第12話わから、ない……けど、やるしかない
ソルジャーとの戦闘の後、ホブゴブリンとの偶然のニアミスをした私達は、倒したソルジャーの末路を眺めながら【鑑定士】のスキルで相手のステータスの一部を覗き見た。
その結果、私達はホブゴブリンが去った後も時間を忘れたかのように動く事が出来ずにいた。
「───本当に……私達だけで勝てるんでしょうか?」
「わから、ない……けど、やるしかない、わたしたちには、じかんない」
〈確かにマスターの言う通りです。マスター達が進化を果たし、生き残る為にはホブゴブリンを倒す他道は無いでしょう〉
私はヘルさんの言葉に頷きアリシアに告げる。
「もし、ありしあが、わたしたち、では、かてないと、おもっているなら、ぬけてもいい、そのときは、けいやくを、はき、する」
「いいえ! 私の命はご主人様に助けられたご主人様のものです! ですから最後までご一緒させてください!」
〈アリシアの気持ちは分かりました。ですが現実的な問題として、あのホブゴブリンをどうするのか考えなければいけません。その為にまずは、レベルアップで上がったステータスとスキルの確認をしようと思います〉
そうだね。自分達の出来る事が分からないと作戦の立てようも無いしね。
〈では、いつも通りマスターからです〉
名前:ゴブ子
レベル:7→9
性別:女
年齢:20日
種族:ミニゴブリン
HP:185
MP:90
物攻:21+10
物防:21
魔攻:26
魔防:26
敏捷:45
知恵:170
器用:110
運 :35
武器:銅の剣
魔法:風魔法LV.1
称号:転生者、同族殺し、同族喰らい
スキル:戦闘系スキル
【爪攻撃LV.2(新)】
魔法系スキル
【風魔法LV.1(新)】
技能系スキル
【鑑定士LV.5】【集中LV.2】【野生LV.4】
【罠師LV.4】【跳躍LV.1(新)】
耐性系スキル
【マヒ無効(新)】【毒耐性LV.5】【痛覚軽減LV.1(新)】
スキル補助系
【魔法の片鱗LV.2】【魔法のコツLV.2】
【武器のコツLV.4】【風魔法のコツLV.1】
攻撃ダメージUP系
【背後攻撃LV.2】【急所攻撃LV.3】
【ゴブリンキラーLV.4(新)】【格闘LV.2(新)】
補助、その他スキル
【喰吸LV.4】【言語LV.8】
【奴隷術】【魔物調教LV.6】【危機察知LV.1(新)】
おお、見やすくなってる。しかも又、新しいスキル増えてる? ホブを相手にするのに使えるスキルありそうかな?
〈スキル系統は私の独断の振り分けなので、多少の違いには目を瞑って下さい〉
今回新しく獲得したスキルは六つ。
まず【ゴブリンキラー】はゴブリン系統のモンスターに対し、ダメージの上がるスキルでレベル×5%分アップ。
【格闘】は武器を使わない攻撃のダメージがレベル×5%分アップする。
【痛覚軽減】は痛みが少なくなるのではなく、痛みを気にする事無く行動出来るようになるスキルらしい。
【マヒ無効】はマヒ系効果を完全に無効に出来るスキルで、【風魔法】に関しては前に話した通り。
【爪攻撃】は、MPを消費して行うアクティブスキルで、最大で1.5倍の攻撃が可能。【跳躍】はそのまま跳躍力が上がるスキルだ。
「色々増えましたけど、ホブが相手となると決定打に欠けますね」
確かに、普通のゴブリン相手なら勝てそうな感じのスキルなんだけどな~。まあ、そうそう必要な時に必要な物が都合良く手に入る訳もないか。
〈今回、私は何も変わらなかったので次はゴブゑです〉
名前:ゴブゑ
レベル:7→9
性別:女
年齢:21日
種族:ミニゴブリン
HP:120→150
MP:150→180
物攻:8→10+15
物防:7→9
魔攻:30→36
魔防:30→36
敏捷:17→20
知恵:100→120
器用:80→90
運 :25→30
武器:棍棒
魔法:風魔法LV.3→LV.4
称号:眷属、同族殺し
スキル:魔法系スキル【風魔法LV.3→LV.4】
戦闘系スキル
【爪攻撃LV.1(新)】
技能系スキル
【野生LV.3→LV.4】【罠師LV.4】
攻撃ダメージUP系
【背後攻撃LV.1→LV.3】
【ゴブリンキラーLV.1(新)】
スキル補助系
【癒しの才能LV.1→LV.2】
【癒しの扱いLV.1→LV.2】
【杖のコツLV.1→LV.2】【棍棒のコツLV.1(新)】
補助、その他スキル
【言語LV.1→LV.3】【言語理解LV.6→LV.8】
特に気にするスキルは増えてないね?
