬉しい。崩拳なんていかにも技っぽいし、攻撃力2倍の攻撃は有難い。
ステup系は言わずもがなで【喰吸】もモンスター食べなくて良くなったのはいいな。
「やっぱり進化って凄いんですね? これだけ増えるだなんて」
〈マスターの場合は【喰吸】のスキルがあるから余計ですね〉
「【麻痺崩拳】なんてMP量によっては使い勝手が良さそうですね」
やっぱそうだよね! うん、楽しみだな!
〈次は私です〉
名前:ヘル
ステータス不明
スキル:【全種族言語理解】【スキル大全】
【俯瞰LV.4→LV.5】【聞き耳LV.3→LV.4】
【念話】【可視化】
〈たいして変わりませんね〉
「全部凄く役立ってますよ!」
「ゴブ~♪」
〈続いてはアクアです〉
名前:ゴブゑ改めアクア
レベル:10→1
性別:女
種族:ミニゴブリン→ミニゴブリンプリースト
HP:170→160
MP:200→190
物攻:12→11
物防:11→10
魔攻:40→39
魔防:40→39
敏捷:23→22
知恵:130→140
器用:95→100
運 :30→35
武器:
魔法:風魔法LV.4、治療魔法LV.3(新)
光魔法LV.1(新)強化魔法LV.1(新)
称号:眷属、同族殺し、
スキル:戦闘系スキル
【爪攻撃LV.1→LV.3】【噛みつきLV.2(新)】
技能系スキル
【野生LV.4→LV.6】【罠師LV.4】
ステータスUP系スキル:
【剛力LV.1→LV.2(新)】
【堅牢LV.1→LV.2(新)】
攻撃ダメージUP系
【背後攻撃LV.3→LV.4】
【ゴブリンキラーLV.1→LV.3】
スキル補助系
【癒しの才能LV.2】→【癒しの天才LV.5(新)】
【癒しの扱いLV.2】→【癒しの技巧LV.5(新)】
【杖のコツLV.2→LV.3】
【棍棒のコツLV.1→LV.3】
補助、その他スキル
【言語LV.3→LV.6】
【言語理解LV.8→LV.MAX】
幾つかのスキルが上位スキルになって統合されてるね。って言うか、言語理解のスキルが本当にMAXになってるよ。
「【治療魔法】【強化魔法】【光魔法】の三つが増えてますね。これで戦闘も大分楽になりますよ。後、アクア!」
「ゴブッ! は、はくあっ、おね、ちゃん」
ブファッ! ───な、なにこれ凄い可愛いんですけど!
「二人で頑張りました!」
「ゴブッ!」
二人揃って胸を張る。尊み。
〈言語系が伸びていたのはこのためですね〉
本当にビックリしたけど、お姉ちゃんは良かった! 二人ともマジ尊い。
〈最後はアリシアですね〉
名前:アリシア・アールヴ
レベル:5→9
性別:女
種族:エルフ
クラス:なし
HP:250→290
MP:200→250
物攻:31→37+5
物防:30→35
魔攻:65→85
魔防:65→85
敏捷:35→46
知恵:130→180
器用:70→93
運 :5→9
武器:銅のナイフ
魔法:
風魔法LV.3→LV.5、土魔法LV.2→LV.3
火魔法LV.3→LV.6、水魔法LV.2、除去魔法(新)
称号:奴隷、王家の血筋、
スキル:技能系スキル
【薬草調合LV.4→LV.5】【集中LV.3→LV.6】
【料理LV.4】【野生LV.1→LV.2】
ステータスUP系スキル:
【剛力LV.1(新)】【堅牢LV.1(新)】
スキル補助系
【魔法の天才LV.2→LV.5】
【魔法の技巧LV.3→LV.5】【弓のコツLV.1】
攻撃ダメージUP系【魔力覚醒】
補助、その他スキル【精霊契約】【速攻魔法(新)】
「私だけたいして変わりませんね……」
アリシアが落ち込んでいるので頭を撫でる。
〈そんな事ありませんよ。【速攻魔法】は魔法を使う時の魔力を練る時間が今までの半分になります。これだけでも戦略の幅は拡がります〉
うむ。確かにその通り。
〈それに除去魔法は毒や麻痺、石化等の状態異常を治療する魔法なので、生存率もこれまでに比べ格段に上がるでしょう〉
「アリシアは、これからもたよりにしてる」
「本当ですか? 絶対ですよ?」
アリシアが抱き付いて言ってくると、それを見たアクアも一緒に抱き付いてくる。ゴブリン人生なんてクソだと思ったけど私は勝ち組だと思える。
『一月も掛からないうちに二人も落とすとはやりますねby女神』
本当に駄女神がうざい! この調子で絡んでくるのだろうか?
「でも、先程も言いましたけどこれからどうするんですか?」
「とりあえずむらにいく」
「村、ですか?」
「さいわい、わたしたちのすがたは、ふつうのにんげんとかわらない。こんごのためにも、じょうほうしゅうしゅう」
「ミランダさん達にも会うんですか?」
「そのつもり、ぼうけんしゃのこととかきけるだけきこう」
「はい、分かりましたご主人様」
「ゴブッ!」
さあ、ひとまず寿命については暫くの間大丈夫だから、ここからは異世界を思いっきり楽しんでみよう!
そう思い私は異世界生活を改めてここから始めるのだった。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
とある道路の端、電柱の根元に沢山の花束などが置かれており、二人の女性が手を合わせている。
一人は日常で見れば違和感しか無いはずのメイド服を違和感無く着こなし、銀髪を後ろで軽く纏めた女性。
もう一人は長い黒髪を肩口で縛り、ジャケットのパンツスーツを着た若い女性だ。
どちらも見る者を魅了する美貌を持っているが、今はその顔に怒りと哀しみをないまぜにしている。
そんな二人は長く閉じていた目を開け、顔を上げると、辺りをゆっくりと見回し更に険しい表情を作り出す。
「……確かに、お前の言う通りだな」
「ええ、向こうの二人の方は女神の気配以外は特に何もありませんでしたが、やはりここだけは……白亜さんだけは違うようですね」
「ああ、しかしどういう事なんだ? 白亜の事故には何か目的があったと言う事なのか?」
「それはわかりません。しかし、こうなれば私達も行くしか無いようですね。あの世界へ」
「そうだな。かなりの無茶をしなくてはならないがあの子達の為だ。先行して行くのは私達二人か?」
「いえ、あの子。シィーも連れていきましょう。あの子も元々あちら側の住人ですからね。白亜さんの戦力になるでしょう」
「そうだな。私達では手が出せないし、あの子も白亜とは離れたくないだろうから丁度いいか」
「はい。では今日の夜に……」
「ああ、帰ろうか懐かしのアースガルドに」
それだけ話すと二人の女性はそれぞれ準備の為に別れるのだった。
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