第45話 短編アニメ作家図鑑 青木純 編
短編アニメが好きだ。大体、十五分くらいまでに収まるというのが個人的な指標としている。
NHKのプチプチアニメやみんなのうた、インディーズの個人製作、MVやCMなど、意外と短編アニメを見かける機会は多いと思う。しかし、その作者まで気にしている方は少ないだろう。
そこで、この「短編アニメ作家図鑑」は、勝手に私が大好きなアニメ作家を、あいうえお順で紹介していくというものである。
第一回の今回は、青木純さんだ。
あいうえお順で紹介していくので、青木純さんが一番最初になったのは必然的だったが、それ以外にも理由がある。
私が中学生の頃に夢中になって見ていたNHKの番組、デジスタ・プチ劇場での常連が、この青木純さんだった。このデジスタプチ劇場は、デジタル・スタジアムという学生やアマチュアの映像作家の作品を紹介していく番組の、五分尺の子番組であった。
何度も見かける「青木純」という名前が気にかかったのが、私にとって、初めてアニメーターという職業を人生で意識した瞬間であったと思う。
ただ、青木さんの作風は作品によって大きく変わっていくので、名前がタイトルと一緒に紹介されていなければ、全く気付かなったんじゃないかと思われる。
例えば、デジスタプチ劇場の第一回で放送された「コタツネコ」は、コタツに入ったネコの奮闘を一分半以内の短さで勢い良く描いている。手法は人形を用いたコマ撮りアニメである。
二回目以降の視聴では、コタツの置かれた和室の作り込みに注目してほしい。ガラスの向こうの台所もしっかり作られているのに、実はコタツネコの下半身は製作していないというので、そういうメリハリにもはっとさせられる。
また、青木さんが学生時代に初めて作った「走れ!」は、赤ん坊が生まれて、成長し、年老いて亡くなるまでを、走り続ける三十三秒間のアニメーションによって描いた作品である。
スピード感を表すために、色塗りや線が少し粗めになっているように思えるのだが、一瞬で過ぎ去るたくさんの人がいるシーンや建物内もきっちり描かれている。
他のアニメ作品では、とあるアパートに引っ越してきた青年がそこの住民たちの秘密を垣間見る「Apartment!」や、修学旅行の悪ガキにいじめられた鹿の復讐「奈良鹿物語」など、短い中に可笑しみをぎゅっと詰め込んでいる。
それらの特徴として、絵柄全然違うというものがある。テーマによって手法を変えていくというのは、非常に大変なものだと想像させられる。
ちなみに、青木さんはデジスタ・プチ劇場のオープニングとエンディングのアニメも担当している。
内容は、ロボットの猫型映写機が歩み寄ってきて、目から映像を投射するというコマ撮りアニメである。デジスタに優遇されまくっていて驚いてしまう。
そんな青木さんは、大学卒業後にスペースネコカンパニーというアニメ会社を設立し、CMやテレビ番組のオープニングや「みんなのうた」のアニメーション制作、沖縄で放送されているEテレ番組「うちなーであそぼ」の昔話をアニメ化したコーナーのディレクションを担当していた。ちなみに、青木さんは沖縄出身である。
内容によって色や品を変えて、くすりとする可愛らしい世界を描き出していく青木さんだが、ファンであるがゆえに私には、一つの懸念があった。それは、青木さんが何でもできるが故に、器用貧乏になってしまっているのではないかということだった。
しかし、二〇一七年、それを覆すような青木さんの代表作が始まる。『ポプテピピック』のシリーズディレクターとシリーズ構成の就任である。具体的に言うと、「ヘルシング矢野」以外の『ポプテピピック』の全ての長編回を担当していた。
私はツイッターで青木さんをフォローしていたので、『ポプテピピック』のファンでも、声優ファンでもなく、単純に監督が好きな人だったから見始めて、ひどく驚いた。世間をうねらすほどのクソアニメの制作に関われるなんてと、十何年も知っている身からすると涙を禁じ得ない。
さて、また四月から、青木さんとスペースネコカンパニーが再び神風動画と組んだ、新しいアニメ『ギャルと恐竜』が始まっている。
まだ配信で間に合うので、『ポプテピピック』が好きだった方も是非!
・紹介作品URL
「コタツネコ」→https://www.youtube.com/watch?v=A8q9NsX31EU
「走れ!」→https://www.youtube.com/watch?v=Gk3-no1foTE
「Apartment!」
→https://www.youtube.com/watch?v=XYa6v7uBrH4
「奈良鹿物語」
→https://www.youtube.com/watch?v=Vrh8wnVpTk8
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