〈そうですね。増えた物もほぼマスターと同じです。続けてアリシアです〉
名前:アリシア・アールヴ
レベル:2→5
性別:女
年齢:30
種族:エルフ
クラス:なし
HP:180→250
MP:150→200
物攻:25→31+5
物防:25→30
魔攻:50→65
魔防:50→65
敏捷:25→35
知恵:100→130
器用:50→70
運 :1→5
武器:銅のナイフ
魔法:風魔法LV.1→LV.3、土魔法LV.1→LV.2
火魔法LV.1→LV.3、水魔法LV.1→LV.2
称号:奴隷、王家の血筋
スキル:技能系スキル
【薬草調合LV.3→LV.4】【集中LV.2→LV.3】
【料理LV.4】【野生LV.1(新)】
魔法系スキル
【風魔法LV.1→LV.3】【土魔法LV.1→LV.2】
【火魔法LV.1→LV.3】【水魔法LV.1→LV.2】
スキル補助系
【魔法の天才LV.1→LV.2】
【魔法の技巧LV.1→LV.3】【弓のコツLV.1】
攻撃ダメージUP系
【魔力覚醒(新)】
補助、その他スキル
【精霊契約(新)】
「【精霊契約】と【魔力覚醒】ですか?」
〈この【精霊契約】はこの世界に存在する精霊と対話し契約する事で、精霊の力を借りる事が出来るようになります〉
しかし契約には試練がある場合も多く、今のところは使い道は無いらしい。【魔力覚醒】は通常の2倍のMPを消費する事で威力を2倍にする事が出来るスキルだ。
うん、ゲームでありがちな設定だ。
───でも事ここに至ってはそれが有難い。やっぱりホブとの戦いは、アリシアの魔法を主軸にした戦い方になりそうだね。
「ありしあの、まほうが、たより」
「はい、頑張ります」
〈やはりそうなりますね。あれだけの防御力が有るとマスターでは、一度のダメージが20前後だと思います。ですが問題も一つあります〉
「問題ですか?」
「ギギ〜?」
「えむぴー、たらない」
「あっ!!」
〈はい、マスターの言う通りです。確かにアリシアの魔法ならダメージは期待出来るでしょうが、それではMPが足らず倒しきれないでしょう。ですので、今日からアリシアにはMP回復薬を作って頂きます〉
「つくれる?」
「素材は───確かあったはずですが、そんなに多くは作れそうにありません」
「そのぶん、は、がんばる」
〈とりあえずの方針はそんな感じでしょうね〉
「ご主人様達はそんなに時間を掛けて大丈夫なんですか?」
「あせっても、むぼうはしぬ」
〈その通りです〉
「分かりました。なるべく早く薬を作ります」
「それとありしあの、まほう、えでぃとす、る」
そう言うと、アリシアは頷きながら魔法のエディットを出す。
▶魔法のエディットを開始しました。
新規作成
魔法名:
属性:火、風、水、土
威力選択0.1.2
効果選択【斬】【爆】【創造】【壁】【貫通】【待機】【治療】
【爆】と【待機】この二つが風魔法であればなんとかなるかも?
