第64話 二〇二二年マイベスト
いつの間にやら、二〇二三年も折り返していた。一月は、カクヨムコンで忙しく、二月は、なんかぼんやりしていて、三月は、KACで忙しく、四月と五月は、性癖小説選手権で忙しく、六月は、同題異話の連載で忙しくて、二〇二二年のマイベストをアップする機会を逃し続けていた。
まあ、殆ど言い訳なんだが。それでも、毎年まとめているものは、ちゃんとまとめておきたい。ということで、かなり遅くなった「二〇二二年マイベスト」をご発表。
・マイベスト小説 角田光代『対岸の彼女』
幼い娘を子育て中の専業主婦・小夜子は、引っ込み試合で人付き合いが苦手ながらも、一念発起して清掃のアルバイトを始める。そこの会社の社長の葵は、小夜子と同い年で同じ大学出身ということ以外は正反対の、コミュニケーション能力に優れてバイタリティに溢れた独身女性だった。しかし、その葵の高校生時代は、今の姿とは想像できないもので……。
二〇〇四年に発行された、女性の半生と友情を問う長編小説。第一三二回直木賞を採った角田光代さんの代表作。
二〇二二年の一年間は、何かしらの賞を受賞した小説を読んでいこうと決めていた。その中で、何冊か読んだことのある角田光代さんの直木賞受賞作は読んでいないなぁという軽い気持ちで手に取ってみた。
しかしすぐに、生々しい現実感に打ちのめされた。小夜子は人付き合いが苦手な故に、子育ての悩みを共有できるママ友を作れずに公園を転々とし、働き詰めの夫とはすれ違い、姑からは嫌味を言われるという、上手くいかない生活を送っている。一方、葵の過去では、いじめがきっかけで転校し、
過去の葵がどうして今の葵のようになったのかを追いかけながら、ハウスキーパーの仕事に一生懸命打ち込んで、自分を変えようともがく小夜子の姿も並行して読み進めていく。すると、どうにもならないすれ違いが発生し、彼女たちは決裂してしまう。どっちの心情も知っているからこそ、この瞬間が一番辛かった。
しかし、考えてみると人間関係というのは、そういう事の繰り返しではないだろうか。相手に共感し、勝手に期待して、それに沿わなかったら深く絶望する。ちょっとの想像力が足りないまま、私たちはコミュニケーションをしながら、傷つけ合っているのかもしれない。
だが、この山を越えた瞬間に見えた景色に、私は深く感動し、思わず涙が出た。理解したと思った相手は、もしかしたら深い川を挟んだ対岸にいるのかもしれない。それでも、相手のことを知ろうとすることが、この川に橋を架けるのだ。
余談だが、物語のラストシーンまで、小夜子は葵の過去を知らないまま終わる。きっといつか、葵が本当のことを話してくれる日が来るだろうなと、私はずっと思い描いてる。
次点で、向田邦子『思い出トランプ』、ヘミングウェイ『老人と海』、小林泰三『玩具修理者』。
・マイベスト漫画 久住太陽(漫画)、杉浦理史(脚本)、伊藤隼之介(企画構成)『ウマ娘 シンデレラグレイ』
地方都市・カサマツにあるウマ娘レース場は、閑散として、レース出場者たちのやる気もなく、いつでも注目の的であるトゥインクル・シリーズのレースとは大きな差があった。そんな現状を嘆いていたカサマツのトレーナー・北原穣だが、カサマツトレーニングセンターの新入生で、他を圧倒する才能を持つオグリキャップと出会う。彼女と自身の夢である、東海ダービー優勝を目指していた北原だが、あるレースを見学していた、中央トレセンの生徒会長・シンボリルドルフからオグリキャップがスカウトをされてしまい……。
競走馬の美少女擬人化ゲーム・『ウマ娘 プリティダービー』に出てくる、オグリキャップが主人公のヤンジャンで連載中の漫画。連載が始まったのは二〇二〇年からだけど、私が読んだのは去年だったので、勝手ながらマイベストに選出した。
ウマ娘は、アニメで見て楽しんでいたのだけど、漫画となると別の面白さがある。よく、こちらのシンデレラグレイは「プリティダービー」がタイトルに入っていないのでプリティが無いと言われているけれど、それも納得できるほど、鬼気迫るレース描写が魅力的だ。
メインキャラクターの
そういうレース描写と並行して、ドラマもまた熱い。圧倒的な天才・オグリキャップを中心に、彼女に夢を託す者、共に頂点を目指す者、ライバルとした立ちはだかる者と、様々な感情が渦巻いていく。漫画では、タマモクロスとのライバル関係が中心になっているが、ディクタストライカとのやりとりもぐっと来てたまらなかった。
一方、主人公であるオグリキャップは、天然キャラという事もあり、期待に追い詰められるということはないけれど、ライバルからの意識がピンと来ないところもある。だが、そんな天才である彼女も壁にぶち当たり、それをどう乗り越えていくのかも見どころとなっている。
二〇二二年中に読んだのは、単行本の八巻まで。丁度、引退を表明したタマモクロスとの有馬記念での決着までの話だった。
最近、その続きを読んでいるのだが、最大のライバルが去った後も、新たな強者が登場し、またこれまでのライバルたちもさらに力をつけている。彼女たちそれぞれのドラマに期待しつつ、この先も追いかけていきたい。
次点で、和山やま『女の園の星』、篠原健太『彼方なるアストラ』。
・マイベスト映画 『ブレット・トレイン』
世界一不運な殺し屋・レディバグは、相棒の女性・マリアがもらってきた、代理の仕事を受ける。それは、新幹線「ゆかり」にあるブリーフケースを盗むという簡単なものだった。しかし、そのブリーフケースを運ぶ二人組の殺し屋・タンジェリンとレモン、息子の仇を探す元殺し屋のキムラ、大人たちを翻弄する美少女のプリンス、さらには、とあるヤクザのボスまでも巻き込んで、京都へ向かう二時間の中で、彼らの運命は交差する。
原作は伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』のハリウッド映画。監督は、元スタントマンで『デッドプール2』のデイヴィッド・リーチ、主人公のレディバグ役はブラッド・ピットと、豪華やスタッフと俳優陣が集った超アクション大作。
映画の処方を聴いたとき、まず、「『マリアビートル』がハリウッドで映画化!? 」と驚いたけれど、その次に、「主演はブラッド・ピット!?」でまた度肝を抜かれた。何を隠そう、私が一番好きなハリウッド俳優が、ブラッド・ピットなのだ。驚きと興奮で、「この組み合わせは私を絶対に殺すセットだ」とツイッターに書き込んでしまうほど。
しかし、期待値が高すぎると、その分裏切られた時の悲しみが強い。映画館で絶対に見たい、でもなぁ……と思いつつ、おそるおそる足を運んで、座席に二時間座った。結果、とても面白かった。
もともとの伊坂さんの構成とユーモアにプラスして、監督や出演者のアイディアも盛り込んでいるので、非常に痛快なアクション大作になっていた。原作とは違う面も多々あって、前情報を見た時は「うーん」と思っていた部分も正直あったのだが、映画でちゃんと見るとそこもしっかり生かされているので、文句など霧散してしまった。
それから、原作知っている勢としては、とある場面で退場するキャラがしなかったりして、より展開が読めなくなったり、ドラマが深まったりしたところもあり、そこが目から鱗だった。原作はシリーズ前作の『グラスホッパー』を前提とした部分もあるのだが、そこのほぼ省かれているのですっきりしている。まあ、ちょっと
あと、完全に個人的な話なのだが、人の顔、特に外国人の顔を覚えるのが苦手な私にも、新幹線の中での一日の出来事というくくりがあるので、登場人物の服装も大きく変わらず、とても見やすかった。ただ、俳優の顔と名前を覚えるのも苦手なので(本当にすぐ見てわかるのはブラピぐらい)、実は、このキャラあの人が演じていました! というサプライズ演出は、映画を見た後にウィキを見て気が付いた。そこはちょっと損した気分だった。
このまま、殺し屋シリーズの第三弾の『AX』も映像化しないかなぁと妄想している。できれば、配信系の豪華な予算を使ったドラマで。海外が舞台でもいいけれど、兜役は西島秀俊さんがいいなぁってところまで考えてしまっている。
次点で、『笑の大学』、『ジョン・ウィック』、『デッドプール2』。
・マイベストドラマ 『初恋の悪魔』
とある警察署の総務課に勤める青年・馬淵
日テレで放送されていた夏ドラマ。悠日役の仲野太賀さんと鈴之介役の林遣都さんのダブル主演で、脚本は坂元裕二さん。ドラマのジャンルはミステリアスコメディ。
物語の最初の方では、一話完結形式なのだが、途中途中で、悠日の兄の死の謎や、星砂の不可解な言動がちょくちょく挟まれる。そして、星砂が実は二重人格だという事が判明してからは、なんだかんだ言いながらも一緒に捜査会議をして、仲良くなっていた四人の関係が大きく変化する。
一話完結方式も面白かったのだが、星砂の二重人格が判明して、彼女のもうひとりの人格が悠日の兄の死と関わりがあるという事がほのめかされてからが、さらに面白くなっていった。そこへ、誰にも気づかれずに繰り返されてきた連続殺人事件が絡み、さらには悠日と星砂と鈴之介の三角関係まで生まれて、より目が離せなくなった。来週はどうなるんだと、放送されていない間もずっと考えているドラマは、本当に久しぶりだった。
このドラマの個人的MVPは、星砂を演じた松岡茉優さんだ。二重人格という難しい役どころだが、服装や髪形のような見た目だけでなく、喋り方や仕草などで、人格が異なることをはっきりと示している。声まで違っているように聞こえるくらい。刑事の人格の星砂はトマトが苦手だが、もう一人の人格は平気なので、初めて居酒屋で出てきた時に、串焼きのトマトを普通にむしゃむしゃ食べだした時は、びっくりして鳥肌が立った。
また、それぞれの事件が解決しても、やるせなさを抱いてしまうという後味も特徴的だった。その背景には、現代社会を生きる私たちが直面している、諸々の問題がある事に、直接言わずとも感じとれてしまえるから、よりやるせない。
他にも、誰かを愛するについても色々考えた。恋心とは別に、家族への愛や尊敬や信頼も、諸刃の剣となる。愛するがゆえに、過ちを起こすことがあれば、愛するがゆえに、踏み外した道を戻ることもできる。そして、過去は変えられなくても、償いをすることは可能なのだと、感じさせられた。
それから、私が物語を書く上で命題の一つにしている、「多重人格者の副人格の幸せ」についても、一つの答えを見た。多重人格者の書き方として、こういうのもありなのかというの目から鱗だったという意味で、心に刻まれた作品の一つとなった。
次点で、『恋せぬふたり』。
・マイベストアニメ 『まちカドまぞく 2丁目』
ある朝目覚めると、魔族として覚醒し、角としっぽが生えてきてしまった普通の女子高生の吉田優子。シャドウミストレス優子(通称シャミ子)と名前を変えて、家に掛けられた「月四万円」の呪いを解くために、同じ町の同じ学校に通う世界を救った魔法少女・千代田桃を倒す!
……はずなのだが、ポンコツなシャミ子と筋肉系魔法少女の桃との力の差は歴然。桃からしごかれながら、失踪した魔法少女の桃の姉、町に暮らす別の魔族との邂逅、そして、自分の過去や父親の秘密にシャミ子は迫っていくことに。
漫画雑誌・きららで連載中の四コマ漫画が原作のアニメの第二期。二〇一九年の一期よりも、シャミ子自身はパワーアップしていないけれど、ストーリーと物語世界がどんどん深まっていって、今度はどうなるのかと楽しみになっていった。
新しい魔族の
そんなドタバタとコミカルな場面が続く中でも、魔族と光の一族の関係が、結構シビアなことに迫っていく。シャミ子のご先祖様である、リリスが二千年も封印されていたとか、ちょいちょい不穏な情報も出てくる。シャミ子たちのやりとりはほのぼのしているけれど、魔族の立場は実は瀬戸際にあるのではないかと思える。
そんな中で、誰かのために一生懸命になれるシャミ子の優しさに救われる。幼い頃も生まれたばかりの自分の妹や、魔法少女のミカン苦しめる呪いの原因になった悪魔に対しても、自分で出来ることを考えて助けたいと思う。だからこそ、人が集まり、皆に愛されるのだと感じた。
次点で、『ルパン三世part5』。
・マイベスト短編アニメ 『ポプテピピック』二期第八話エンディング
二〇一八年に放送された二期より、四年ぶりの二期放送。以前と同じ、前半と後半とで声優が異なる再放送、毎回設定の異なる本編とショートアニメの組み合わせとは別に、異なる企業や漫画やゲームとのコラボという新しい試みもあった。
その中の一つに、毎回異なるエンディング映像があった。懐かしいロボットアニメ風、ファーストテイクのパロディのリコーダー演奏、いろんな動物が出てくるほのぼの風と、色々趣向を凝らしている中、第八話のエンディングが衝撃的だった。
まずは、普通のエンディングにはない、ひずんだ電子音からスタート。画面の中で並べた布団の中の入ったポプ子とピピ美は、ボーカルの入りに合わせて上半身を持ち上げ、いつもとはかけ離れた驚きの表情のみのアップ······そこで、好きになっていた。
そこから繰り広げられるのは、何ともカオスな映像世界。二面とポリゴンのアニメ、そして実写も交えた混沌さ、どこか懐かしいフォントの文字、わざとつけた影像の乱れと劣化の演出。一緒に流れるのは、不協和音を駆使したアレンジで、耳から離れない。そのまま終盤の映像でゾッとさせられる······最恐と言っても構わないエンディングだ。
『ポプテピピック』の二期は、一話目から特撮ヒーローものが始まって大いに笑わされたし、声優の組み合わせとして個人的に一番見て見たかった朴璐美さんと釘宮理恵さんのハガレンコンビが実現したりと、毎回異なる楽しみ方があったのだが、個人的に一番の収穫はこの葛飾出身さんを知れたことだと思う。深夜の生配信で例のエンディングを見て、すぐ誰が作ったかを調べてから、ツイッターでフォローをしたくらいに。
そして、フォローして気付いたのだが、たまにリツイートでTLに流れてくる「今日の日記です」というコメントとナンバリングのついた数秒間の音楽と動画の作成者がこの葛飾出身さんだった。日常のちょっとした出来事を、レトロな演出によって表されている。あるあるに頷いたり、機材などの知らない世界を覗き見たりと、面白くてこちらもおすすめ。
次点で、アルピーテイル公式「【コウメ1-GP①テイル】コウメ太夫×最低やさいコーナー」、『PUIPUIモルカー ドライビングスクール』。
・マイベストバラエティ 六月一日放送分『水曜日のダウンタウン』
Yahoo!知恵袋だけに投稿している、身長二メートルと体重二百キロ超えの女性・K.カズミ。フライパンを素手で曲げたり、トランプを指でちぎれるほどの怪力、一日の食事量は九食、ざるそば食べ放題で大食いタレントのもえあずさんを超える量を記録するレベルの大食いと、ありえない伝説を持っている。ネット上では、自作自演説もあるが、自販機よりも大きな女性の写真あったり、ざるそば食べ放題の記録は和食麵処サガミの公式ホームページに載っていたりと、実在するかどうか論争が起きるほどの謎多き人物である。
毎週芸人さんが持ってきた「説」を番組独自の方法で検証したり、他では見ないような対決企画やドッキリを仕掛けてきた『水曜日のダウンタウン』だが、この回は色々と異色だった。先週の放送の次回予告から、何かVTRを見ているパネラー陣の反応だけで、どんな企画なのかは謎のままだったからだ。その中に、「怖い」という言葉もあったので、これは期待できるぞとワクワクしていたのだが、内容はそれを超えるようなすごいものだった。
最初に、K.カズミが知恵袋に投稿したエピソードを紹介し、どれだけ規格外の人物なのかを紹介してくれる。私は、彼女のことを知らなかったのだが、これで分かりやすくなった。その後に、K.カズミの伝説にボディビルダーやフードファイターに挑戦してもらい、それが可能かどうか検証する。結果、どれも不可能だという事が判明した。
やはり、K.カズミは実在しないのか……。だが、ざるそば八十五杯を食べたという記録は確かにあり、大企業がそんな嘘を吐くとは思えないので、そこから確かめていく。サガミの従業員に、K.カズミを知る人物を探してみたところ、三人が見つかった。しかし、彼らは口をそろえて、「K.カズミは二メートルもない、普通の女性だった」と語る。錯綜する情報に、パネラー陣も視聴者も振り回されていったところ、K.カズミの連絡先を知る従業員を通じて、顔を隠して声を加工することを条件に、彼女へのインタビューが実現した。
カメラの前に現れたのは、身長一六八センチで体重も大体五十九から六十キロ台の中年女性。スタッフが根掘り葉掘り聞いてみたところ、サガミのざるそば八十五杯は事実だが、知恵袋ユーザーに勝手に名前を使われて、二メートルで二百キロの女性だと偽られていたという。これまで、大食い関連のメディアオファーを断ってきたのだが、知恵袋にいるのはなりすましだという事を伝えたくて、この取材に応じたというのが真相だった。ちなみに、K.カズミさん自身の食事量は普通で、おそばは好きだからたくさん食べられたという。
この結果は色々な憶測を呼び、最初から水ダウのやらせだった説や、サガミが注目を集めたくてこの記録をでっち上げた説も目にしたが、私が水ダウの見つけた真相を信じたいと思う。まあ、信じるかどうかよりも、単純に過程や演出とかでわくわくさせられたというのも大きいが。
ちなみに、この先週分の放送で、次回予告を曖昧にした理由は、番組プロデューサーの藤井さんのツイートによると、もしも「K.カズミの正体に迫る!」みたいな予告を流すと、なりすましの方のK.カズミがアカウントを消すなどのリアクションを採られてしまうので、それを回避したのだという。K.カズミを調べようと思ったことや、なりすまし側の反応を予想するとか、藤井さんのネットに対する理解度の高さには頭が下がる。
物事の真相にたどり着くためのプロセスを丁寧に映していたので、ミステリー作品において、どうやって証拠を見つけて、犯人を追い詰めていくのか、こちらを参照にできるのではないのかと思った。本人の供述ではなく、客観的な証拠からアプローチしていく。現実でも役に立ちそうな考え方だと思う。
次点で、『マヂカルクリエイターズ』の二月十六日放送の漫画ページブラックジャックのコーナー、『野田レーザーの逆算』の五月十三日放送の「現実を生きるリカちゃん逆算」で、正解を上回ってしまう答えが出た回。
・マイベスト音楽 サディスティック・ミカ・バンド「どんたく」
二〇〇六年に発売されたサディスティック・ミカ・バンドの楽曲。陽気なリズムとメロディーに寄せて、ある日本人が、初めて安息日を知った時の驚きを歌っている。
とあるネット動画で知った一曲。二〇二二年発売の曲ではないのだが、こんな音楽初めて聴いた! と雷が直撃したような衝撃を受けた。この年に初めて契約したSpotifyでも配信されていたので、何度も聴いた。
後々に調べて、余計に驚いた。この曲を演奏しているバンドは、最近の方たちだと思っていたのだが、結成したのは一九七四年だったのだ。楽曲自体も、二〇〇六年と、そこまで新しいものでもない。そんな何も知らない状態で初聴きしたので、時代が変わっても古びない曲というのを初めて実感した。
しかも、このバンドのドラマーは、高橋幸宏さんだった。バンドが一度解散したのちに、かのYMOを結成したという。YMOは好きだけど、個人個人の細かな経歴まで知らなかったので、惹かれる理由というのはこういうところにもあるのかなと妙にしみじみした。
「どんたく」というのは、オランダ語で日曜日の意味。ワインを飲んだり、パレードしたり、ラッパや太鼓を演奏したりと、とても楽しそうな休日の様子が描かれている。曲も、ギターをじゃかじゃか鳴らして、他の楽器も合わせるととても賑やかなのに、うるさいという印象を受けない。知らず知らずのうちにノってしまい、いつの日か口ずさんでいるような曲だ。
今年の1月に、高橋幸宏さんの訃報が伝えられた。もう彼が作ったり演奏したりした新しい曲を聴くことはないのかと思うと、とても悲しく寂しい気持ちになるのだが、時代を超えた数々の名曲をこれからも聴き続けたいと思う。
次点で、ポルノグラフィティ「証言」、MONO NO AMWAREの「かむかもしかもにどもかも!」、ココアシガレットPの「アカリがやってきたぞ!」。
……以上で、七項目の去年のベストを発表した。長かったし、色々調べながら書いていったので、とても時間がかかり、大変だった。そして、七月アップのつもりが、気が付くと八月になっていた。
もう今年も結構経ってしまったのだが、今まで見て印象に残っているコンテンツはちゃんとメモっているので、今回よりも早めに発表できると思う。多分。きっと。ネイビー。
まあ、とはいえ、今年もこれから、面白いものがどんどん発表されていくのだろうし、まだ知らない、面白くてすごいものを見つけるのかもしれない。楽しみが尽きないのは、とてもいいことである。
では、今年の残りも、どうぞよろしくお願いします。
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