第28話 沖縄県内ケーキ行脚


 『ペンギン自由帳』の第8話でも述べたが、私は毎日小説を書くことを目標にしている。

 それがより長く続くようにと、三十日間達成するごとに、ケーキを食べに行くことを決めた。


 私は非常に現金なもので、この目標を決めた途端、ツイッターでの「継続は力なう」の押し忘れが殆ど無くなった。

 それでも、時々押し忘れてしまうことがあり、もうすぐ二百日だ! というタイミングでリセットされてしまった時の絶望感は大変なものだった。


 さて、ケーキを食べに行くという目標を決めてから、私の意識が大きく変わった。

 毎日頑張るぞーというような心持ではなく、これからのケーキの日に向けて、どこへ行こうかという気持ちが常にあるようになったのだ。


 愛車で移動中にも、こんな所にケーキ屋があったのかという発見したり、あそこのカフェではケーキを出しているだろうかという事を気にしたりしている。

 家でも暇なときには、ネットでケーキの情報を集めている。グーグルマップを使うが大分得意になった。


 街中のケーキ屋さん、カフェ、ファミレス、パン屋さんなどなど、ケーキを出している店の情報をたくさんたくさん集めた。

 一度まとめてみようと、ネタ帳に書き出してみたら、二十六軒の候補があった。一カ月に一軒行くとしたら、単純計算で、二年かかることになる。


 眩暈のする数字だった。しかし、どこも行ってみたいので、簡単に削ることが出来ない上に、行ってみたい店はほっとくと増えていく。

 ともかく、一日でも多く小説を書いて、一月ケーキを達成するのだ。ケーキのためだと言い聞かせながら、私は小説を書いている。


 ……手段と目的が逆転しつつあるのだが、やはり目標があるとはかどってしまうのが確かである。

 もちろん、単純に言ってみたかったお店に行き、ケーキを頬張る瞬間はとても嬉しい。どんなケーキを食べようかなと悩んでいる瞬間も楽しい。


 そんなこんなことを続けている内に、私はとうとう「小説を書く」三百六十五日を達成した。五月三日のことであった。

 その翌日、私は気になっていたケーキ屋さんで、ショートケーキを買った。もっと立派なものにしようかと思ったが、その前に友人とパンケーキを食べに行っていたのから我慢した。


 少々小さめだったが、十分に満足した。お高め・大きめのものは、四百日目にすればいい。

 ……そう、まだ私は小説を書くことを続けている。その理由の半分は、まだ見ぬケーキのためである。

 


 


 

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