「何を作るんですか?」
エディットを見ながら構想にあった魔法を考えている私に、興味津々な様子で聞いて来るアリシアに幾つかの魔法を作ってもらって、今回の作戦会議は終了した。
▶【喰吸】のスキルが発動しました。
【背後攻撃LV.3→LV.4】に上がりました。
【武器のコツLV.4→LV.6】に上がりました。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
次の日、私達がこれからに向けて下準備を進める中、ヘルさんの少し慌てた報告がアタマに響く。
〈マスター大変です! ソルジャーが行商の馬車の方へ向かっています〉
馬車!?
〈はい、昨日二手に分かれた後からずっと捜索していたようで、たまたま通り掛かる馬車の方へ向かっています。このままでは行商人の夫婦が襲われてしまいます〉
それを聞いた私達は急いでソルジャーの下へ向かう。
本当なら放っておきたい所だが、数が増えても困るし、何よりも分かってて見捨てる事は出来ればしたくない。
そう考えた私達は、守りながらの戦いではこちらが圧倒的に不利な為、真正面から戦いに挑む事にした。
〈後200メートル程で遭遇します〉
「さきに、わたしたちで、こうげき、す、る、あとからまほ、うで、いちげき、おねがい」
アリシアが頷きながら魔法の用意を始める。
〈見えました〉
ソルジャーの姿を確認すると、私とゴブゑは先に飛び出し後ろから奇襲を仕掛ける。
「ギギ~!!」
寸前で気付かれたが構わず攻撃に移る。
最初にゴブゑが棍棒を振り上げ攻撃する。いきなりの強襲にもかかわらずソルジャーは棍棒の一撃を剣で受け止める。
その隙に私はゴブゑの後ろから出て、受け止める為に両手を使っているソルジャーの脇腹を切り裂き走り抜ける。
「ギガッ!」
私の攻撃が当たった瞬間、ゴブゑは後ろに下がりアリシアの射線を空ける。
「ファイアブラスト!!」
昨日の作戦会議で威力を弄ったアリシアの魔法が発動する。
火の玉がアリシアの手から解き放たれ、ソルジャーに当たった瞬間、盛大な音を立てた爆発が起こる。
ゴブリンソルジャー
HP:400/400→150/400
MP:0/0
昨日のソルジャーよりもレベルが低いし、私達のレベルも上がっているからダメージが良く通る。
爆発の衝撃で剣を落としたソルジャーが慌てて剣を拾おうとする。
だがそんな事は許さない。
私は素早く剣で斬り掛かりしゃがみこんだソルジャーを襲う。
体勢の悪いソルジャーは攻撃を腕で受けるしか無く、半ばまで切り裂かれた腕は、もうこの戦闘中には使う事が出来ないだろう。
更にソルジャーは、間髪入れず後ろからゴブゑの攻撃で頭を強打され、続けて私達の攻撃の隙に近付いていたアリシアが、無事な方の肩にナイフを差しこみ、両腕を使えなくしたのを確認してアリシアと共に離れる。
「ギガ……ギギ」
両腕が使えなくなり、頭をふらつかせるソルジャーの頭目掛け剣を降り下ろすと、そのままドサッと、倒れソルジャーは動かなくなる。
こうして二度目のソルジャーとの戦闘は余裕を持って終わった。
▶アリシアのレベルが6に上がりました。
「やりましたね。今回は誰も大きな怪我をしませんでした」
アリシアはゴブゑが攻撃する際、勢いが付きすぎて痛めた手首を治すため、回復薬を飲ませに行きながらそう言ってくる。
その言葉に頷きながら、いつものように死体の一部を切り取りに行く。
その時ふと、嫌な予感が背筋を駆け上がり勢い良く後ろを振り向く。
すると───。
何故か光る板のような物が飛んでくる光景が酷くゆっくりと見える。
そして───それは私の左腕を肘の先から切り落とし木の幹へと突き刺さった。
「アッアアアアッ!」
「ご主人様!!」
「ギギ!」
〈マスター!!〉
響く私の呻き声と、重なる皆の声、しかし私の耳にはそのどれもが遠くに聞こえ、ある一点から目が放せなくなっている。
【鑑定士】スキル失敗
レベル14
HP:800/800
MP:0/0
物攻:100
物防:100
魔攻:10
魔防:50
───ホブゴブリン。
私の視線の先には私達の絶望が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます